「二日酔い防止薬」に効果はあるのか?
飲み会やパーティーでお酒を飲み過ぎてしまい、翌朝ひどい二日酔いに苦しんだという経験がある人は多いハズ。この二日酔いを防止する効果を主張する錠剤「Myrkl」がスウェーデンの企業「De Faire Medical」によって開発され、イギリスで販売開始したのですが、イギリスのプリマス大学で肝臓について研究しているアシュウィン・ダンダ氏がMyrklの効果について懐疑的な意見を述べています。
Myrkl: new anti-hangover pill said to break down up to 70% of alcohol in an hour – what you need to know
https://theconversation.com/myrkl-new-anti-hangover-pill-said-to-break-down-up-to-70-of-alcohol-in-an-hour-what-you-need-to-know-186357
通常、摂取したアルコールは胃でゆっくりと吸収され、その後小腸に到達した時点で速やかに吸収されて肝臓でアセトアルデヒドに分解されます。Myrklを服用した場合、Myrklに含まれる微生物が小腸内でアルコールを水と二酸化炭素に分解するとのこと。De Faire Medicalは、飲酒前にMyrklを服用することで飲酒後1時間の血中アルコール濃度を70%下げられると主張しています。
De Faire Medicalが実施した「Myrklの効果を検証する実験」では、24人の成人を対象に1日2錠のMyrklもしくは偽薬を7日間投与し、50~90mlのスピリッツを飲ませ、飲酒後2時間の血中アルコール濃度を分析。その結果、Myrklを投与したグループでは偽薬を投与したグループと比べて飲酒から60分後の血中アルコール濃度が70%低かったことが示されています。
しかしダンダ氏は検証実験には「24人中14人の結果しか報告されていない」「被験者によって結果のばらつきが大きい」「製品版のMyrklでは飲酒の1~12時間前に2錠飲むことが推奨されているが、実験ではアルコールを飲ませる日の7日前から毎日Myrklを投与している」といった問題点があると指摘しています。加えて、検証実験では「腸や肝臓に病気を抱える人にも効果があるのか?」「男性と女性で違いはあるのか?」「食べ物とアルコールを同時に摂取するとどうなるのか?」といった疑問が解決されていません。
また、ダンダ氏はMyrklが腸で作用する点に着目し、アルコールが腸に到達するまでに引き起こす胃の痛みなどの症状緩和には役立たないと指摘。さらに、腸内の微生物環境や、アルコール吸収速度が人によって異なるため、Myrklの効果が人によって大きく異なる可能性があるとも主張しています。
ダンダ氏は二日酔いを防ぐ手段としてMyrklが一部の人に有益だとしつつMyrklには不明な点も多いと指摘。「二日酔い防止に最も効果的な手段は、飲酒量を減らすことです」と述べ、根本的な解決方法を推奨しています。
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