ロシア産原油をヨーロッパに送り続けられる「裏技」とは?
ロシアによるウクライナ侵攻への制裁として、アメリカはロシア産原油・天然ガス・石炭の輸入禁止を決定しました。しかし、ロシアにエネルギーを強く依存するヨーロッパでは、原油の輸入禁止はいまだ協議段階にあって合意には至っていません。さらに、今後もロシア産の原油をヨーロッパに送り続けることができる「裏技」が存在していることが指摘されています。
Ukraine War: This Backdoor Keeps Russian Oil Flowing Into Europe - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/opinion/articles/2022-04-08/ukraine-war-this-backdoor-keeps-russian-oil-flowing-into-europe
Shell to buy Russian oil blend 'Latvian' to circumvent sanctions; stares at $5 billion loss
https://frontierindia.com/shell-to-buy-russian-oil-blend-latvian-to-circumvent-sanctions-stares-at-5-billion-loss/
ニュースサイト・Bloombergのコラムニストであるジャヴィア・ブラス氏によると、大手石油会社のシェルが、取引の基本条件を「売り手が販売し届ける商品がロシア連邦原産ではなく、ロシア連邦で積み込まれたりロシア連邦から輸送されたりしたものではないこと」とした上で、ロシア連邦原産の定義を「ロシア連邦で生産された場合、あるいは体積の50%以上がロシア連邦で生産された材料で構成されている場合」と変更したとのこと。
これにより、荷となる原油の49.99%がロシア産であったとしても、50.01%が他の国や地域から産出されたものであれば、「ロシア連邦原産」ではないという扱いになります。こうした原油は、トレーダーの間では「ラトビア・ブレンド」としてささやかれるもので、具体的には、サンクトペテルブルク近くの輸出拠点であるプリモルスクからラトビアのベンツピルス港へ原油を輸送し、そこでブレンドを行うものだとのこと。
下記、Googleマップでは海路が示されないため参考程度ですが、陸路だと約900kmの輸送に相当します。
ブレンド作業はラトビアのほかオランダや公海上などでも行われていて、「ラトビア・ブレンド」という名称は実際にラトビアでブレンドを行ったか否かに関わらず、ロシア産のものを含む原油を示す言葉として扱われているそうです。
このほかに、インターコンチネンタル取引所は取引業者がロシア産のディーゼル燃料を輸送することを認めていて、オランダのアントワープ、ロッテルダム、アムステルダムでは「いかなる産地の製品も引き渡せるものとする」と注意喚起しているとのこと。
ブラス氏は、このような抜け道やバックドアの存在は、制裁が難しい理由を思い知らされるものだとコメント。ロシアが原油を売り続けることで、ヨーロッパには燃料の供給が増え、エネルギー価格が下がって利益も出て、残るのは道徳的な問題だと指摘しています。
・関連記事
消費量を上回る原油を産出するアメリカがロシアから原油を輸入していたのはなぜか? - GIGAZINE
ロシアがこのまま戦争を続けると原油の供給は一体今後どうなるのかを図解 - GIGAZINE
原油の先物価格がマイナスになった裏で暗躍し大もうけした投資会社が存在する - GIGAZINE
・関連コンテンツ