「計算問題はカロリーを多く消費する」「幼児は大量のカロリーを消費している」など知られざるカロリー消費の事実が判明
ダイエット中の人や健康に気を使っている人は1日の「カロリーの消費量」を意識しながら食事・運動に取り組んでいるはず。しかし、カロリーの消費量については謎な部分も多く、カロリーに関する研究が数多く行われています。そんな数多くの研究の中でもデューク大学でカロリー消費量に関する研究を行っているハーマン・ポンツァー氏の成果を科学誌のScienceがまとめています。
This scientist busts myths about how humans burn calories—and why | Science | AAAS
https://www.science.org/content/article/scientist-busts-myths-about-how-humans-burn-calories-and-why
◆脳の働きとカロリー消費
ヒトを含む動物は糖からエネルギーを生成する際に酸素を消費し、二酸化炭素を排出しています。このため、二酸化炭素排出量を測定することで消費カロリーを算出することが可能です。しかし、この方法を用いて「1日の消費カロリー」を調べるには呼気を一日中集める必要があり、被験者に大きな負担がかかってしまいます。また、ヒト以外の動物の呼気を集めるのには危険が伴うため、この方法では動物のカロリー消費量を求めることが困難でした。
そこで、ポンツァー氏は通常の水分子よりも分子量の大きな水分子を多く含む重水を被験者に飲ませ、その尿を分析することでカロリー消費量を求める「二重標識水法」と呼ばれる手法を用いて、オランウータン・ゴリラ・チンパンジー・ヒトの消費カロリーを測定しました。
以下のグラフの青いバーは、オランウータン・ゴリラ・チンパンジー・ヒトのオスとメスの1日当たりの消費カロリーを示しています。グラフを見ると、オランウータン・ゴリラ・チンパンジー・ヒトの順に消費カロリーが多くなることが分かります。また、赤色のバーは脂肪の重さを示しており、男性のヒトは他の類人猿と比べて約2倍の脂肪を蓄えており、女性は約3倍の脂肪を蓄えていることが分かります。
ポンツァー氏は上記の結果から、脳の働きによってカロリーが多く消費されるとする仮説を立てました。加えて、ヒトでは消費カロリーの増大に伴って脂肪を多く蓄えるように進化が起きたと推測しています。
ポンツァー氏は脳の働きとカロリー消費の関係を調査するべく、被験者に計算問題を解かせたり質問に回答させたりしながらカロリー消費量を測定する実験を行いました。その結果、安静時と比べて質問に回答する際は1.3倍、計算問題を解く際は1.4倍のカロリーを消費していることが明らかになりました。ポンツァー氏は「カロリー消費量を1.4倍にするために必要な運動量を考えてみてください」と述べ、脳を酷使することによるカロリー消費量の大きさを強調しています。
◆運動とカロリー消費
ポンツァー氏はアフリカで狩猟や採集といったカロリー消費の激しそうな活動を日常的に行ってるハヅァ族の消費カロリー量を二重標識水法によって測定しました。その結果、ハヅァ族の消費カロリー量はシカゴのデスクワーカーのカロリー消費量とほとんど同じであることが判明しました。この結果から、ポンツァー氏は「ハヅァ族は炎症の回復などの目に見えない動作に使うエネルギーを削減しているため、全体的なカロリー消費量がデスクワーカーと同一になっている」と推測しています。
◆年齢とカロリー消費
以下のグラフは、年齢によって変動する「体重当たりの1日の消費カロリー」を示しています。グラフを見ると、0~5歳までは体重当たりのカロリー消費量が成人の約1.5倍で、その後カロリー消費量が減少して20~60際頃までは一定になることが分かります。ポンツァー氏は幼児期のカロリー消費量の多さが「脳や免疫システムの発達」に起因していると推測しています。
ポンツァー氏は上述の研究結果から得られた知見をさらに深めるべく、研究を進めているとのことです。
・関連記事
「中年は若者より代謝が少ないので太る」は間違いの可能性、エネルギー消費は20代から60代までほとんど変化がないとの研究結果 - GIGAZINE
睡眠時間を長くするだけで摂取カロリーが減り体重が落ちると研究で判明 - GIGAZINE
同じカロリーでも食品によって太りやすさに違いが出る、一体なぜ? - GIGAZINE
ゼロカロリーのダイエット飲料は特に「女性と肥満の人」の食べ物への欲求を増大させてしまうとの研究結果 - GIGAZINE
・関連コンテンツ