一般家庭にあるWi-Fiルーターで人間の3D画像を生成することが可能
Wi-Fiルーターを使用して人間の位置や体勢を検出・認識し、3D画像を生成する方法をカーネギーメロン大学の研究者が発表しました。誰でも簡単に入手可能なWi-Fiルーターで3D画像を生成することができるということで、ヘルスケア・セキュリティ・ゲーム(VR)などの分野にとってのブレイクスルーとなる可能性が指摘されています。
[2301.00250] DensePose From WiFi
https://arxiv.org/abs/2301.00250
WiFi Routers Used to Produce 3D Images of Humans
https://vpnoverview.com/news/wifi-routers-used-to-produce-3d-images-of-humans/
研究チームはアメリカで50ドル(約6500円)程度で販売されているTP-Link製のWi-FiルーターArcher A7 AC1750に搭載されているような一般的なWi-Fi送信機を複数人がいる部屋の中に配置して、部屋の中で検出されたもののワイヤーフレーム画像を作成することに成功しました。
さらに、人工知能(AI)アルゴリズムを用いることで、Wi-Fi信号の跳ね返りから部屋の中にいる人の3D画像を生成することにも成功しています。なお、技術的には「Wi-Fi信号の振幅と位相を分析して人間の干渉信号を見つける」というものです。
研究チームは論文に「この研究結果は、我々の構築したモデルがWi-Fi信号を唯一の入力情報として利用しながら、画像ベースのアプローチに匹敵するパフォーマンスで複数の被験者が密集する部屋の中で個々人のポーズを正しく推定できることを示しています」と記しています。ここでいう「画像ベースのアプローチ」とは、従来のカメラやLiDARのようなレーダー技術を指しています。また、照明が不十分な場所や、カメラの邪魔になるような物が置かれた場所でも正確に3D画像を作成することができ、従来のアプローチよりもはるかにコストが安く済むという利点もあるそうです。
なお、研究チームが利用しているAIアルゴリズムは、Facebook AI Researchが開発した人間の姿勢を2D画像から推定して人体表面にテクスチャーをマッピングできるオープンソースのDensePoseです。
研究チームは「Wi-Fi信号が人間を検出するために用いられるRGB画像のユビキタスな代替品として機能できると信じています」と記し、既存のカメラベースの人検出システムの代替品となれる可能性を挙げました。さらに、既存のシステムよりも個人のプライバシーを保護しながら、必要な機器を手頃な価格で購入することもできると言及。加えて、「先進国のほとんどの家庭にはすでにWi-Fiルーターがあるため、この技術を用いれば高齢者の健康状態を監視したり、家庭での不審な行動を特定したりすることが可能になるかもしれません」と記し、Wi-Fiルーターを用いた3D画像生成技術の将来的な用途を挙げています。
異常なポーズや空間内に3人以上の被験者がいる場合などに3D画像の生成精度が低下するという欠点が存在しますが、これはAIアルゴリズム(DensePose)のトレーニングデータを改善することで解決可能です。そのため、研究チームは「今後の作業では、マルチレイアウトデータを収集し、Wi-Fi信号から人間の立体的な形状を予測するための作業を拡張することを計画しています」と記しました。
しかし、VPN関連のニュースやレビューを取り扱うVPNOverviewは「この技術が主流になると深刻なプライバシー面の問題が発生する可能性があります」と指摘。Wi-Fiルーターの「一家に一台」が当たり前になっている先進国などでは、Wi-Fiルーターをサイバー犯罪者などに悪用される可能性があり、「人々はWi-Fiルーターに対する信頼を失う可能性がある」としています。
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