医師が燃え尽き症候群になっていると医療事故の確率が倍になる
特定の物事に没頭していた人が心身の疲労で一気に意欲を失ってしまう燃え尽き症候群は、さまざまな業界で働く人々において深刻な問題となっています。全世界で約24万人の医師を対象にした新たな研究では、「燃え尽き症候群の医師は医療事故を起こす確率が2倍になる」という結果が示されました。
Associations of physician burnout with career engagement and quality of patient care: systematic review and meta-analysis | The BMJ
https://doi.org/10.1136/bmj-2022-070442
Clinicians suffering burnout are twice as likely to be involved in patient safety incidents
https://medicalxpress.com/news/2022-09-clinicians-burnout-involved-patient-safety.html
Burnout in doctors doubles chances of patient safety problems, study finds | Doctors | The Guardian
https://www.theguardian.com/society/2022/sep/14/burnout-in-doctors-doubles-chances-of-patient-safety-problems-study-finds
これまでの研究では医師において燃え尽き症候群が多いことがわかっており、イギリスでは研修医の3分の1が高レベルの燃え尽き症候群を経験しているほか、アメリカでは5分の2が少なくとも1つは燃え尽き症候群の症状があると報告されているとのこと。また、低・中所得国家においても医師の燃え尽き症候群が高い割合で報告されているそうです。
しかし、燃え尽き症候群と医師のパフォーマンスに関する研究は少ないことから、イギリスとギリシャの研究チームは合計23万9246人の医師を含む170の研究を分析しました。調査対象となった研究は、アメリカやイギリスだけでなくアフリカやアジア諸国の国々で行われたものが含まれており、燃え尽き症候群と医師のキャリアエンゲージメント、患者ケアの質などのデータが含まれていたとのこと。
分析の結果、燃え尽き症候群の医師はそうでない医師と比較して、自分の仕事に不満を抱く割合が最大で4倍になることが判明。また、退職することを検討していたりキャリア選択を後悔していたりする割合が3倍以上であることが示されました。最も燃え尽き症候群と医療事故の関連性が高かったのは、20~30歳の若手医師や救急医療で働く医師でした。
深刻なことに、燃え尽き症候群の医師は医療事故に関わる可能性が2倍になり、プロフェッショナリズムが低い割合も2倍だという結果になりました。さらに、患者から低い満足度評価を受ける割合も2倍以上でした。
燃え尽き症候群と仕事に対する満足度低下の関係は、病院の環境が劣悪であったり、年齢が31~50歳であったり、救急医療または集中治療に携わっていたりする医師で特に高いことも報告されています。一方、一般開業医では燃え尽き症候群の割合が最も低かったとのことです。
研究チームは、今回レビューした研究では仕事の満足度やその他の尺度の定義が統一されておらず、結果が不完全なものである可能性を認めています。それでも、「燃え尽き症候群は医師のキャリア離脱と患者ケアの強力な予測因子です。今後は医師の燃え尽き症候群を監視および改善するための投資戦略が、医療従事者の数を維持して患者ケアの質を向上させる手段として必要になります」と主張しています。
英国医師会の会長を務めるLatifa Patel氏は今回の研究結果を受けて、「この報告は医師や医学生にとって驚きではありません。燃え尽き症候群は個人の幸福やキャリアだけの問題ではなく、患者の安全の問題でもあります」とコメント。燃え尽き症候群の医師は自分の能力を最大限に発揮できず、患者のケアに悪影響を及ぼすため、医師の数を確保・維持することが重要だと主張しています。
また、ドイツ・ボン大学のMatthias Weigl教授は、「医師における燃え尽き症候群のまん延は、根深い社会的問題と医療部門全体の構造的問題によって引き起こされた、欠陥のある労働システムを示しています。医師・患者・医療システムの安全のためには、スタッフのエンゲージメントを奨励して燃え尽き症候群を防ぐ職場環境の設計に向け、エビデンスに基づくシステム指向の介入を含む緊急の行動が不可欠です」と述べました。
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