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急成長した中国のVtuber業界で「中の人」の過酷な労働環境が問題となっている


実在の人物がそのまま顔出しするのではなく、「2Dや3Dのアバターに人間の動きを反映させたライブ配信者」は、バーチャルYouTuberあるいはバーチャルライバーと呼ばれ、「VTuber」と略されます。VTuberは日本で爆発的に成長した界隈ですが、今やアメリカや中国、韓国、インドネシアなど、世界各国で人気コンテンツとなっています。VTuber関連の事業やプロジェクトの価値が合計160億ドル(約2兆1000億円)規模に達するほどVTuber人気が過熱する中国で、VTuberの労働条件が大きく問題となっています。

Inside the virtual influencer industry: Vox Akuma, A-Soul and the VTubers battling overwork - Rest of World
https://restofworld.org/2022/china-virtual-idols-labor/

中国のエンターテインメント企業であるYuehua Entertainment(乐华娱乐)は、TikTokを運営するByteDanceと協力してVTuberグループ「A-SOUL」を立ち上げました。A-SOULは歌や踊りをメインに活動する3DアバターのVTuberグループで、人気ブランドや有名サービスとコラボを行い、560万ドル(約7億4400万円)を売り上げました。中国ではあらゆるメディアやエンターテインメントが監視と検閲の対象であり、VTuberは「コントロール可能なバーチャルンインフルエンサー」と認識され、広告業界からも人気が高まっているとのこと。

【2021/07/09】 Asoul Bilibili World Special Interactive live Day 1 - YouTube


しかし、VTuber人気が高まり、それを利用した活動が活発化するにつれて、「中の人」と呼ばれるVTuberのアクターの労働時間も増えていきます。VTuberのアバターに中の人の動きを反映させるキャプチャーシステムには、スマートフォンやウェブカメラを使った簡単なものから、1セット数千万円もする機材とスーツを使った大がかりなものまであります。スマートフォンやウェブカメラを使うものは自宅でも運用可能ですが、ダンスができるほど3Dアバターをなめらかに動かすには、モーションキャプチャースーツを着て専用の施設で動き回る必要があり、活動による肉体的負担はかなり大きくなります。


以下のムービーは、実際にモーションキャプチャースーツで人物の動きを3Dアバターに反映させるところ。

A Motion Capture Demo Video of VTPlus, A Professional VTuber Livstreaming System by Jigen Toys - YouTube


2022年5月にA-SOULのメンバーだった珈乐(キャロル)が「健康と学業上の理由」でライブ配信と活動を休止すると発表しました。その裏で、中の人と目される人のアカウントが「午前3時まで激しいダンスレッスンをさせられた」「腰椎を痛めて医師からの警告があっても、運営に無視された」「これだけ働いているにもかかわらず収入が非常に少ない」など過酷な労働環境を暴露したことから、一部の熱狂的なファンが「中の人が搾取されていたのではないか」と指摘し、大炎上しました。このスキャンダルをきっかけに、中国ではVTuberの労働条件についての議論が巻き起こったとのこと。

VTuberの3Dアバターやキャプチャーシステムなどを開発する超次元(Super ACG)のブランディングディレクターであるMengyu Peng氏は「中の人が何時間働くかは背後にいる運営スタッフが決めることであり、自分で決めることができません」と述べています。Peng氏は、ほとんどの中の人が1カ月当たり22日、1日4~5時間もVTuberとして活動することを期待されていると語っています。

中国でVTuber産業を研究している香港浸会大学の博士研究員であるYijun Luo氏は、「VTuberは人工的な創造物のように見えるかもしれませんが、現実のインフルエンサーや有名人と同じように、実在する人間の魅力と個性に依存しています。一部のファンはお気に入りのVTuberの中の人のユニークな資質に執着し、他の誰かが代わりになるという考えに耐えられなくなります。VTuberのアクターがアニメ化されたスーパースターの魂なら、なぜ彼らは人間のスーパースターと同じくらいの報酬をもらえないのでしょうか?」と述べています。

珈乐の中の人とされた人物は、A-SOULを休止したあともWeiboとbilibiliで活動を続けています。元珈乐とされる人は1日に1万人以上のファンと交流し、毎日のおやつや昼寝、新型コロナウイルス感染症の検査結果などを共有しているとのこと。また、2022年7月にはbilibiliに歌ってみた動画を投稿しており、すでに88万回以上再生されています。

IT系ニュースサイトのRest of Worldは「この人物は、以前A-SOULのメンバーだったとは決して明言していませんが、ファンは彼女のアカウントを訪れ、かつて愛したアイドルを動かしていた人への強い愛着で引き寄せられるように集まり、応援や賞賛の言葉を残していきます。そして、最近では彼女のことを珈乐と呼ぶ人はいません」とコメントしました。

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in ネットサービス,   動画, Posted by log1i_yk

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