日光に当たると男性は食欲が増すが女性はそうならないという研究結果


紫外線B波(UVB)は炎症やシミ、ソバカス、皮膚がんの原因として知られていますが、男性は皮膚にUVBを浴びると食物探索行動や食物摂取が誘発され、女性には同様の行動誘発がないことが、テルアビブ大学の研究チームにより示されました。

Food-seeking behavior is triggered by skin ultraviolet exposure in males | Nature Metabolism
https://doi.org/10.1038/s42255-022-00587-9


expert reaction to study looking at sunlight and food intake in male and female mice, cells and people | Science Media Centre
https://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-sunlight-and-food-intake-in-male-and-female-mice-cells-and-people/

研究チームは約3000人の3年間の全国栄養調査のデータを分析し、男性が女性と比較して、太陽放射とその季節変動の影響を強く受けており、夏の間のエネルギー摂取量が顕著に増えることを明らかにしました。


具体的には、男性のエネルギー摂取量は、冬(10月~2月)が1日当たり1875kcalだったのに対して夏(3月~9月)は2188kcalと明らかに増加したのに対し、女性は冬が1475kcal、夏が1507kcalと、ほぼ一定でした。これは、男性だけが季節変化の影響を受けていることを示しています。

男性では特に炭水化物、タンパク質、脂肪、ナトリウム、オメガ3脂肪酸、亜鉛、鉄などの摂取量が有意に増加しました。

太陽への露出に対する男性と女性の反応の違いを調べるため、研究チームは18~55歳の男女それぞれ5名に、晴れた日のお昼に約25分間、太陽にあたってもらいました。そして、太陽にあたる前後に得た血漿(けっしょう)サンプルを調べたところ、男性は脂質とステロイドの代謝が増加する一方、女性は代謝が減少していました。

さらに、オスとメスのマウスそれぞれ12匹に10週間にわたって毎日UVB放射線を当てたところ、オス・メスともに耳に有意な色素沈着がみられ、オスはメスに比べて代謝に関連するタンパク質の変化が多かったことがわかりました。

また、UVB処理を受けたオスは、模擬処理を受けたオスに比べてエサのあるゾーンを訪れる回数が増加しましたが、メスはUVB処理の有無で訪問数の有意な違いは出なかったとのこと。これは、UVBがオスのマウスの摂食行動を強化し、メスには影響を与えなかったことを示します。野生型コロニーでは、慢性的にUVBを浴びることで、オスのマウスの体重が有意に増加したとのこと。摂食行動の強化、つまり食欲の増進は、人間の男性でも確認されました。

食欲の調節には食欲ホルモン「グレリン」が関わっています。

食欲が暴走してしまうのは胃で分泌されるホルモン「グレリン」のせいかもしれない - GIGAZINE

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グレリン分泌の制御要因としては音楽、光、匂いが挙げられますが、根本的なメカニズムはわかっていないとのこと。ところが今回、ヒトの皮膚に対してUVB放射を行ったところ、男性の皮下脂肪組織においてグレリンmRNAレベルが有意に高くなったことがわかりました。対照的に、女性の皮下脂肪組織ではUVB放射による変化はみられませんでした。これらの結果から、UVBに当たることがグレリン誘導を介して、男性の食欲の渇望を増進させていることが示されました。

研究チームは、p53遺伝子がUVBによって誘発されるグレリンの発現を調節していることも確認。そしてp53の機能要件を調べるためにマウスでの調査を行い、p53の欠失がUVBによる食欲増進を無効化することを明らかにし、p53が誘発する皮膚脂肪細胞のグレリン発現をエストロゲン(女性ホルモン)がブロックするため、男性よりもエストロゲンが有意に多い女性はグレリン発現が阻害され、UVBを浴びても食欲増進などの影響が出ないことを示しました。

なお、研究に関与せず利害対立もないアストン大学医学部のデュエイン・メラー博士は、「このデータは横断的研究にすぎないので、同じ男性が夏に冬よりも多く食べるかどうか判断することはできません」とコメント。また、5つの実験にわたる興味深い研究であるとした上で、「データに差があり、5つのジグソーパズルが完全には組み上がりません」と指摘しました。

イギリス・オープン大学の応用統計学者ケビン・マッコンウェイ教授は「研究は、皮膚におけるホルモンのグレリンの役割の調査と、それが太陽またはその他の紫外線への暴露とどのように関連しているかを扱うもので、とても面白いものであり重要なものだと思いますが、生理学と内分泌学は専門ではないためこれ以上はコメントしません」と前置きし、「研究内容は、実験用マウスや細胞培養で得られた知見と一致するものですが、実験内容と同じことが人間の体で起きている可能性を完全に裏付けているとは思えません。実験結果が何の価値もないという意味ではありませんが、全国調査の結果を重視することは、研究全体から見ると見当違いであるということです」と、実験内容と結論を結びつけることに懐疑的な意見を述べています。

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in サイエンス,   , Posted by logc_nt

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