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TikTokの親会社がInstagramやSnapchatに投稿されたコンテンツを自社SNSの偽アカウントで勝手に転載していた、「いいね」の水増しも


ショート動画共有SNS・TikTokの親会社であるByteDanceの元従業員らが、「以前ByteDanceが運営していたショート動画共有SNSの『Flipagram』では、InstagramやSnapchatのコンテンツをスクレイピングして勝手に作った偽アカウントで転載していた」と証言したと、海外メディアのBuzzFeed Newsが報じました。BuzzFeed Newsがレビューした当時の内部文書には、スクレイピングされたコンテンツや偽アカウントに関する明示的な言及が含まれているとのことです。

ByteDance Made Fake Accounts With Content Scraped From Instagram and Snapchat, Former Employees Say
https://www.buzzfeednews.com/article/emilybakerwhite/bytedance-scraped-fake-accounts-instagram-snapchat

TikTok owner ByteDance scraped content from Instagram and others to push predecessor app | Engadget
https://www.engadget.com/tik-tok-owner-byte-dance-scraped-content-from-instagram-and-others-to-push-predecessor-app-232135784.html

2013年にロサンゼルスで設立されたFlipagramは、スライドショーにした写真や動画を音楽付きで投稿できるショート動画共有SNSです。2017年2月にはByteDanceによって買収され、その後は「Vigo Video」と名称を変更した上で展開され、2020年6月にVigo Videoの閉鎖が発表されました。

BuzzFeed Newsのインタビューに匿名で応じた4人の元Flipagram従業員は、中国のエンジニアリンググループがInstagramやSnapchatなどのコンテンツをスクレイピングし、ユーザーへの通知や同意なしにFlipagramへ再アップロードしたと証言しました。元従業員の1人は、このプロジェクトはByteDanceが採用している「グロースハック(サービスの急成長を促すマーケティング手法)」の1つだと表現しています。BuzzFeed Newsがレビューした内部文書によると、「最優先の国で1日に1万本以上の動画をスクレイピングする」ことが目標に掲げられていたとのこと。


元従業員らはいつからスクレイピングが始まっていたのかは知らなかったものの、BuzzFeed Newsがレビューした内部文書には、スクレイピングが2017年にByteDanceによって買収された直後に始まったことが示されていたそうです。また、2人の元従業員はスクレイピングされたコンテンツが単に転載されただけでなく、ByteDanceのパーソナライズしたレコメンデーションアルゴリズム「For You」にアメリカのユーザーの好みを反映するトレーニングにも使用されたと証言しています。「For You」アルゴリズムは記事作成時点でも、TikTokや中国版TikTokの「抖音」で使用されています。

BuzzFeed NewsはByteDanceに対し、他のSNSからスクレイピングしたコンテンツの転載やFor Youアルゴリズムについて問い合わせました。これにByteDanceの広報担当者であるJennifer Banks氏は、「ByteDanceは2017年にFlipagramを買収し、その後Vigoを短期間運営しました。FlipagramとVigoは数年前に事業を停止しており、現在のByteDance製品とは関係ありません」と述べました。また、Flipagramの創業者であり元CEOのFarhad Mohit氏、共同創設者のRaffi Baghoomian氏とJoshua Feldman氏はBuzzFeed Newsの問い合わせに応じませんでしたが、Flipagramで2017年10月まで最高技術責任者(CTO)を務めたBrian Dilley氏は、2017年の時点ではコンテンツのスクレイピングや再アップロードはしていなかったと回答しています。


BuzzFeed Newsがレビューした内部文書には、スクレイピングされたコンテンツや偽アカウントについての明示的な言及が含まれています。その中には、偽アカウントを使用して他のSNSからスクレイピングした動画を再投稿する目的として、プラットフォーム上でどのコンテンツがうまく人気を集めるかをテストできることや、既存のユーザーがそのコンテンツを参考にして人気のあるコンテンツを投稿できることなどが説明されていたそうです。

元従業員のうち3人と内部文書に記載された1人はInstagramをスクレイピングされたソースの1つとして特定しているほか、2人の元従業員はSnapchatとMusical.lyからスクレイピングを行ったと証言しています。なお、Musical.lyはTikTokのようなショート動画共有SNSであり、2017年11月にByteDanceによって買収された後、2018年8月にTikTokと統合されています。SnapchatとMusical.lyをスクレイピングのソースだと述べた1人の従業員は、「InstagramとFlipagramは動画のサイズが違うため、Instagramからのスクレイピングはなかったのではないか」と疑念を呈していますが、別の従業員は「動画のサイズ変更やコンテンツの透かしを削除することに関する会話があった」と証言したとのこと。


ウェブで公開されているコンテンツをスクレイピングすること自体は違法ではないものの、企業がユーザー向けの利用規約でスクレイピングを禁止する例はあり、InstagramとSnapchatも2017年の時点からスクレイピングは禁止しています。実際にFacebookがスクレイピングを実行する企業に訴訟を起こしたケースもあるほか、偽アカウントを使用してプラットフォームにユーザーを誘い込む行為についても、規制当局から詐欺的な慣行として訴えられるケースがあります。

BuzzFeed Newsがアメリカ上院議員のRichard Blumenthal氏に対し、ByteDanceのスクレイピング疑惑について尋ねたところ、Blumenthal氏は連邦取引委員会(FTC)に調査を要請したとのこと。「FTCはByteDanceがInstagramとSnapchatのユーザー(子どもや10代の若者を含む)からデータを盗み、大衆を欺き、アルゴリズムを向上させたとされる件について、速やかに調査する必要があります」とBlumenthal氏は述べました。

また、以下のツイートのように、ユーザー自身が「自分の偽アカウントがFlipagramでコンテンツを投稿している」ことに気付いたケースもあります。4人の元従業員によると、こうした問い合わせに対しては問題のあるアカウントを削除するといった対応をした後、「ユーザー(またはファン)が他の誰かのコンテンツをアップロードすることを防ぐことはできない」と伝えるよう指示されていたとのこと。

Hey @Flipagram @FlipagramHelp there's someone using my name and posting my ig content there pretending it's me but it's actually not.

— Mateus Asato (@mateusasato)


Flipagramは転載されたコンテンツが正規ユーザーのコンテンツを圧迫しないよう、転載コンテンツの視聴回数を制限するといった対策も取っていた模様。さらに、Flipagramが使用した「グロースハック」はコンテンツの転載だけでなく、「『いいね』や動画の視聴回数を実際より水増しし、実際よりも人気者だとユーザーを錯覚させる」というものもあったそうです。

ある元従業員はByteDanceの成長戦略について、何が何でも成長しようとする業界全体の強迫観念の現れだと指摘。アメリカの国民やメディアは中国のハイテク企業が実践する非倫理的な成長戦略を「中国のハイテク文化のせい」と片付けがちですが、こうした戦術はアメリカのハイテク企業から模倣されているケースも多いとして、「中国のハイテク文化は敵ではありません。(アメリカのハイテク文化を反映する)正直な鏡なのです」とコメントしています。

なお、FlipagramもByteDanceによって買収される前のサービス立ちあげ当初に、正式な許可を得ずに音楽をプラットフォーム上で再生していたことを認めています。Mohit元CEOは2016年のインタビューで、「私たちは起業家が時々やるように、とにかくやってみて、許可を得るのはその後ということにしました」と述べました。

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in モバイル,   ネットサービス, Posted by log1h_ik

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