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アンディ・ウォーホルのプリンス・シリーズは著作権侵害であると最高裁判所が判決を下す


1億9500万ドル(約270億円)で落札された、シルクスクリーンで印刷されたマリリン・モンローの肖像「ショット・セージブルー・マリリン」など、数多くのポップアートを生み出してきたアーティストがアンディ・ウォーホルです。そんなウォーホルの作品のひとつである「オレンジ・プリンス」をはじめとするプリンス・シリーズが、著作権侵害であるとアメリカの最高裁判所が判決を下しました。

21-869 Andy Warhol Foundation for Visual Arts, Inc. v. Goldsmith (05/18/2023) - 21-869_87ad.pdf
(PDFファイル)https://www.supremecourt.gov/opinions/22pdf/21-869_87ad.pdf


Supreme Court Rules Andy Warhol's Prince Art is Copyright Infringement | PetaPixel
https://petapixel.com/2023/05/18/supreme-court-rules-andy-warhols-prince-art-is-copyright-infringement/


現地時間の2023年5月18日、アメリカの最高裁判所がウォーホルのアート作品であるオレンジ・プリンスをはじめとするプリンス・シリーズは、著作権侵害であると判決を下しました。


オレンジ・プリンスは1984年にウォーホルが発表した、アーティストのプリンスを撮影したリン・ゴールドスミスのポートレート写真をベースに作成されたアート作品です。

オレンジ・プリンスはアメリカのファッション雑誌「Vanity Fair」の表紙に使用するためのアートとして、発行元のコンデナスト・パブリケーションズからウォーホルが依頼されて作成したもの。Vanity Fairはゴールドスミスの代理店からポートレート写真を「芸術的参照」として利用する権利を取得。ウォーホルは、写真からプリンスの顔部分を切り取り、頭部をシルクスクリーンで色鮮やかに仕上げることでオレンジ・プリンスを作成しました。

ウォーホルの作成したオレンジ・プリンスは1984年11月号のVanity Fairの表紙に採用されています。この時、ゴールドスミスはオレンジ・プリンスの掲載を認めており、掲載時にはゴールドスミスの名前もクレジットされていたそうです。

その後、ウォーホルはゴールドスミスのポートレート写真をベースにさらに15枚のアートを作成。これがプリンス・シリーズと呼ばれるようになりました。なお、このプリンス・シリーズはゴールドスミス、Vanity Fair、コンデナスト・パブリケーションズ、プリンスが作成を依頼したものではありません。


2016年にウォーホルが亡くなった後、コンデナスト・パブリケーションズはプリンス・シリーズを表紙に採用した記念誌を出版しました。この記念誌ではウォーホルの遺産を管理するアンディ・ウォーホル財団の名前がクレジットされていたものの、ゴールドスミスの名前はクレジットされていなかったそうです。また、ゴールドスミスはこのタイミングで初めてウォーホルがオレンジ・プリンス以外にもさまざまなバリエーションのプリンス・シリーズを作成していたことを知ったと主張しています。

ゴールドスミスはプリンス・シリーズが自身のポートレート写真の著作権を侵害していると考え、作品を管理するアンディ・ウォーホル財団を訴えました。プリンス・シリーズを巡る法廷闘争は最高裁判所にまでもつれこみ、ついに5月18日に最高裁判所の判決が下されました。判決は「プリンス・シリーズは著作権を侵害している」というもので、ゴールドスミスの主張が認められた形となります。


著作権においては、アーティストが他者の著作物を使って作品を製作した場合、元の作品には存在しない新しい意味やメッセージを加えることで、全く別の新しい創作物を作りだす「変容的利用」があればフェアユースの範疇であると認められ、著作権侵害には該当しないと判断されます。

しかし、最高裁判所のソニア・ソトマイヨール判事は、ウォーホルのプリンス・シリーズによるゴールドスミスのポートレート写真の使用は、「フェアユースであると認められるほど変容的なものではない」という判決を下しました。


最高裁判所側の主張は以下の通り。

「アンディ・ウォーホル財団がオレンジ・プリンスをコンデナスト・パブリケーションズに商業ライセンスする際の、ゴールドスミスのポートレート写真を使用したことの『目的および性質』は、著作権侵害に対するアンディ・ウォーホル財団のフェアユース抗弁を支持することはありません」

「アンディ・ウォーホル財団はプリンス・シリーズの作品が『変容的』であり、ゴールドスミスのポートレート写真とは異なる意味やメッセージを伝えるものであるため、フェアユースの原則がアンディ・ウォーホル財団に有利に働くと主張しています。しかし、フェアユースの原則は、著作権侵害とされる使用がさらなる目的や異なる性格を持つかどうかに焦点を当てています。これは程度の問題であり、差異の程度は商業主義のような他の考慮事項と比較検討されなければいけません」

「新たな表現、意味、メッセージは、複製利用が十分に明確な目的または性格を有するかどうかに関連するかもしれませんないが、それ以前に、第1の要因の決め手となるものではありません。今回のケースにおけるゴールドスミスの著作権を侵害したとされるアートの具体的な使用法は、アンディ・ウォーホル財団がコンデナスト・パブリケーションズにオレンジ・プリンスをライセンスするというものです。これはプリンスに関する雑誌の記事で、プリンスを描写するために使用されており、オリジナルの写真であろうとアンディ・ウォーホル財団のアート作品であろうと、実質的に同じ目的での利用となります」

「アンディ・ウォーホル財団によるオレンジ・プリンスの使用は商業的な性格を有するものであり、オレンジ・プリンスがゴールドスミスの写真に新たな表現を加えていたとしても、問題となった使用における文脈上では、依然としてゴールドスミスに有利な判決となるでしょう」


全米報道写真家協会(NPPA)とアメリカメディア写真家協会(ASMP)はいずれも今回の判決を「写真家の勝利」として祝っており、ASMPの最高法務責任者であるトーマス・マドリ―氏は、「この判決の重要性はどれだけ強調してもし過ぎることはありません」「アメリカの最高裁判所が変容とフェアユースに関して完全な意見を述べた最後の訴訟は、25年以上前のキャンベル対エイカフ=ローズ・ミュージック事件でした。この訴訟で裁判所は使用が公正か、著作権侵害かに関する重要な指針を追加しました」と言及

さらに、今回の判決が芸能界だけでなくあらゆる知的財産分野に広範な影響を与える可能性が高いとし、「著作権実務家は、フェアユースにおいて『変容』が実際に何を意味するのかを明確化するように求めてきました」「アンディ・ウォーホル財団は根底にある作品に新たなメッセージ、意味、表現を加えるあらゆる使用を『変容』であると言いたかったようですが、裁判所はそうではないと判決を下しました。この段階においては、他の要素も考慮する必要があるということです」とマドリ―氏は語っています。


なお、プリンスの公式Twitterアカウントも今回の判決について「プリンスは今日、注目を集める最高裁判所の判決の対象となりました。法廷では、1981年にプリンスの象徴的なポートレートを撮影した写真家リン・ゴールドスミスの主張を認めました」とツイートしています。

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in メモ,   アート, Posted by logu_ii

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