YouTubeがインドで宗教対立・女性蔑視を拡散するための「武器」と化しているという報告
ニューヨーク大学のStern Center for Business and Human Rightsが、インドの与党であるインド人民党を支持するインフルエンサーが、イスラム教徒や女性を標的とした陰謀論やヘイトコンテンツを広めるためにYouTubeを使用していると報告しています。
YouTube Report — NYU Stern Center for Business and Human Rights
https://bhr.stern.nyu.edu/youtube-report
YouTube Videos Are Targeting Muslims, Women in India, Study Says - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-06-13/youtube-videos-are-targeting-muslims-women-in-india-study-says
13億人以上の人口を抱え、インターネットの利用も急速に拡大しているインドは、ソーシャルメディア企業にとっては重要かつ収益性の高い国の1つです。しかし、インド国内での支持が高いインド人民党のヒンドゥー至上主義・民族主義的な政策は過激で差別的な言論を招きやすく、こうした主義主張を唱えるコンテンツは各プラットフォームの規約に反するような内容になるため、ソーシャルメディア企業は対策が求められています。実際にMeta(旧Facebook)はインドで宗教的ヘイトを招くようなコンテンツの拡散にFacebookが利用されていることを認識していたことが報じられました。
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経済紙のBloombergによれば、インドには4億5000万人以上のYouTuberが存在しており、アメリカのほぼ2倍の規模にまで増えているそうです。Stern Center for Business and Human Rightsの報告書では、インドではYouTubeが登場する以前から宗教的な対立が存在していたことが指摘され、「ソーシャルメディアの普及が宗教的な対立や敵意を強めている」と主張。Stern Center for Business and Human Rightsは、元インド人民党の幹部がYouTubeやTwitterなどのソーシャルメディア上で、イスラム教やその創唱者であるムハンマドを侮蔑するような発言をしたことで、中東の貿易相手国との外交問題を引き起こしたことにも触れています。
報告書によると、一部のYouTuberがアップロードしている動画は、「イスラム教徒がジハード(聖戦)と称して新型コロナウイルスの流行を拡散している」という陰謀論を主張しているとのこと。また、Stern Center for Business and Human Rightsは、アップロードされた動画はイスラム教徒だけでなく女性に対するヘイトも含んでおり、イスラム教徒や女性に暴言を吐くなどのヘイトスピーチの例が確認できたと述べています。
Stern Center for Business and Human Rightsは「国粋主義的なインドのYouTubeインフルエンサーによる女性差別的な暴言が相次ぎ、このような暴言がこのプラットフォームで人気を博しています。また、物理的な脅迫を含むような自撮り動画も配信されています」と報告書にまとめました。Bloombergはインド人民党に対してコメントを求めましたが、返答はなかったそうです。
YouTubeの広報担当者は、「アルゴリズムの透明性が高まるとシステムの保護が難しくなりますが、報告書の内容はYouTubeにとって優先的に処理すべき事項です」と述べ、陰謀論やヘイトコンテンツを広めるような動画に対して処分を行うとしています。
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