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核兵器の最高機密情報にアクセスできる権限「Qクリアランス」の実態、この世で何人が所有しているのか?


アメリカ・エネルギー省の機密情報にアクセスできるセキュリティクリアランスにはさまざまなランクが存在しています。その中でも核兵器の設計情報を含む最高機密情報へのアクセスが認められるセキュリティ権限が「Qクリアランス」です。このQクリアランスを所持する人間がこの世にどれだけいるのかについて、スティーブンス工科大学で核兵器に関する歴史を研究するアレックス・ウェラーシュタイン教授が解説しています。

How many people have Q Clearance? | Restricted Data
http://blog.nuclearsecrecy.com/2021/11/12/how-many-people-have-q-clearance/


エネルギー省のセキュリティクリアランスは、1954年に制定された原子力法によって定義されました。各セキュリティクリアランスでアクセスできる情報は制限データ(RD)と呼ばれ、内容によって最高機密制限データ(TSRD)、機密制限データ(SRD)、旧制限データ(FRD)、国家安全保障情報(NSI)に分類されます。Qクリアランスはすべての制限データにアクセスできるランクで、核兵器の設計情報といった情報にもアクセスできます。

以下がセキュリティランクとアクセスできる制限データを示した表。セキュリティクリアランスにはQ、Top Secret、L、Secret、Confidentialの5つがあり、その中でQクリアランスはTSRDやSRDを含むすべての情報にアクセスすることができます。


このセキュリティクリアランスを無視して、文書・メモ・スケッチ・写真・計画・モデル・機器・器具など、制限データを含む情報を他人に伝達・送信・開示した場合は2万ドル(約230万円)以下の罰金あるいは20年以上の懲役、そして外国への利敵行為としてこれをおこなった場合は終身刑が科されると原子力法に定められています。

原子力法で制限データの分類とセキュリティクリアランスが定義されたのは、「グーゼンコ事件」がきっかけとされています。グーゼンコ事件とは、1945年にカナダのソビエト大使館暗号書記官だったイゴーリ・グーゼンコが、ソビエト連邦がアメリカの核開発計画の情報を盗み出していたことを示す書類を持ってアメリカに亡命した事件のことで、これをきっかけに核開発に関する情報を厳しく統制するべく、原子力法で情報管理を徹底するようになったというわけです。


最もアクセス権限の高いクリアランスが「Q」とされているのは謎めいた響きがありますが、ウェラーシュタイン教授によれば特に深い意味合いはないとのこと。この「Q」は、第2次世界大戦終戦直後にアメリカ原子力委員会が軍から原子力施設の管理を引き継いだ際、PSQ(事前調査)フォームから申し込めるセキュリティランクを「P」「S」「Q」と3段階に分けた名残だそうです。ウェラーシュタイン教授は「Qとは秘められた謎の名前ではなく、単に手続きからつけられた名前です。多くの秘密と同じようにその正体を知ってしまうと、現実というのははるかにつまらないものです」とコメントしています。

そんなQクリアランスの所有者について、ウェラーシュタイン教授はエネルギー省に情報公開法に基づいて人数を尋ねたところ、以下の回答が返ってきたとのこと。

2018年4月:8万7113人
2019年4月:9万454人
2020年4月:9万8103人
2021年4月:9万2177人

ウェラーシュタイン教授によれば、Qクリアランスの1つ下のランクであるTop Secretクリアランスの所有者は2011年時点で85万人で、2019年時点で最大125万人もいるとのこと。つまり、少なくともアメリカ人の300人に1人はTop Secretクリアランスを持っていることになります。そのため、Qクリアランスの所有者がTop Secretクリアランス所有者の1割ほどと考えれば、この人数は妥当だと、ウェラーシュタイン教授は分析しています。

なお、ウェラーシュタイン教授はQクリアランスの所有者数が2018年から2020年まで増加の傾向にあったのが、2021年で一気に6000人も減少している点に注目しています。ただし、これ以上のデータが公開されていないため、なぜQクリアランスの所有者の人数に増減がみられるのかについてはわからないそうです。

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in メモ, Posted by log1i_yk

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