宇宙のかなたにいるかもしれない知的生命体に地球のことを知らせるための最新のメッセージ「A Beacon in the Galaxy」とは?
1974年に地球から宇宙へ送信されたアレシボ・メッセージが50周年の節目を迎えるということもあり、NASAのジェット推進研究所の天体物理学者であるJonathan・H・Jiang氏らの研究チームが、宇宙のどこかにいる知的生命体へ届けるためのアップデートされたメッセージ「A Beacon in the Galaxy(BitG)」について論文を発表しました。BitGのメッセージは、海にボトルメールを流すように「私たちはここにいる」と伝えることを目的としています。
A Beacon in the Galaxy: Updated Arecibo Message for Potential FAST and SETI Projects
(PDFファイル)https://arxiv.org/ftp/arxiv/papers/2203/2203.04288.pdf
Is it time to send another message to intelligent aliens? Some scientists think so.| Live Science
https://www.livescience.com/new-seti-message
1974年に人類が宇宙に送った最初のメッセージであるアレシボ・メッセージは、地球外知的生命体に地球人を理解してもらうために、地球における原子番号やDNAの化学式、地球人の身長や人口、太陽系の地図などを二進数のデータに翻訳して送信しています。最新のBitGはアレシボ・メッセージに基づきつつ、より正確な地球の位置を示した地図を含んでいたり、いつ送信されたかのタイムスタンプを正確に含んでいたりと、大きく改善されたものになっているとのこと。
まず、アレシボ・メッセージではパルサーと呼ばれる回転する星の位置を基準に地球の位置が特定できる地図を送信していましたが、パルサーの位置は長期間に一定のものではなく、広大な銀河の中で複数のパルサーが明確に区別されていないという欠陥がありました。そのためBitGでは、天の川の球状星団を道しるべとすることで、明確で安定した地図を作成できるものになっています。以下の画像の青い点が天の川の中心部で、赤い点が太陽、すなわちわれわれのいる太陽系を示しており、このような相対的位置情報を伝えることで地球の位置を示していると論文で解説されています。
また、タイムスタンプについては、地球とは時間の測定方法が大きく異なる可能性が高いエイリアンに対して「いつ送信されたメッセージか」をどのように伝えるかという課題がありました。そこで、メッセージ共同設計者であるオランダのハンゼ応用科学大学のQitian Jin氏は水素原子に目をつけました。他の原子や電子と衝突した中性水素は高エネルギー状態に入り、1000万年後に低エネルギー状態に遷移する際に、「ビッグバンからメッセージが送信されるまでどれくらいの時間が経過していたか」を伝達することができるそうです。
アレシボ・メッセージはヘルクレス座の球状星団M13に送信されましたが、それは技術の発展をアピールする象徴的な意味合いが強いと言われています。M13には知的生命体が存在する可能性は低いと考えられる他、M13と地球は約2万5100光年離れているため、50年経過してもまだ0.2%しか移動できていません。一方でBitGは天の川の中心から約1万300光年離れた星群に放射することを想定しており、Jiangは「宇宙の海へと、『やあ、私たちはここにいます』というボトルメールを送りたいです。しかし、数年後にはもう私たちはここにいません」とLive Scienceに希望と不安を語っています。
BitGはメッセージの構築についての発表段階であり、メッセージを送信するための技術は確立されていないとのこと。研究者たちは、「このA Beacon in the Galaxyメッセージは、宇宙に向けて送るべきでしょうか?」ということを問いかけています。
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