メモ

6000回以上引用されている論文に致命的な欠陥があるのにウォール街の幹部・政府高官・元アメリカ副大統領までもが参照しており学界は何の対策も講じないとの主張


多数引用された実績のある論文に欠陥があり、一部の結果は再現性がないとして、ボストン大学のアンドリュー・キング氏とコロンビア大学のアンドリュー・ゲルマン氏が論文著者を批判しました。キング氏らは適切に対応しない学会にも問題があるとしています。

This paper in Management Science has been cited more than 6,000 times. Wall Street executives, top government officials, and even a former U.S. Vice President have all referenced it. It’s fatally flawed, and the scholarly community refuses to do anything about it. | Statistical Modeling, Causal Inference, and Social Science
https://statmodeling.stat.columbia.edu/2026/01/22/aking/

キング氏らが取り上げた論文は、ロバート・エクルズ氏らが執筆した「The Impact of Corporate Sustainability on Organizational Processes and Performance(企業の持続可能性が組織プロセスとパフォーマンスに与える影響)」です。内容は「持続可能性(サステナビリティ)を重視する企業は株式市場と会計パフォーマンスの両面において競合他社を大幅に上回る業績を上げていることを示す」というもので、持続可能性が意味のあるものであるという文脈などで過去6000回以上引用されてきたといいます。

ところが、この論文には「統計的に有意でないにもかかわらず重要な結果が誤って有意と表示されていた」「一部の測定値は再現不可能であった」「重要な統計的検定が欠落しているように見えた」「サンプルが極めて異常であった」などの欠陥があったそうです。


2023年、キング氏はこのミスを著者らに指摘しましたが、無視されました。これを受けたキング氏は同僚や尊敬する学者たちに助言を求めましたが、「衝突を招くから何もできない」といった言葉でかわされました。その後キング氏は論文を掲載した学術誌「Management Science」に連絡しましたが、訴えは却下されました。

そこでキング氏は通常のプロセスから外れ、SNSのLinkedInで問題を報告。すると後日、著者らが対応を行い、Management Scienceへ訂正文を掲載するに至りました。さらにキング氏は再現研究を「Journal of Management Scientific Reports」に投稿。著者らを糾弾しました。


キング氏は、「再現研究の投稿原稿を修正する過程で、元の論文で報告された手法は実際に使用された手法ではなく、真の手法では著者らの『発見』を支持できないことに気づいた」としています。研究倫理に関する苦情申し立てが必要と判断したキング氏は、著者らが所属するハーバード・ビジネス・スクールとロンドン・ビジネス・スクールに苦情を提出。報告された手法は記述通りに実施不可能であり、したがって結果は解釈不能であると主張しました。

この指摘から間もなく、著者らは手法の誤報告を認めましたが、その部分を修正することはありませんでした。著者らは「該当部分は執筆の過程で削除されたが、間違った文章がうっかり残されてしまい、意図したものではなかった」と返答したそうですが、キング氏は「誤った記述は初期の草案とその後の草案に複数回見られ、削除が試みられた様子はない。論文内で言及された研究が実在したのかどうかが分からない」と指摘しています。


キング氏の苦情に対し、ハーバード・ビジネス・スクールは「当校が今後どう対応するかはお伝えしない」と回答。ロンドン・ビジネス・スクールは「著者は生データにアクセスしておらず、データを捏造(ねつぞう)した訳ではないため、軽微な問題にとどまる」といった回答を行いました。キング氏はこれにも「虚偽の主張は軽微ではなく、研究の有用性を左右する重大な差異だ」として過ちを指摘しました。

キング氏らは現状の課題として、「該当の論文がManagement Science誌上で部分的にしか修正されておらず、何千人もの読者が誤解したままである」という点や、「ジャーナルはコメント、苦情、訂正、撤回要求を開示すべき」「大学は研究の誠実性に関する苦情とその結果を報告すべき」といった点を挙げています。

加えてキング氏らは、仮に査読を終えた論文でも誤りが生じるものだとして、「単一の研究を決定的なものとして引用するのをやめる」「出版物に誤りを発見した場合、訂正を公表する」といった提案を行っています。

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in メモ, Posted by log1p_kr

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