電源周波数のわずかな変動をタイムスタンプとして用いる「The Hummingbird Clock」

時計をずっと表示していると、秒針の先端が赤い軌跡を描きます。音の揺らぎに合わせて、微妙にブレがあります。

動作風景はこんな感じです。

「The Hummingbird Clock」動作風景 - YouTube


この「The Hummingbird Clock」の元ネタにあたるのはイギリス政府が2016年7月7日から運用しているという「電気周波数ネットワーク(ENF)分析」という技術です。

1996年、カタリーナ・グリゴラス博士は「電気」の生み出す騒音が、単なる「音」ではなく微妙に「歌っている」ことに気付きました。イギリスの電源周波数は50Hzですが、瞬間的には49Hz～51Hzに変動することがあるのがその理由です。家庭や企業が利用するにあたっては配電のところで標準化が行われ、周波数が49.6Hzでも51.3Hzでも家電は問題なく動きます。

しかし、この微妙な変動を24時間365日記録すると、その日・その時間の「フィンガープリント」となります。イギリスで電気が通っている場所であれば、どこで録画・録音した音にも、周辺の電気を用いる機器から「ブーン」と50Hz周辺の音が鳴っているので、その変動具合をマスターデータと照合することで、音がいつ発生したものなのかを特定することが可能になります。

政府機関はマスターデータの録音を2016年7月7日から行っていますが、一般人がそのデータを手に入れることはできません。その代わりに、誰でもアクセスできるように技術を解放したのが「The Hummingbird Clock」だというわけです。

サイトの説明では、法的紛争に巻き込まれて録音データ・録画データがいつのものか正確な時間が必要な場合、投稿ページから連絡すると、調査委員会が申請内容を審査して、該当する案件を取り扱うかどうかを検討した上で、分析結果と技術報告書の提示を行ってくれるとのことです。