セキュリティ

アメリカサイバー軍がウクライナ支援で「ロシアへの攻撃的なハッキング作戦」を行ったことを司令官が認める


ロシアはウクライナ侵攻の開始前後から複数のサイバー攻撃を仕掛けていることが報じられていますが、アメリカはそれ以前からウクライナのサイバー防衛に協力してきたことを明かしています。そんな中、アメリカ国家安全保障局(NSA)長官とアメリカサイバー軍司令官を務めるポール・ナカソネ将軍が、アメリカがロシアに対して「攻撃的なハッキング作戦」を行っていることを初めて公に認めました。

US military hackers conducting offensive operations in support of Ukraine, says head of Cyber Command | Science & Tech News | Sky News
https://news.sky.com/story/us-military-hackers-conducting-offensive-operations-in-support-of-ukraine-says-head-of-cyber-command-12625139

Cyber Command chief confirms US took part in offensive cyber operations | The Hill
https://thehill.com/policy/cybersecurity/3508639-cyber-command-chief-confirms-us-took-part-in-offensive-cyber-operations/

エストニアの首都・タリンにある北大西洋条約機構(NATO)のCooperative Cyber Defence Centre of Excellence(NATOサイバー防衛協力センター)は、2022年5月30日~6月3日にかけてサイバー紛争に関する国際会議「CyCon」を開催しています。CyConで基調講演を行ったナカソネ氏は海外メディア・Sky Newsの独占インタビューで、ロシアのウクライナ侵略に対抗するウクライナ支援の一環として、アメリカサイバー軍がロシアへの「攻撃的なハッキング作戦」を行っていることを初めて認めました。

ナカソネ氏はハッキング作戦の詳細については明らかにしませんでしたが、「私たちは攻撃・防御・情報操作の全範囲にわたって一連の作戦を実施してきました」と述べ、軍に対する文民統制と国防総省の政策決定に基づいた合法的な活動だと主張しています。「私の仕事は国防長官と大統領に一連のオプションを提供することであり、私はそうしました」とナカソネ氏は述べましたが、「オプション」の具体的な内容については説明を拒否したとのこと。


ナカソネ氏は、ロシアがフェイクニュースなどによる情報操作を行っているのとは対照的に、アメリカはさまざまな真実を明るみに出す戦略をとっていることを指摘。ナカソネ氏の下では2018年以来、同盟国にサイバー作戦の専門家を派遣して敵国の潜在的な情報を探り、悪意のある行動を戦略的に暴露する「ハント・フォワード作戦」が行われています。ナカソネ氏は、ロシアのウクライナ侵攻でも同様に西側への情報提供を行ってきたと付け加えて、「正確でタイムリーな情報を共有し、より広い範囲で行動できるようにすることは、この危機において非常に強い力を持ちました」と述べました。

ハント・フォワード作戦では、アメリカの同盟国である16カ国にサイバー作戦の専門家を派遣し、潜在的な脅威となるサイバー活動を検出・阻止しています。この作戦では発見した情報を協力した国と共有しており、多額の資金を費やしたであろう敵国のサイバー攻撃ツールを暴露することで、敵国のサイバー活動に打撃を与えることができるとのこと。「これはとても強力です。なぜなら私たちは敵を見て、彼らのツールをさらけ出しているからです」とナカソネ氏は述べています。


ナカソネ氏によると、アメリカは2021年12月にウクライナ政府の招待に応じてサイバー専門家をウクライナ入りさせ、約90日間にわたってハント・フォワード作戦が行われたとのこと。2月中にはその他の国防総省職員と共にメンバーはウクライナから撤退したそうですが、アメリカの極秘ミッションによってロシアのサイバー攻撃が阻止されたことも報じられています。

ロシアの侵略前からウクライナのサイバー防衛のための極秘ミッションをアメリカが進めていたことが明らかに、すでに100万人の命を救ったとも - GIGAZINE


また、ナカソネ氏は「ロシアによるウクライナへのサイバー攻撃的側面は誇張されているのではないか」とする見方を否定し、「ウクライナの人々に尋ねたら、ロシアのサイバー攻撃が誇張されているとは言わないでしょう」とコメント。インターネットサービスプロバイダーのViasatが運用する通信衛星「KA-SAT」がサイバー攻撃を受けた事例を挙げ、ロシアのサイバー攻撃が少ないのではなく、ウクライナの回復力が強いのだと主張しています。

なお、ホワイトハウスのカリーヌ・ジャン=ピエール報道官は6月1日、ロシアに対するいかなるサイバー攻撃もロシアとの直接的軍事衝突を避けるアメリカの政策に反するものではないとの見方を示しました。

White House: cyber activity not against Russia policy | Reuters
https://www.reuters.com/world/white-house-cyber-activity-not-against-russia-policy-2022-06-01/

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in セキュリティ, Posted by log1h_ik

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