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「下取りに出したiPhoneは一体どうなるのか?」をまとめたムービー


Appleは「Apple Trade In」と呼ばれるデバイスの下取りプログラムを提供しており、これを利用することでユーザーは新しいデバイスを購入する際に割引を受けることができます。この下取りプログラムに出されたiPhoneが一体どうなるのかを、ウォール・ストリート・ジャーナルが取材しています。

How a Traded-In Apple iPhone Gets Refurbished | WSJ - YouTube


新しいiPhoneが登場した際に、古いiPhoneを下取りに出したことがあるという人は多いはず。


そんな中古のiPhoneが送られるのはとある倉庫。


中古の携帯電話市場は今や645億ドル(約8兆6000億円)の市場となっています。


2022年には、北米大陸だけで7350万台の中古およびリファービッシュスマートフォンが出荷されたというデータもあります。


スマートフォンの中古市場は爆発的に拡大しており、メーカーおよびモバイルキャリアが下取りプログラムを強化・推進しています。こういった状況はアメリカだけでなく日本でも同様で、2021年度の中古スマートフォン販売台数は過去最高を記録しています。


そんな中古スマートフォン市場の実態を調査したのが、ウォール・ストリート・ジャーナルでシニア・パーソナル・テック・コラムニストとして働くヨアンナ・スターン氏。同氏は「モバイルキャリアやAppleに、下取りしたデバイスがどこに行き、どのように儲けているのかを教えてほしいと頼んでも、彼らは具体的なことを語ろうとはしません。そこで、私はニュージャージーのど真ん中にある倉庫に来ました」と語ります。


これはUS Mobile Phones(USMP)という企業が所有する倉庫です。


USMPでオペレーションディレクターを務めるサミー・サバー氏が登場。


USMPの所有するこの倉庫には、毎週数万台のiPhoneが届きます。送り主は、モバイルキャリアとAppleという「一般ユーザーからiPhoneを下取りした企業」です。以下の3つの箱の中には3000台ものiPhoneが収納されている模様。


USMPが入手した中古のiPhoneは、一部はアメリカ以外の卸売業者へ送られ、一部は清掃・整備されたのち、AmazonやBack Marketでリファービッシュ品として販売されます。


例えば128GBのiPhone 11の場合、Appleおよびモバイルキャリアは200ドル(日本の場合3万6000円)で下取りを行います。その後、USMPが清掃・整備作業を行い、AmazonやBack Marketがリファービッシュ品として350ドル(Amazon.co.jpの場合5万5557円)で販売します。


USMPが行う清掃・整備作業は以下の通り。まず行われるのは「Data Erasure and Triage(データ消去と検査)」という工程。


まずは中古のiPhoneをLightningケーブルでPCに接続します。


接続したPCにはデバイスから顧客情報を削除するための特別なソフトウェアがインストールされており、これを使って個人情報を削除します。


データの削除が完了したら、iPhoneが正常に動作するかの検査がスタート。まずはディスプレイのチェックが行われ、赤色や白色、緑色などがディスプレイ上で正常に表示されるかがチェックされます。


続いて、iPhoneの物理ボタンが正常に動作するかのチェックが行われます。サイドボタンと音量調節ボタンを押してスクリーンショットを撮影し、ボタンが機能することを確認。


さらに、カメラチェックのために自撮りを撮影。


音を出してスピーカーの動作確認を行います。


さらに、背面のフラッシュが正常に光るかをチェック。


次は、ディスプレイ上に表示された泡のようなものを指でなぞって破壊していくタッチスクリーンの動作確認テスト。


最後は電話をかけてネットワーク機能が正常に働くかを確認。


これでiPhoneの動作確認テストは終了です。


次は「Cleaning(清掃)」工程に入ります。


歯ブラシやプラスチックペグ、マイクロファイバークロス、フォームスポンジ、除菌液などを使って手作業でiPhoneの清掃作業を行います。


3つ目の工程は「Grading(格付け)」作業です。


動作確認・清掃作業が済んだら、作業員がiPhoneを目視でチェックしながら販売時の価格を決めるための格付け作業を行います。フロントガラス・筐体・背面ガラスに傷があるかどうかを確認し、格付け作業を行っていくそうです。


最後は「Kitting(セット化作業)」を行います。


整備したiPhoneと一緒に充電用のLightningケーブルなどを箱詰めする工程です。


iPhoneはかなり厚手の梱包材で包まれているため、落としてしまっても端末が損傷する心配はありません。


Appleは既にiPhone 11を公式ストア上で販売していません。しかし、一般的な小売店では新品のiPhone 11・128GBモデルが500ドル(約6万6000円)ほどで販売されているそうです。しかし、USMPが整備したリファービッシュ品のiPhone 11・128GBモデルならば、それをはるかに下回る価格で入手することが可能となっています。


USMPによると、同社はAppleおよびモバイルキャリアが200ドル(約2万7000円)でユーザーから下取りしたiPhone 11・128GBモデルを、250ドル(約3万3000円)前後で仕入れるそうです。USMPはこれを清掃・整備したのち、350ドル(約4万7000円)でAmazonやBack Marketで販売します。


通常、リファービッシュ品はグレードによって価格が異なってきますが、平均すると新品の販売価格よりも20~30%ほど安く購入できるように価格を設定するのが一般的だそうです。これにより、消費者にとっては安価にiPhoneを手に入れられる魅力的な選択肢となり、整備業者としても一定の利益を上げられるようになるわけです。


ただし、中古iPhoneの清掃・整備には膨大な人件費がかかっており、販売する際にはLightningケーブルを付属しているように、多くの支出が発生しています。


加えて、iPhoneのバッテリーに問題などがあればこれを新品に交換してからリファービッシュ品として販売しなければいけなくなるため、ものによっては赤字で販売せざるを得ない状況もあるそうです。


中古のiPhoneが下取りに出されたのち、中古整備業者に買い取られ、清掃・整備後にリファービッシュ品として販売されるまでの流れを調査したスターン氏は、「このビジネスには敗者よりも勝者の方が多いことがわかりました。モバイルキャリアは下取りしたiPhoneをベースに新品のiPhoneを販売することで利益を得ます。一般顧客は下取りプログラムを使うことで新型iPhoneを安価に購入できるようになります。中古のiPhoneはリファービッシュ品として再び販売されることになるため、環境にも優しいです。デメリットは新品のiPhoneをたくさん売りたいAppleの株価が下がることかもしれませんが、Appleにとってリファービッシュ品がより多くのユーザー、特に発展途上国の人々の手に渡ることとなれば、市場シェアが拡大し、より多くのユーザーがiPhoneを利用することにつながるはずです」と語っています。

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in モバイル,   動画, Posted by logu_ii

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