ついに核融合で生産エネルギーが投入分を上回る「エネルギーの純増」を確認か

アメリカのエネルギー省が運営するローレンス・リバモア国立研究所で行われたレーザー核融合実験で、投入を上回る量のエネルギーの出力を初めて確認できたとFinantial Timesが報じています。
Fusion energy breakthrough by US scientists boosts clean power hopes | Financial Times
https://www.ft.com/content/4b6f0fab-66ef-4e33-adec-cfc345589dc7
核融合は、重水素と三重水素からヘリウム4を生成することで、中性子と共にエネルギーを取り出すというものです。連鎖反応で暴走してしまう危険性が高い核分裂と比べると核融合反応は非常に安全で、さらに核融合反応から得られるエネルギーは核分裂反応と比較してもおよそ4~5倍。そのため、未来のエネルギーとして大きく期待されています。
しかし、核融合反応は最終的に大きなエネルギーを取り出せるものの、そもそも核融合反応を起こすために膨大なエネルギーが必要になるため、エネルギーコストが高くついてしまうのが難点。記事作成時点では、核融合反応を起こすための投入エネルギーが出力エネルギーを上回ってしまうため、実用化からはほど遠いとされています。
記事作成時点で行われている核融合研究の多くは「磁気閉じ込め方式核融合」の実験が行われています。この磁気閉じ込め方式では、水素を強力な磁力で保持しながら超高温に過熱して核融合反応を起こせるプラズマ状態にする必要があります。
ローレンス・リバモア国立研究所では、水素プラズマを閉じ込めた小さなカプセルにレーザーを照射することで核融合反応を起こす「慣性閉じ込め方式レーザー核融合」の実験を行っています。

この慣性閉じ込め方式は、大出力レーザーを用意する必要があるものの、磁気閉じ込め方式より比較的低温で行えるのがポイント。2021年には核融合反応から1.37メガジュールの出力を得ることに成功していましたが、この時の出力エネルギーはレーザーによる投入エネルギーの約70%だったそうです。
Financial Timesによると、2022年11月末から行われていた実験で、約2.1メガジュールのレーザー照射に対して約2.5メガジュールのエネルギーが得られたとのこと。つまり、投入エネルギーの約120%に当たる出力エネルギーが得られたというわけです。
ただし、ローレンス・リバモア国立研究所は実験結果の分析はまだ進行中であり、そのプロセスが完了するまでは正確なことはいえないとしています。匿名の関係者によると、核融合反応から得られたエネルギーが予想よりも大きかったため、一部の診断機器が損傷してしまい、結果分析に時間がかかっているとのこと。

エネルギー省のジェニファー・グランホルム長官と核安全保障担当次官のジル・フルビー氏は、ローレンス・リバモア国立研究所で「重大な科学的ブレイクスルー」について2022年12月13日(東部標準時)に発表を行うと述べ、それ以上のコメントを控えました。
プラズマ物理学者のアーサー・タレル氏はFinantial Timesに対して、「エネルギーの純増が確認されれば、私たちは歴史の瞬間を目の当たりにしたことになります。科学者たちは1950年代以降、核融合で投入されたエネルギーよりも多い出力エネルギーを得るために苦労してきました。ローレンス・リバモア国立研究所の研究者たちは、数十年にわたる目標を最終的かつ完全に打ち破ったのかもしれません」とコメントしています。
technological challenge humanity has ever undertaken. Scientists have struggled to show that fusion can release more energy out than is put in since the 1950s, and the researchers at Lawrence Livermore seem to have finally and absolutely smashed this decades-old goal. This...
— Arthur Turrell (@arthurturrell) December 11, 2022
なお、Fusion Industry Association によると、2022年6月末までの12カ月間に、核融合企業は28億3000万ドル(約3900億円)の投資を調達し、これまでの民間部門の投資総額は約49億ドル(約6700億円)に達したとのこと。著名な投資家も核融合技術に注目しており、Amazonの創業者であるジェフ・ベゾス氏は核融合発電所を2025年に始動させるべく、約110億円を投資していることが報じられています。
Amazonのジェフ・ベゾスCEOが110億円を投資した核融合発電所が2025年に始動 - GIGAZINE

・つづき
エネルギー省が正式に核融合実験でエネルギー投入を上回る出力を達成し「点火」を確認したと発表 - GIGAZINE

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