高血圧症の一種の原因遺伝子と治療法が判明
ロンドン大学クイーンメアリー校と聖バーソロミュー病院が中心となった研究チームにより、一般的な高血圧の原因となる遺伝子変異体とその治療法が特定されたことがわかりました。この研究は学術誌「Nature Genetics」に掲載されています。
Somatic mutations of CADM1 in aldosterone-producing adenomas and gap junction-dependent regulation of aldosterone production | Nature Genetics
https://doi.org/10.1038/s41588-023-01403-0
高血圧症の一種「原発性アルドステロン症」の新規原因遺伝子を発見 薬が効かない高血圧症の病態解明に新たな視点 | プレスリリース・研究成果 | 東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY-
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/06/press20230609-01-cadm1.html
Cause and Cure Discovered for Common Type of High Blood Pressure
https://scitechdaily.com/cause-and-cure-discovered-for-common-type-of-high-blood-pressure/
ロンドン大学クイーンメアリー校の研究者は先行研究で、高血圧症患者の5%~10%では、副腎の遺伝子変異により副腎皮質から分泌されるホルモンのアルドステロンが過剰生成されており、これが高血圧症の原因になっていることを確認しています。アルドステロンには血圧を調整する役割がありますが、血中のアルドステロン濃度が高すぎると、一般的に使用される高血圧治療薬による治療ができず、心臓発作や脳卒中のリスクが高くなります。
今回発見されたのは、高血圧症患者の20人に1人にみられる副腎の良性結節、つまりしこりの一部に遺伝子変異があったとき、アルドステロンが過剰生成を引き起こすということです。当該遺伝子変異体は、細胞同士を結びつける接着分子として機能している細胞膜タンパク質・CADM1に影響を及ぼし、アルドステロン生成を停止するよう伝達する細胞間コミュニケーションを阻害していました。
研究者らは、このタイプの高血圧症は2つある副腎のうち1つを切除することで治療できることも発見したとのこと。
副腎の1つを除去すると、以前は複数の薬剤を投与しても重度の高血圧症だったものが解消し、その後、何年もの観察期間を通じて、治療は必要なかったそうです。
アルドステロンが原因である可能性のある高血圧症だと特定されている人は全体の1%未満ですが、研究者は、1度の血液検査ではなく、24時間を通した尿検査でアルドステロンを測定することにより、高血圧症を抱えつつも原因が特定されていない患者をより多く発見できると述べています。
ロンドン大学クイーンメアリー校のモリス・ブラウン教授は「聖バーソロミュー病院900周年を記念して、科学と医学の好循環がもたらす恩恵をお伝えします。ほとんどの高血圧症の患者さんは、手術サンプルの非定型的分子分析に同意しており、そこから高血圧症がどのように引き起こされたのか、将来の患者に対してどのような治療を行っていくかを見つけることができます。今回の研究では、アルドステロン結節が非常に小さかったので、結節を瞬間的に焼き切ることが副腎全体の外科的切除に代わるものになるか、調べています」と述べました。
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