ビットコインなどの仮想通貨の「匿名性」とは何を示しているのか?
近年、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨に大きな注目が集まっています。仮想通貨の多くは中央銀行を持たない分散管理システムを採用しており「匿名性が高い」ということがしばしばアピールされていますが、「匿名性が仮想通貨のどんな特徴を示しているのか」や「匿名性が高いことのメリット」は想像しにくいものです。そこで、仮想通貨や分散コンピューティング技術について研究するCoin Centerが仮想通貨の匿名性について解説しています。
We must protect our ability to transact privately online - Coin Center
https://www.coincenter.org/we-must-protect-our-ability-to-transact-privately-online/
Coin Centerは政府関係者や議員から「仮想通貨は匿名性が高いと聞くが、それに対処するにはどうすればいいのでしょうか?」といったように匿名性に対してネガティブなイメージを持った質問を受けることが多いとのこと。実際に仮想通貨は不正な用途に用いられることも多く、仮想通貨を用いた大規模なマネーロンダリングの摘発も数多く報じられています。
しかし、仮想通貨の基盤となっているブロックチェーン技術は取引の履歴を完全に追跡可能とすることで信頼性を担保しており、誰でも容易に資金の流れを把握可能です。このため、仮想通貨の専門家は「仮想通貨を用いたマネーロンダリングは不可能」と述べており、政府関係者が心配するような「秘密の取引」は難しいといえます。
ロシアが仮想通貨を使って経済制裁を回避するのではという声、専門家は「仮想通貨を使ったマネーロンダリングは不可能」と指摘 - GIGAZINE
「秘密の取引」が困難ならば、一体どのような特徴を指して「仮想通貨は匿名性が高い」と言われているのか疑問に思いますが、Coin Centerは「仮想通貨における『匿名性』とは、追跡を防ぐ能力を意味するのではなく、個人が自身の情報を非公開に保つ能力を示しています」と述べています。
例えば、紙幣や硬貨を用いない電子マネーを用いる場合、取引の際に金融機関などの仲介者が必要となります。この際、仲介者は取引の内容を記録することが可能で「誰がどんな場所でいくら支払ったのか」という情報が筒抜けとなってしまいます。これらの情報は「詐欺の防止」「犯罪捜査の補助」などに有用ですが、政府による国民の監視に悪用されてしまうこともあります。
電子マネーを用いるかぎり、上記のような情報収集から逃れることは不可能です。このため、Coin Centerはプライバシーを保護するためには電子マネーよりも紙幣や硬貨といった「現金」を使うことを推奨しています。同時に、近年ではオンライン空間での取引が主流になっており現金が適切な取引手段ではないことを認め、仲介者の存在しない仮想通貨などの電子的な貨幣システムを普及させる必要があると主張しています。
Coin Centerは「電子的な貨幣システムにはメリットとともにコストが伴います。コストに対処するには、電子的な貨幣システムを一律的に禁止するのではなく、現金と同様の規制を設けることが必要です」と述べ、電子的な貨幣システムを普及させるための法制化を求めています。
・関連記事
ロシアが仮想通貨を使って経済制裁を回避するのではという声、専門家は「仮想通貨を使ったマネーロンダリングは不可能」と指摘 - GIGAZINE
「仮想通貨の多くが犯罪組織に使われている」とアメリカ財務長官候補が発言、しかし「事実は異なる」という指摘も - GIGAZINE
イーサリアムの考案者がエルサルバドルのビットコイン推進を批判、「仮想通貨の自由の精神に反する」との指摘 - GIGAZINE
北朝鮮のハッカー集団による仮想通貨の盗難が年々増加&手口も悪化している - GIGAZINE
・関連コンテンツ