皮膚に貼り付ける「電子タトゥー」で血圧を継続的に測定する技術が開発される
「血圧」は呼吸や脈拍、体温と並ぶ生命活動の重要な指標であり、血圧の測定はさまざまな健康上のリスクを知る上で重要です。しかし、いくら血圧測定が重要とはいえ、健康診断などで使われる腕に巻くタイプの血圧計を持ち歩き、こまめに血圧測定を行うことはできません。そこでテキサス大学オースティン校の研究チームは、皮膚に貼り付けて継続的に血圧測定ができる「電子タトゥー」を開発しました。
Continuous cuffless monitoring of arterial blood pressure via graphene bioimpedance tattoos | Nature Nanotechnology
https://www.nature.com/articles/s41565-022-01145-w
Blood Pressure E-Tattoo Promises Continuous, Mobile Monitoring - UT News
https://news.utexas.edu/2022/06/20/blood-pressure-e-tattoo-promises-continuous-mobile-monitoring/
高血圧を放置しておくと深刻な心臓病につながる危険性があるため、高血圧症の人は定期的に血圧測定を行って投薬を管理しています。しかし、腕に巻くタイプのデバイスによる血圧測定は、ある特定の時点における血圧しか測定できないため、体が実際にどのように機能しているのかを把握するのは困難だとのこと。テキサス大学オースティン校の電気・コンピューター工学科教授のDeji Akinwande氏は、「血圧は測定可能な最も重要なバイタルサインですが、診療所の外で腕に巻く装置を使わず、受動的に測定する方法は非常に限られています」と述べています。
近年ではスマートウォッチなどによるヘルスモニタリングが盛んとなっていますが、これらのデバイスは主にLEDライトを皮膚に照射して心拍数などを監視しています。ところが、スマートウォッチは手首の周囲を滑って動きやすく、動脈からの位置が変動してしまうことがあるため、正確な血圧を測定するには向いていないとのこと。また、光に基づいた測定は肌の色や手首の太さなどにより失敗する可能性もあるそうです。
そこで研究チームは、皮膚や衣服に貼り付けて皮膚表面の電気抵抗(生体インピーダンス)などを測定し、さまざまな生体データを収集する極薄のウェアラブルデバイスの「電子タトゥー」に着目。炭素原子が六角形の格子状に結合したグラフェンを用いた電子タトゥーは非常に薄く軽量で、伸縮性と粘着性のある素材で肌に貼り付ければ移動することもないため、血圧測定デバイスとして理にかなっているとのこと。
研究チームが開発した電子タトゥーは化学気相成長(CVD)法で作られた高品質のグラフェン製で、皮膚に電流を流すと反応する生体インピーダンスを分析して血圧を測定する仕組みです。生体インピーダンスと血圧の間には相関関係があることがわかっており、研究チームは生体インピーダンスから正確な血圧を測定する機械学習モデルを作成しました。
研究チームは実際に7人の被験者に開発した電子タトゥーを貼り付け、平均して3時間以上、最大5時間にわたり血圧を測定する実験に成功したと報告しています。
テキサス大学オースティン校の生物医学工学・コンピューターサイエンス・電気工学教授のRoozbeh Jafari氏は、「電子タトゥーのセンサーは重量がほとんどなく、邪魔になりません。ただそこにあるだけで、貼り付けられた人は目も向けないし勝手に動くこともありません」とコメント。Akinwande氏は、「これらのデータはすべて、長期にわたる治療に対する人体の反応や応答を予測し、見ることを可能にする『デジタルツイン』の作成を可能にします」と述べました。
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