太陽光でチリペッパーをローストして二酸化炭素を抑える実験が公開される、車1700台分の年間排出量を削減可能に
アメリカ南西部に位置するニューメキシコ州では、グリーンチリという青唐辛子を焙煎したものが代表的な郷土料理に使われています。グリーンチリの調理のためには、チリペッパーを焙煎(ばいせん)して風味を強めつつ皮を取り除きやすくする工程が必要ですが、この工程は環境に優しくないため、チリ農場で育ったエンジニアが太陽光でチリを焙煎する「環境に優しいグリーンチリの調理方法」の実験を公開し、実験結果がエネルギーの持続可能性に関する国際会議で共有されました。
Using the power of the sun to roast green chile – LabNews
https://www.sandia.gov/labnews/2022/06/30/using-the-power-of-the-sun-to-roast-green-chile/
ニューメキシコで定番となっている郷土料理のグリーンチリは、調理過程でチリペッパーを焙煎する必要があります。サンディア国立研究所(SNL)が報じた内容によると、チリペッパーを焙煎するためにプロパンガスを使用した場合、1シーズンで約7800トンの二酸化炭素がニューメキシコだけで排出される計算になり、これは1700台の車の年間排出量に相当するとのこと。
そこで、SNLの太陽熱試験施設の研究者でテキサス州のチリ農家の出身でもあるケン・アルミホ氏は、グリーンチリを焙煎する「環境に優しい」方法として、太陽光でチリを焙煎する実験を行いました。グリーンチリの実験では、高温の焙煎が必要な食品を太陽光で行う場合に、従来のプロパンガスによる焙煎と同等の結果が得られるかどうか、という点が着目されました。
アルミホ氏は、高さが約60メートルある太陽熱試験施設の屋上に、スチール製のドラム型チリロースターを設置し、チリ農家である父親から寄付されたグリーンチリの調理を試みました。太陽光を集光するために使用されるヘリオスタットを38~42台使用することで、ロースター全体で従来のプロパンガスを用いたロースターに匹敵するカ氏900度(セ氏約482度)以上の温度を、均一に保つことができたとアルミホ氏は述べています。
以下の写真の向かって右の人物がアルミホ氏です。
実際に太陽光で焙煎したチリは、プロパンガスのロースターで焙煎したものよりもわずかに時間がかかったものの、風味は14人のグリーンチリ愛好家の大半が「プロバンガスでローストしたチリよりおいしい」と太鼓判を押す出来栄えになりました。アルミホ氏によると、焦げてしまうのを避けるために焙煎に時間をかけたため、本来は太陽光による焙煎の方がプロパンガスによる焙煎よりも速く行えると考えているそうです。さらにアルミホ氏は「プロパンガスによる焙煎は、バーナーのある場所だけで熱を得るため、上に積み上げられた全てのチリを効率的に加熱できません。一方で、太陽光による焙煎を行うことで、ロースター全体を均一に熱することができるため、環境に優しいだけではなく、チリをより迅速に、よりよい品質で焙煎できる可能性が高いです」と太陽光による焙煎の利点を主張しています。
プロパンガスによる焙煎と太陽光による焙煎を比較した場合、グリーンチリ22ポンド(約9.9キログラム)あたり2.68ポンド(約1.2キログラム)の温室効果ガスを削減できることが分かりました。これは、仮にニューメキシコ州全体がプロパンガスから太陽光によるチリの焙煎に切替えた場合、毎年13万本の苗木を植えて10年間成長させる植林活動に相当する削減量です。
この太陽光焙煎システムは、集める太陽光を調整して温度を調節することで、グリーンチリだけではなく大豆や穀物、コーヒーなどにも使用できます。一方で、アルミホ氏は「グリーンチリやコーヒー、穀物などの食品を焙煎するためだけに、ヘリオスタットのタワーと設備を構築することは現実的ではありません」と述べています。そのため、アルミホ氏らの研究チームはこの焙煎システムを、各家庭でグリーンチリを焙煎するのに使えるような、小さくて手軽な製品に転用する方法を模索しているそうです。
実験結果は2022年7月11日から7月13日までペンシルベニア州フィラデルフィアで開催された、エネルギーの持続可能性に関する国際会議で共有されました。
16th International Conference on Energy Sustainability - ES 2022
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in サイエンス, 食, Posted by log1e_dh
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