「結核に感染すると新型コロナへの耐性が生じる」とマウス実験で確認される
アメリカ・オハイオ州立大学の研究チームが「結核に感染すると新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への耐性が生じることをマウス実験で確認した」と発表しました。
Mice infected with Mycobacterium tuberculosis are resistant to acute disease caused by secondary infection with SARS-CoV-2
https://journals.plos.org/plospathogens/article?id=10.1371/journal.ppat.1010093
Tuberculosis infection protects mice from developing COVID-19
https://medicalxpress.com/news/2022-03-tuberculosis-infection-mice-covid-.html
新たに「結核に感染するとCOVID-19への耐性が得られる」という研究結果を発表したのは、オハイオ州立大学のリチャード・ロビンソン氏ら。ロビンソン氏らは系統の異なるマウス2種を結核菌に感染させてから新型コロナウイルスにさらし、COVID-19を発症するか否かを監視し続けたところ、感染の兆候が現れないことがわかりました。
これらのマウスを安楽死させてから解剖したところ、結核菌に感染したマウスがCOVID-19を発症しない理由は「肺」にあると判明。これについてロビンソン氏らは、「1)結核菌に感染した肺には新型コロナウイルスの活動を制限する免疫細胞が何らかの理由で存在する」「2)結核菌が引き出した獲得免疫が新型コロナウイルス抗原と交差反応を起こし、COVID-19に対する免疫を生じさせる」のいずれか一方、ないし両方の現象が発生していると考えています。
これまでにも結核とCOVID-19は同時感染の可能性が低いことや、結核とCOVID-19はどちらか一方しか流行せずに「結核とCOVID-19が同時流行している国」がないことが知られてきたため、今回の研究結果は結核とCOVID-19の関連性を説明するものとして報じられています。
ここ数年はCOVID-19ばかりが取り沙汰される状況ですが、結核は毎年150万人が命を落とすという世界の死亡原因トップ10に入る病として知られています。
公益財団法人結核予防会 - 結核の常識 2020
(PDFファイル)https://jata.or.jp/dl/pdf/common_sense/2020.pdf
ロビンソン氏は「驚くべきことに、結核に感染したマウスは実験室環境下ではCOVID-19に耐性を有しています」「結核とCOVID-19のパンデミックは今もなお続いており、今回の研究結果は『結核に感染した/感染したことのある人はCOVID-19に感染しない』ということを意味しているわけでも『結核に感染した/感染したことのある人はCOVID-19のワクチンが要らない』ということを意味しているわけでもありません」とコメントしています。
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