メジャーレーベルデビューを果たす予定のAIラッパーが突如レコード会社から契約を打ち切られる
キャピトル・レコードやブルーノート・レコードといった大手レーベルを傘下に持つキャピトル・ミュージックが、人工知能(AI)によるバーチャルラッパーのFN Mekaとの契約を破棄すると発表しました。FN MekaはTikTokで1000万人以上のフォロワーを抱えていますが、「デジタル・ブラックフェイスである」という批判を受けていました。
Capitol Drops AI Rapper FN Meka Following Backlash - The New York Times
https://www.nytimes.com/2022/08/23/arts/music/fn-meka-dropped-capitol-records.html
AI rapper FN Meka dropped by Capitol following backlash - Los Angeles Times
https://www.latimes.com/entertainment-arts/music/story/2022-08-23/fn-meka-ai-rapper-dropped-capitol-records
FN Mekaは「バーチャルな存在に特化した、世界初の次世代音楽企業」を自称するFactory Newのバックアップを受けて立ち上がったプロジェクトから生まれたバーチャルラッパー。FN Mekaの声は人間ですが、音楽や歌詞の内容、メロディー、テンポはすべてAIによって生成されたものです。
以下がFN MekaのオフィシャルYouTubeチャンネルにアップロードされているショートムービー。
video oficial fnmeka - YouTube
その後、FN MekaはAI由来のバーチャルアーティストとして初めてメジャーレーベルと契約したことで話題になりました。キャピトル・ミュージックは「just a preview of what’s to come.(来るべきものの予告に過ぎない)」というキャッチコピーでアピールしていました。
しかし、アメリカでは、白人が黒人を装うことは「ブラックフェイス」と呼ばれ、人種差別の温床になると批判されています。音楽ビジネスにおける公平性を追求する非営利団体・Industry Blackoutは、FN Mekaがブラックフェイスをデジタル化したものだと強く批判し、キャピトル・ミュージックに対して謝罪を要求し、これまでFN Mekaのプロジェクトに費やした資金をすべて慈善事業に寄付し、レーベルに所属する黒人アーティストたちに予算を回すべきだと主張していました。
Industry BlackoutはInstagramにアップした声明で、「この風刺画がいかに不快なものであるか、キャピトル・ミュージックの認識不足に非があると思います。これはブラックコミュニティと私たちの文化に対する直接的な侮辱です」と述べています。
また、Industry Blackoutは「このデジタル肖像画は不注意な醜態であり、実生活で実際の結果に直面している実在の人々に対して失礼です。例えばFN Mekaの曲にフィーチャーされているアーティストのガンナは、このロボットがマネしているものと同じような歌詞をラップで歌ったとして逮捕されました。ガンナとFN Mekaの違いは、この人工ラッパーは訴訟の対象にならないということです」とコメントしました。
こうした批判に対して、キャピタル・ミュージックは「公平性とその背後にある創造的なプロセスについて十分議論することなく、無神経にもFN Mekaのプロジェクトと契約したことについて、私たちはブラックコミュニティに深く謝罪します。この数日間で建設的な意見を寄せて下さった方々に感謝します。このプロジェクトとの関係を終わらせるという決断に至るまで、皆さんのご意見は非常に貴重なものでした」という声明を発表しました。
なお、FN MekaはすでにTikTokやストリーミングサービスで曲を発表していましたが、記事作成時点で曲は削除済み。また、FN MekaのInstagramアカウントは非公開に設定されています。
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