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裁判の結果次第で「インターネットが壊れかねない」とGoogle、ユーザー投稿に関するメディア側の責任を免除した「通信品位法第230条」をめぐる最高裁の裁判で


2023年2月21日、YouTubeなどのアルゴリズムがテロリストを支援したとしてISISによる攻撃の被害者遺族がGoogleを訴えている「Gonzalez対Google裁判」の審理が最高裁判所で行われる予定です。「アルゴリズムには適用されない」とされている通信品位法第230条の適用範囲が争点となるこの審理を前に、Googleが「もし法律が覆ればインターネットの使われ方が根本的に変わる可能性がある」と訴えました。

20230112144706745_Gonzalez v. Google Brief for Respondent - FINAL.pdf
(PDFファイル)https://www.supremecourt.gov/DocketPDF/21/21-1333/252127/20230112144706745_Gonzalez%20v.%20Google%20Brief%20for%20Respondent%20-%20FINAL.pdf

Gonzalez v Google and the future of an open, free and safe internet
https://blog.google/outreach-initiatives/public-policy/gonzalez-v-google-and-the-future-of-an-open-free-and-safe-internet/

Google tells Supreme Court: Don't undercut the internet
https://www.axios.com/2023/01/12/google-supreme-court-undercut-internet-section-230

Google Says Supreme Court Ruling Could Potentially Upend the Internet - WSJ
https://www.wsj.com/articles/google-says-supreme-court-ruling-could-potentially-upend-the-internet-11673553968

アメリカの通信品位法第230条とは、「プロバイダ(SNS等のプラットフォームサービス及びISP)は第三者が発信する情報について原則として責任を負わず、また有害なコンテンツに対する削除等の対応(アクセスを制限するため誠実かつ任意にとった措置)に関し、責任を問われない」という(PDFファイル)法律です。1996年に制定されたこの法律は「プロバイダによる検閲を防ぎ自由な言論を守る」という見方がある一方で、「偽情報や誹謗(ひぼう)中傷の投稿増加の要因となっている」という見方もなされています。

2月に行われる予定のGonzalez対Google裁判における原告は、イスラム国(ISIS)が2015年11月に行ったテロ攻撃の犠牲者である当時23歳のアメリカ人学生・Nohemi Gonzalezさんの遺族です。原告は「テロリスト集団の動画をユーザーにおすすめすることでISISを支援した」としてGoogle傘下のYouTubeを訴えており、「おすすめ動画を表示するYouTubeのアルゴリズムには、230条の保護は適用されないはずなので、Googleは責任を負うべき」と主張しています。

原告はさらに、「通信品位法第230条の賠償免責の盾が立法者が想定していなかった行為や状況まで拡大されている。有害なコンテンツを推奨するような、プラットフォームによる特定の行為は保護されるべきではない」と主張しており、「YouTubeがホームページに『YouTubeはこの動画を見ることを強くお勧めします』と書いたとしたら、それは明らかにプラットフォーム側の責任の範囲外である『第三者が提供する情報』ではない」と申し立てています。


「通信品位法第230条がアルゴリズムにまで適用されるか」ということを争点にした訴訟は、これまでにもFacebookやTikTokを相手取り行われているのが現状です。

審理において、通信品位法第230条の適用範囲がアルゴリズムにまで及ぶかどうかが決定される予定です。このことについて、審理を控えたGoogleが2023年1月12日に趣意書を提出し、「通信品位法230条を改変することはインターネットの中心的な構成要素を弱体化させるものだ」と裁判所に訴えました。


Googleの主張によると、通信品位法第230条は、コンテンツプロバイダがユーザーにとって関連性のある有用なコンテンツをおすすめし、人々とコンテンツを結びつける能力を常に保護してきたため、改めて法律の適用範囲が問われた場合、これらのサービスの質が低下するとのこと。

また、230条が改正されると表現の自由が損なわれ、一部のウェブサイトは過度な検閲を余儀なくされて法的リスクの可能性があるコンテンツを逐一フィルタリングする必要が生じ、一部のサービスは完全に停止される可能性があるとGoogleは主張。これによりユーザーがインターネットを楽しむ上での選択肢を失い、労働、遊び、学び、買い物、創造、意見交換に参加する機会を失うことになるとしました。

また、仮に法的保護が縮小された場合、大手ウェブサイトがより多くの潜在的に攻撃的なコンテンツをブロックすることにつながる一方で、コンテンツを選別する努力から生じうる責任を避けるために、小規模なウェブサイトがフィルタリングを取り止めることにつながるとGoogleは述べています。


Googleは「230条を弱体化させる判決が下されれば、ウェブサイトは議論を呼ぶ可能性のあるコンテンツを削除するか、不愉快なコンテンツが知られないよう目をつぶるかのどちらかを迫られることになる。そうなれば、コンテンツプロバイダは過度に精選された主流のサイトか、好ましくないコンテンツで溢れかえった辺境のサイトのどちらかを選ばざるを得なくなる」と主張しました。また、おすすめを表示するアルゴリズムを他と区別せず、それらすべてを230条で保護すべきであるとも述べています。

Googleの法律顧問を務めるハリマ・デレイン・ブラド氏は「もし最高裁が広く受け入れられている230条の適用を変更するならば、情報へのアクセスを妨げ、表現の自由を制限し、経済に打撃を与え、消費者を有害なコンテンツに対してより無防備な状態にすることになるのです」と述べました。

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in ネットサービス, Posted by log1p_kr

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