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中国国営メディアが陰謀論に乗っかるイーロン・マスクにくぎを刺す、中国とテスラの関係を背景に「恩をあだで返すつもりか」と非難

by Steve Jurvetson

新型コロナウイルスが中国の武漢ウイルス研究所から流出したとする「研究所流出説」をアメリカ合衆国エネルギー省が「低信頼度」という位置づけで採用したため、新型コロナウイルスの起源に関する議論が再び熱を帯びています。そのような状況の中、Twitterで大きな影響力を持つイーロン・マスクCEOが「アメリカ医療界のトップがウイルス開発に資金援助を行ったか」とするネットブロガーの投稿に賛同するような意見を示したため、中国国営メディアの環球時報がマスク氏を非難する社説を投稿しました。

马斯克,你这是在砸中国的锅吗?
https://mp.weixin.qq.com/s/Hi9Lu4qgPmyAx4vYeTDb6g

China's CCP warns Elon Musk against sharing Wuhan lab leak report
https://www.cnbc.com/2023/02/28/chinas-ccp-warns-elon-musk-against-sharing-wuhan-lab-leak-report.html

世界中で猛威を振るった新型コロナウイルスの起源については、動物由来のウイルスだとする人獣共通感染症説と、人工的に作られたウイルスだとする武漢研究所流出説の2つの意見があり、両方の観点からさまざまな調査が行われています。

折に触れて、自称市民ジャーナリストのkanekoa.substack.comが起源に関して「アンソニー・ファウチ博士は武漢の研究所での機能獲得研究に資金を提供し、それについて議会に嘘をつきました。そして今、FBIとエネルギー省の両方が、コロナウイルスは武漢の研究所に由来すると結論付けています。つまり、アンソニー・ファウチ博士がCOVID-19の開発に資金を提供したということでしょうか?」とツイート。これに対しマスク氏は「彼はパススルー組織(エコヘルス)を通じて資金提供を行いました」と返信しました。


アンソニー・ファウチ博士とはジョー・バイデン大統領下で首席医療顧問を務めた疫学者であり、武漢研究所流出説が議論される中で度々やり玉に挙がる人物です。ファウチ氏は国立衛生研究所(NIH)傘下の国立アレルギー・感染症研究所の所長を長年務めており、武漢研究所流出説を否定する立場を取っていますが、NIHが確保した財源を非営利団体が武漢ウイルス研究所に提供したと報道されて以来、武漢ウイルス研究所やNIHとの癒着が疑われることとなりました。

特にファウチ氏は報道の約半年前に「ウイルスに特定の機能を獲得させる研究のために資金提供をしたことはない」と強く主張していたため、これが偽証だった可能性と、ファウチ氏がアメリカの税金を使ってウイルス開発に資金を提供していた可能性が、共和党議員を中心に追及されています。

しかし、「機能獲得」研究に対しNIHから資金が提供されたという明確な証拠は見つかっておらず、資金提供した研究とウイルスの出現の間には何の関連性もありません。NIHは繰り返し「病原体の感染力や致死性を高めるような研究には資金を提供していない」と主張してきており、ファウチ氏も共和党の批判をナンセンスだと切り捨てています

by Eclectic Jack

以上がkanekoa.substack.comが言う資金提供の問題であり、NIHの資金を武漢ウイルス研究所に提供した非営利団体こそがマスク氏の言うエコヘルス(エコヘルス・アライアンス)です。マスク氏は先のツイートによって武漢研究所流出説に賛意を表したわけではありませんが、「ファウチ氏がウイルス開発に資金を援助した」という意見に賛同するような返答をしたため、武漢研究所流出説を強く否定する中国に目を付けられてしまったわけです。

環球時報は「アメリカのエネルギー省が中国に敵対するアメリカの政治勢力と協力して中国の武漢ウイルス研究所をハメた資料が、ウォールストリートジャーナルなどのメディアで継続的に誇張・増幅され、アメリカの右翼ネットブロガーがTwitterに投稿して再び表に出ました。公開されている情報では、武漢ウイルス学研究所はエコヘルス・アライアンスと科学的研究に協力していますが、これらの協力はいわゆるウイルスの『機能強化研究』どころか、アメリカの敵対勢力や陰謀論者が主張する『新型コロナウイルスの開発』とは何の関係もないことが分かっています。なぜマスクはこれに巻き込まれ、アメリカの反知性的な右翼陰謀論者に続いたのでしょうか」と書き記し、マスク氏の軽率なツイートに疑問を呈しています。

環球時報が記したこの社説は「马斯克,你这是在砸中国的锅吗?」と題されており、直訳すると「マスク、中国の鍋を壊しているのか?」となります。この社説を共有したCNBC北京支局長のユーニス・ユン氏は、これは「食後に鍋を壊す(恩をあだで返す)」という慣用句をもじったものであると指摘しました。


というのも、マスク氏がCEOを務める自動車メーカーのテスラは中国上海に広大な工場を構えており、中国はテスラにとって2番目に大きな市場であることが背景にあるためです。さまざまな説があふれる中で中国政府にとって禁忌ともいえる話題に多大な影響力を持つマスク氏が触れてしまうと、テスラと中国の蜜月関係に亀裂が入りかねません。この件について報じたBloombergは「一歩間違えれば、率直な億万長者は地政学的な争いに巻き込まれ、彼のビジネスに打撃を与えられる可能性があります」とコメントしました。

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in Posted by log1p_kr

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