「最もおいしく効率的なエスプレッソ」を数学者と現役バリスタが科学的に導き出した結果とは?

by AntonioGravante

細かく砕いた深煎りのコーヒー豆を使ったエスプレッソは、イタリアやフランスでは最もポピュラーなコーヒーの飲み方です。そんなエスプレッソを科学的に考察した数学者と現役バリスタにより、「最もおいしく効率的なエスプレッソの淹れ方」が解き明かされました。

Systematically Improving Espresso: Insights from Mathematical Modeling and Experiment: Matter
https://www.cell.com/matter/fulltext/S2590-2385(19)30410-2

Researchers brew a formula for consistent espresso and industry savings | EurekAlert! Science News
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2020-01/uoo-rba012020.php

Materials Scientists Learn We’ve Been Brewing Espresso All Wrong - VICE
https://www.vice.com/en_us/article/884q8v/materials-scientists-learn-weve-been-brewing-espresso-all-wrong

「バリスタの多くは、細かすぎる上に多すぎるコーヒー豆でエスプレッソを淹れるので、苦みと酸味のバランスが予測不可能で再現性がなく、しかも効率が悪くなります」と指摘するのは、オレゴン大学の計算科学者クリストファー・ヘンドン氏です。ヘンドン氏がこの結論に達したのは、オーストラリアのコーヒーショップFrisky Goat Espressoのバリスタであるマイケル・キャメロン氏と共同で、「おいしいエスプレッソを定量化するプロジェクト」に取り組んでいたときのことでした。

by stockcentral

ヘンドン氏らは当初、「コーヒー豆は細挽きであればあるほど、効率的にエスプレッソを淹れることが可能」だと考えていました。なぜなら、コーヒー豆の粒は小さければ小さいほどお湯に触れる面積が増えるからです。しかし、キャメロン氏の店のスタッフが、実際にコーヒー豆の挽き方を変えつつエスプレッソを淹れてみたところ、予想を裏切る結果となりました。

以下の図は実験結果をグラフにしたもので、縦軸がコーヒー豆の抽出効率を、横軸がプロ仕様の電動コーヒーミルEK43の設定を表しており、右にいくほどコーヒーが細かく挽かれることを意味しています。折れ線グラフが山なりになっていることから、コーヒー豆を細かく挽きすぎると、かえって効率が悪くなることが見てとれます。


キャメロン氏はこの結果について「コーヒー豆を挽くと、どんな粗さであれコーヒー豆は『微粒子』と『大きな粒』に分かれますが、細挽きにしすぎると『微粒子』が小さくなりすぎます。これにより、コーヒーフィルターが目詰まりを起こして抽出効率が悪くなってしまいます。また、フィルターが詰まると、エスプレッソマシン内でのコーヒーの流れが不規則になるため、味のばらつきの原因にもなります」と話しています。

ヘンドン氏はさらに、「エスプレッソを淹れる際は、コーヒー豆の使用量を標準的な20gから15gに減らし、より粗めに挽くべきです。そうすると、必要な時間は25秒から7~15秒まで短縮されます。しかも、雑味につながる成分は抽出されない一方で、味を良くする成分が多く抽出されるので、コーヒーの濃さを損ねることなく安定しておいしいエスプレッソを淹れることが可能です」と述べました。


ヘンドン氏が実際に、地元のコーヒーショップTailoredに依頼してこの淹れ方を採用してもらったところ、2018年9月~2019年9月の1年間で3620ドル(約40万円)の経費を節約することができました。これを、アメリカで1日に消費されている1億2400万杯のエスプレッソに換算すると、年間11億ドル(約1205億円)の節約につながるとのこと。

TailoredのオーナーのBrian Sung氏は「ヘンドン氏がうちの店に来て、コーヒー豆を減らして粗びきにすれば、迅速にコーヒーが提供できてお金も節約できると語った時には、びっくりしたものです。彼のおかげで、うちの浅煎りエスプレッソは味が良くなって、細挽きにしていたころより甘い風味が引き出せるようになりました」とコメントしました。

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in , Posted by log1l_ks

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