サイエンス

アインシュタインの相対性理論を生活の中で実感できる8つの事柄


理論物理学者のアルベルト・アインシュタインが打ち立てた相対性理論は現代物理学の基本となる重要な理論であるものの、ブラックホールなど複雑な事象に関係するものというイメージもあり、日常生活に相対性理論が関係しているとは考えにくいかもしれません。そこで科学系メディアのLive Scienceが、「実生活で相対性理論を実感する8つの事柄」についてまとめています。

8 ways you can see Einstein's theory of relativity in real life | Live Science
https://www.livescience.com/58245-theory-of-relativity-in-real-life.html

相対性理論は時空における物体の挙動を説明し、ブラックホールの存在や重力による光の屈折、軌道上の惑星の挙動などを予測するのに役立ちます。Live Scienceは相対性理論について、「物体の速度・運動量・時間といったものは絶対的ではなく、観測に応じて相対的なものである」「光の速度は誰が測定しても、測定する人がどれだけ速く動いていても一定」「光より速く進むものはない」といった要素から成り立っていると解説しています。

これらの理論から説明されるのが、「2人の観察者が測定する経過時間は相対的な速度差や重力場の違いによって差が生じる(時間の遅れ)」や、「運動する物体の長さは静止する物体より短く測定される(長さの収縮)」といった現象です。たとえば、高速で移動する宇宙船に乗った観測者の時間が地球上と比較して短くなったり、飛行中の宇宙船の写真を撮影すると運動方向に押しつぶされたように見えたりするのは、相対性理論によって説明できるとのこと。


しかし、相対性理論を実感するには必ずしも宇宙船や光速に近い速度で移動する物体を例に取る必要はなく、日常生活や身の回りで使われている技術からも相対性理論を実感できるそうです。Live Scienceが解説している「相対性理論を実感できる8つの事柄」は以下の通り。

◆1:電磁石
コイルを磁石の付近で動かすとコイル内の荷電粒子が磁場の影響で移動して電流が流れますが、逆にコイルを静止させた状態で磁石を動かした場合、コイル内の荷電粒子は動いていないはずなのに電流が生まれます。これは絶対的な座標が存在せず、相対的であることを示唆しているとのこと。アメリカ・カリフォルニア州のポモナ・カレッジで物理学教授を務めるトーマス・ムーア氏は、「これは変圧器や発電機の背後にある中心的な原理であるため、電気を使用する人は誰でも相対性理論の影響を経験しています」と述べています。

また、磁性材料の芯にコイルを巻き付けて通電させることで磁力が生じる電磁石も相対性理論によって機能しています。コイルに直流電流を流した場合、陽子と電子の数が釣り合っているためコイルは電気的に中性に見えますが、その隣に同じく直流電流が流れるコイルを置いた場合、電流の向きに応じてコイルは引きつけ合ったり反発したりします。これも相対性理論に基づく長さの収縮に関連する現象であり、相対性理論がなければ説明できないとのことです。

◆2:GPSナビゲーション
地図アプリなどに使用されるGPSを提供する人工衛星は、光速には及ばないもののかなり速いスピードで動いているため、地上局に信号を送る際には相対性理論を考慮しなければ正確に動作しないとのこと。人工衛星は高速移動や重力による相対性理論的な時間の遅れを考慮し、数ナノ秒の精度の時計を使用して約7マイクロ秒の補正を行っているそうです。もし相対性理論が存在していなかったら、今日の時点では「A地点からB地点まで0.8kmある」ことを示していたGPSが、1日後には「A地点からB地点まで8kmある」と示すようになってしまうとLive Scienceは指摘しています。


◆3:金の黄色がかった光沢
ほとんどの金属に光沢が存在するのは、金属内部を移動する自由電子が外部から入ってきた光子の一部を吸収・再放出することによります。が黄色っぽい光沢を帯びているのは、ほとんどの金属では反射されてしまう青の波長まで吸収・再放出するためですが、これは金の自由電子が光速に近いスピードで移動しているため、相対性理論に基づいて質量が増加していることが理由だそうです。

◆4:腐食に対する金の耐性
金の自由電子が光に近い速度で移動していることは、金の腐食耐性にも影響を及ぼすとのこと。相対性理論に基づいて、高速で移動する金の電子は通常の電子よりも質量が増加しているため、原子核の近くへと引きつけられます。その結果、金においては他の物質と反応しやすい外側にある電子が少ないため、腐食しにくい性質を持っているとLive Scienceは説明しています。

◆5:液体水銀
金と同様に重い原子である水銀も、電子の移動速度とそれに伴う質量増加によって、電子が原子核の近くに保持されています。この影響で水銀原子間の結合が非常に弱いため、低い温度で固体から液体に変化するとのことです。

◆6:古いTV
2000年代初頭までに製造された多くのTVやモニターに使用されていたブラウン管は、大きな磁石を用いて電子ビームを蛍光体に照射することで発光させていました。この際に照射される電子のスピードは光速の最大30%に達するとのことで、製造業者は相対性理論の影響を考慮しながら製造していたとのこと。


◆7:光
ムーア氏は、「相対性理論では電磁場の変化は瞬間的ではなく、有限の速度で動くことが要求されます」と述べ、もし相対性理論が存在しなければ、電場の変化は電磁波を通じることなく瞬時に伝わってしまうと指摘。その場合、磁気も光も不要になってしまうとのことで、相対性理論がなければ光の存在を説明できないと主張しています。

◆8:太陽
相対性理論では「質量とエネルギーは可換である」ことが説明されており、有名な「E=mc2」の数式はこれを表したもの。太陽における核融合では4個の水素の原子核が1つのヘリウム原子核になっており、反応前から反応後で余った質量が熱や光といったエネルギーに変換されるため、地球まで熱や光が届いています。つまり、質量とエネルギーが可換であることを示す相対性理論は、太陽が熱や光を発する理由を説明する上でも重要というわけです。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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