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インターネット上のレビュー正常化に向け規制当局が偽レビュー1件につき最大720万円の罰金を科す規則を提案


Amazonをはじめとするさまざまなオンラインサービスで偽レビューの投稿が横行しています。これを取り締まるべく、アメリカにおける公正な取引を監視する連邦取引委員会(FTC)が、オンラインレビューを売買・操作する企業を対象とした新たな規則を提案しました。この規則が承認されれば、消費者が1件の偽レビューを目にするたびに最大5万ドル(約724万円)の罰金を科すことが可能となります。

16 CFR Part 465: Trade Regulation Rule on the Use of Consumer Reviews and Testimonials | Federal Trade Commission
https://www.ftc.gov/legal-library/browse/federal-register-notices/16-cfr-part-465-trade-regulation-rule-use-consumer-reviews-testimonials

Fake reviews are illegal and subject to big fines under new FTC rules - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/technology/2023/06/30/fake-reviews-online-ftc/


AmazonやGoogle、Tripadvisorなどインターネット上に存在するさまざまなサイトが、コンテンツの良し悪しをユーザーによる評価で多角的に判断できるレビューを実装しています。しかし、ユーザーによる正直なレビューだけが投稿されているわけではなく、金銭などの見返りを送ることで高評価のレビューを投稿してもらう「ステマレビュー」や、コンテンツの良し悪しに関係なく高評価のレビューを投稿する「偽レビュー」が近年問題視されていました。

消費者保護団体であるPIRGの研究者は、インターネット上に存在するレビューの30~40%ほどが捏造された偽レビューであると見積もっており、Amazonでは全体のレビューの42%が偽レビューであるという調査結果もあります。

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また、このような偽レビューを売買する組織の存在も明らかになっており、Amazonは過去に偽レビュー販売組織がらみのレビューをまとめて削除するという対応を取りました。

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この他、ChatGPTのような高性能なチャットAIの登場により、偽レビューが今後さらに増加する可能性が危惧されています。

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このような偽レビューに対して、連邦政府はこれまで個々のケースに訴訟で対処するのみで、偽レビュー全体に対処するための包括的なシステムを有していませんでした。しかし、現地時間の2023年6月30日、FTCは偽レビューを抑制するための新たな規則を提案しています。

この規則はレビュー機能を実装しているウェブサイト側に直接責任を負わせるようなものではなく、偽レビューを売買する企業を取り締まるためのものです。今回の規則について、The Washington Postは「偽レビューを売買する陰湿な市場を取り締まるために連邦政府が行った、これまでで最大の措置」と報じました。

FTCの消費者保護局で局長を務めるサミュエル・レヴィーン氏は、「オンラインショッピングしたことがある人なら誰でも、商品に関する客観的なレビューをチェックしたいと思います。しかし、既存のレビュー欄には偽レビューなどの欺瞞的な情報があふれているため、混乱してしまいます」と述べ、FTCが提案した偽レビュー禁止規則の必要性を述べています。


FTCは偽レビューについて「消費者に誤解を与えるため、常に法律に違反している」という見解を示しています。今回の規則については成文化されるまでに2カ月の意見募集期間が設けられていますが、誰が責任を負うことになるのかを明確にし、FTCがより多くの行動を起こすことができるようになるためのものです。

この規則では製品体験を偽って伝えるようなレビューや、実在しない人物が書いたレビューなどが禁止されている模様。また、企業の従業員のような関係者による「明確な情報開示なしでのレビュー」も禁止されています。また、この規則は偽レビューを書いた人だけでなく、偽レビューを売買する仲介業者や、偽レビューだと知りながら金銭を支払った企業に対して罰則が科せられることとなります。


冒頭に記述した通り、偽レビュー1件につき最大5万120ドル(約726万円)の罰金が科せられることになりますが、政治広告は対象外です。

また、商品Aについてのレビューが集まった後に、販売する商品を別のもの(商品B)にすり替え、レビューを偽る行為についてもFTCは新しい規則で禁止しています。

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ただし、企業が顧客にレビューを依頼するような事案について、FTCは「許可される」と述べており、企業が顧客にレビューを書く報酬としてギフトカードなどを贈ることも特に禁じていません。

この他、事業者は脅迫や法的な脅しを使って否定的なレビューを抑制したり、自社製品やサービスを販売する独自サイト上で独立したレビュー機能をホストしたりすることも禁止しています。

FTCは規則を成文化することで偽レビュー関連の訴訟効率が格段に上がると主張していますが、FTCと協力関係になる国に拠点を置く企業の場合、偽レビューの責任を追及するのは「まだハードルが高い可能性がある」とも述べています。

しかし、消費者保護団体は偽レビュー問題を根本的に解決するには「偽レビュー経済全体に対処する必要がある」と述べました。具体的には、FacebookやTwitterといったSNSは偽レビューの書き手を募集するための便利なプラットフォームとなっているとして、これらを取り締まる必要性を挙げています。

そして、今回の規則ではレビューを掲載するサイト側には責任がおよばないようになっていますが、最終的にどのレビューを掲載するかを管理しているのはレビューを掲載しているサイト側であるとして、消費者保護団体は「サイト側がレビューを投稿したユーザーの身元を確認したり、レビューしたコンテンツを本当に使用したのかを確認したりする必要がある」と指摘しました。

なお、FTCが今回の規則でレビューを掲載するウェブサイト側の責任を追及しない理由について、レヴィーン氏は「通信品位法230条に基づく免責を主張するサイトがあまりに多いため」と述べました。


なお、レビューを実装しているウェブサイト側も真剣に偽レビュー撲滅のための取り組みを進めています。2022年にAmazonは2億件以上の偽レビューをブロックしたと主張しており、Yelpも2022年に偽レビュー検知用のソフトウェアが全レビューのうち19%が偽レビューだと判断したため、これを削除したと述べています。

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in ネットサービス, Posted by logu_ii

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