マスクの着用で学校内での新型コロナ感染が効果的に防がれていたことが調査により明らかに
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが始まって以降、感染防止対策としてマスクの着用が世界的に広まりました。しかし、パンデミックが長引く中でマスクの着用義務は次第に撤廃されており、海外では学校内でもマスクの着用義務が撤廃されている地域も多くあります。そんな中、ボストンではマスクの着用義務が解除されてからも学校内でのマスク着用を義務化している学区が2つあるため、マスクを着用している場合とそうでない場合に「COVID-19の感染拡大がどのくらい違うのか?」を比較調査することが可能となっていました。これについて比較調査したところ、マスクの着用を義務化することで学校内でのCOVID-19感染拡大を効果的に防ぐことができることが明らかになっています。
Lifting Universal Masking in Schools — Covid-19 Incidence among Students and Staff | NEJM
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2211029
Masks Cut Covid Spread in Schools, Study Finds - The New York Times
https://www.nytimes.com/2022/11/10/health/covid-schools-masks.html
マサチューセッツ内科外科学会によって発行されている査読付き医学誌であるNEJMで、2022年春にマスクの着用義務を解除したボストンの学区内に存在する「マスク着用を義務化しなくなった学区」と「マスク着用を義務化し続けた2つの学区」を比較調査した研究論文が発表されました。
調査の結果、マスク着用を義務化することで学校内でCOVID-19の感染件数を大幅に減少させることができることが明らかになっています。具体的には、「マサチューセッツ州ケンブリッジにある比較的新しい学校に通うマスクをしていない学生」よりも、「建物が古く、十分な換気システムを持っていなく、教室内に生徒があふれている学校に通うマスクを着用した学生」の方が、COVID-19の感染率が低かったそうです。
この研究は、ハーバード公衆衛生大学院とボストン公衆衛生委員会の研究者たちにより行われたもの。ボストン大学公衆衛生学部の助教授であり、論文の著者のひとりでもあるジュリア・ラフマン氏は、研究について「学校内でウイルス感染を阻止するためにマスクの着用を義務化することの有効性に関する間違った情報を払拭するのに役立つ」と言及しています。
研究チームは「この夏、人々は『あぁ、学校でCOVID-19は広まらないのか』と言っており、子どもたちはCOVID-19に感染しないという誤解をしていました。しかし、本研究によりCOVID-19は学校や家庭、教師の間でも広がっていることがわかります」と記しています。
研究では子どもたちが学校内で着用しているマスクの種類については調べていません。しかし、ラフマン氏は「研究は、人々がグループとしてマスクを着用していれば、人口全体の感染が減少し、生徒や教師の欠席を減らせることを示しています」と述べ、どの種類のマスクを着用していても、ある程度の感染拡大防止効果が期待できるとしています。
調査対象となったのは72の学区で、調査では15週間にわたりマスクを着用していたボストンとチェルシーの2つの学区と、異なる時期にマスクの着用義務を解除した70の学区を比較。マスク着用義務を解除した場合、着用しているグループと比べて学生と職員1000人当たり44.9人もCOVID-19発症数が多くなり、15週間で推定1万1901人の感染者が発生したと研究チームは結論付けています。
論文の著者のひとりでありハーバード公衆衛生大学院の博士研究員であるトリ・クーガー氏は「マスクの着用義務要件を解除した学校では、COVID-19の発生率が一貫して持続的に増加していることがわかりました」と述べました。なお、クーガー氏によると調査期間の15週のうち12週で「統計的に有意なCOVID-19の発生率の増加が見られました」そうです。
また、マスクの着用義務が解除された学校で発生したCOVID-19感染症例の3分の1が、義務化解除に起因するものであったことも明らかになっています。また、学校で働く職員の場合は、COVID-19発症の10件中4件が義務化解除に起因するとクーガー氏は語りました。
一方で、学校でのマスク着用に批判的な疫学者のトレーシー・ベス・ ホーグ氏は、今回発表された研究は観察研究であり無作為化対照試験ではないと主張。そのため、マスクの着用とCOVID-19の発症に関する相関関係を示すことはできるものの、2つの間の因果関係を証明することはできないと指摘しています。また、別のマスク着用に批判的な感染症医師であるシラ・ドロン氏も、「今回の研究はあくまで学校でのマスク着用義務化について調べた医学文献のひとつであり、その内容は文献によりまちまちである」と指摘。
さらに、マスクの着用により子どもがコミュニケーション上の問題を引き起こしたり、発話の発達を遅らせる可能性があることを挙げ、「言語学習が困難な子どもたちにとって、マスクの着用は教師や周りの生徒が話している内容を理解する妨げになります」と指摘し、学校でのマスク着用に反対する理由はCOVID-19の感染以外にあると説明しました。
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