「エイリアンの文明は惑星の軌道を変えて数学ベースのメッセージを発信している」と天文学者が主張
地球からのメッセージを携えて宇宙に旅立ったボイジャー号には、数学と化学をヒントにするとデータを解読できるゴールデンレコードが搭載されているなど、数学は話す言葉やそもそも言語を用いてコミュニケーションをするかどうかも分からない地球外文明との間の、ある種の共通言語になると期待されています。もし地球よりも格段に進んだ技術を持つエイリアンの文明があれば、惑星の軌道を変えて天体の運行そのものを数学的なメッセージにするのではないかと提唱する斬新な論文が発表されました。
Mathematical encoding within multiresonant planetary systems as SETI beacons | Monthly Notices of the Royal Astronomical Society | Oxford Academic
https://doi.org/10.1093/mnras/stac1234
Aliens could move entire planets to send a math-based code to other civilizations
https://www.inverse.com/science/could-aliens-reorganize-a-whole-solar-system-to-contact-us
いくつかの天体は、「共鳴軌道」と呼ばれる軌道を描いていることが知られています。例えば、木星にはイオ・エウロパ・ガニメデという衛星があり、そのうちエウロパが木星の周りを1周する間にイオは2周します。さらに、ガニメデが1周する間にエウロパは2周、イオは4周するので、これらの3つの衛星は公転周期の比が1:2:4の軌道共鳴を起こしています。また、主星の周りを回っている全ての惑星が軌道共鳴を起こしているK2-138という惑星系もあります。
カーネギー研究機構地球惑星研究所の惑星科学者であるマシュー・クレメント氏らの研究チームは、2022年5月に学術誌・Monthly Notices of the Royal Astronomical Societyで発表した論文の中で、十分にパワフルで意欲あふれるエイリアン文明なら、惑星系全体の惑星をより複雑な比率で共鳴軌道に乗せることができるだろうと提唱しました。
実際に研究チームがシミュレーションしたところ、6~7の惑星を持つ太陽系型の惑星系で「2から11までの素数」「1から13までのフィボナッチ数列」「1から16までの怠け仕出し屋の数列」の比の軌道共鳴を起こさせた場合、少なくとも100億年は安定したままだという結果が得られました。
この研究を取り上げたニュースメディアのInverseによると、自然界の物体は「4:3」「3:2」「2:1」といった比率に収まることが多いとのこと。こうした比率は、数が1ずつ異なることから天文学者の間で「一次共振」と呼ばれています。
一方、「7:1」や「13:1」といった「高次共振」を持つ軌道は、自然界ではあまり見られません。つまり、もし惑星がこのような軌道をしていたら、高度な地球外文明が意図的に惑星を配置した可能性が高いというわけです。
技術的には、惑星を任意の軌道に乗せるのには数百万年単位の気が遠くなるような時間をかけるか、恒星が放つエネルギーを全て使うような膨大なエネルギーが必要になるとのこと。言い換えると、恒星のエネルギーを全て利用できるカルダシェフ・スケールタイプ2の文明であれば、2年強の期間で可能ということになるそうです。
この結果から研究チームは、「素数やフィボナッチ数列、怠け仕出し屋の数列は地球外知的生命体探査(SETI)で探すビーコンとしての可能性を持っています」と結論付けました。
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