ソフトウェア

初の「ChatGPT牧師」による礼拝に300人超の聴衆が詰めかける、言葉遣いがおかしくて信者が吹き出す一幕も


ドイツにあるキリスト教の教会で2023年6月9日に、スクリーンに投影されたアバターが人工知能(AI)により生成された言葉で説教を行い、全知全能の神をたたえるよう信者らに呼びかけました。実験的に行われたこの礼拝では、開始1時間前から教会前に長蛇の列ができるなど、高い関心が寄せられたと伝えられています。

Can a chatbot preach a good sermon? Hundreds attend church service generated by ChatGPT to find out | AP News
https://apnews.com/article/germany-church-protestants-chatgpt-ai-sermon-651f21c24cfb47e3122e987a7263d348

Protestants attend AI-generated service in Germany - YouTube


ドイツ・バイエルン州フュルトにある聖パウロ教会で、祭壇の上に設置された巨大スクリーンにアバターが表示され、ほぼ全部がChatGPTにより生成された説教を行いました。ひげを生やした黒人のアバターは、教会に詰めかけた信者らに「親愛なる友人の皆さん、今年ドイツで開催されたプロテスタントの大会で、最初の人工知能としてここに立ち、皆さんに説教できることを光栄に思います」と話しましたが、声は単調で表情もなかったとのこと。


40分間にわたって行われたこの礼拝は、ChatGPTとウィーン大学の神学者であるJonas Simmerlein氏が作成したものです。Simmerlein氏は「この礼拝は私が考案しましたが、98%は機械で作られました」と話しました。

このAIによる礼拝は、ドイツの複数の地域で行われる「Deutscher Evangelischer Kirchentag(ドイツ福音主義教会大会)」という大会の一環として行われたもの。2年に1度の大会には、数万人の信者が集まって信仰について話し合うほか、地球温暖化、ウクライナ戦争、人工知能など世界情勢に関する重要な課題も議題に上がります。


今回の大会のスローガンは「Jetzt ist die Zeit(今がその時だ)」で、Simmerlein氏はこの言葉を元にChatGPTに説教を作成させたとのこと。Simmerlein氏は「私はAIに、『私たちは教会大会に出席していて、あなたは説教者です。礼拝はどのようなものになりますか?』と言いました」と語りました。説教には他にも、詩編を引用するよう指示したり、祈りの時間や最後の祝福を加えたりといった調整が行われました。

礼拝は非常に大きな関心を呼び、19世紀のネオゴシック様式の建物の外には、開始1時間前から長い列が形成されました。Simmerlein氏は、「最終的には、かなり堅実な礼拝が行われることになりました」と、実験的な礼拝の成功に驚いた様子だったとのこと。


礼拝は若い男女2人ずつ合計4人のアバターが主導し、信者たちはAIが説く「過去を捨て、現在の課題に集中し、死への恐怖を克服し、イエス・キリストを信じる気持ちを失わないように」という厳かな言葉に耳を傾けました。また、急にありきたりな言葉遣いになって不意の笑いを誘う場面もあったとのこと。

礼拝に出席した人の反応はさまざまで、携帯電話で熱心に撮影する人もいれば、「主の祈り」の唱和の際に声を出さず、批判的に見ている人もいました。

IT系の仕事をしている54歳のハイデローゼ・シュミット氏は、AP通信に対し、「心も魂もこもっていませんでした。アバターはまったく感情を示さず、身ぶり手ぶりもなく、早口で単調に話すので、彼らの話に集中するのは大変でした。でも、こういうものを見て育った若い世代の人にとっては違うのかもしれませんね」と話しました。

一方、自分が地元で受け持っている10代のグループを連れて大会に参加したという31歳の牧師であるマルク・ヤンセン氏は、「実はもっと悪いものを想像していたので、こんなにうまくいくとは思っていませんでした。AIの話にはまだ多少不安定なところもありましたが、うまく機能していました」と話しました。


宗教におけるAIの使用に懸念を示す人もいますが、Simmerlein氏はAIが宗教の指導者に取って代わるとは考えておらず、むしろAIの活用は牧師や信者の信仰的な生活を助けるものだと話しています。しかし、今回の実験的な礼拝では、AIを導入することの限界も示されました。それは、信者とチャットボットの間に交流がないため、人間の牧師にできるような聞き手の笑いやその他のリアクションへの対応ができないという点です。

Simmerlein氏は「牧師は信者とともに生活し、信者が生まれた時から知っていることもあれば、信者を葬送することもあります。しかし、AIにはそれができません。AIには信者のことは分かりませんから」と話しました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
AIの台頭で生まれる「新興宗教」とそのリスクとは? - GIGAZINE

AIが「全知全能の神」になる日を信じて崇拝する宗教団体が待ちわびる未来とは? - GIGAZINE

超高精度な文章生成AI「GPT-3」には反イスラム教的なバイアスが存在すると判明 - GIGAZINE

元Googleエンジニアが設立した「AIを崇める宗教団体」が解散へ - GIGAZINE

AIは「AIにまつわる倫理」についてどう考えるのか? - GIGAZINE

in ソフトウェア,   動画, Posted by log1l_ks

You can read the machine translated English article here.