サイエンス

霧の水滴の中で細菌が成長していることが判明、空気中の有害物質を分解する働きも


霧は空気中の水蒸気が冷えてできた細かな水滴が地表近くに浮かんでいる現象です。アリゾナ州立大学やサスケハナ大学などの研究チームは、霧の水滴に含まれる細菌が単に空気中を漂っているだけでなく水滴の中で成長していると報告しました。

Growth and formaldehyde degradation of photoheterotrophic Methylobacterium within radiation fogs | mBio
https://journals.asm.org/doi/10.1128/mbio.00463-26

The fog is alive: Researchers discover bacteria in fog droplets clear toxins from air | ASU News
https://news.asu.edu/20260514-environment-and-sustainability-fog-alive-researchers-discover-bacteria-fog-droplets-clear

Fog Is Teeming With Life, And It May Be Doing Us a Surprising Favor : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/fog-is-teeming-with-life-and-it-may-be-doing-us-a-surprising-favor


大気中に細菌が含まれていることは知られていますが、こうした細菌が空気中や雲の中で実際に活動しているのか、それとも別の場所へ運ばれているだけなのかはよく分かっていません。アリゾナ州立大学の微生物学者であるティ・トゥオン・トゥオン・カオ氏は「霧は地表近くにできる雲のようなものですが、その中にどんな細菌がいるのかはほとんど分かっていませんでした」と語っています。

カオ氏らはペンシルベニア州中部で2年間にわたって32回の霧を調査しました。研究チームが注目したのは夜間に地面が冷え、その上にある空気も冷やされることで水蒸気が凝結して発生する「放射霧」です。放射霧は風が弱く静かな空気の中で発生しやすいため、カオ氏らは「霧が出る前」「霧が出ている間」「霧が晴れた後」の空気や霧水を同じ場所で採取できました。霧水はファンで霧を含む空気を取り込み、水滴を凝縮させて集めたとのことです。

分析の結果、細菌を含んでいた霧滴は全体の1%未満でした。一見すると少ないように見えますが、霧滴全体をまとめて調べると、霧水1mlから細菌の量を見積もる目印となるDNAが約100万コピー検出されました。アリゾナ州立大学の微生物学者であるフェラン・ガルシア=ピチェル氏は「一つ一つの水滴に細菌がいるわけではありませんが、霧水全体で見ると海水に匹敵する濃度になります」と説明しています。

研究チームが6回の霧発生時のデータを詳しく調べたところ、霧が晴れた後の空気では霧が出る前の空気と比べて細菌量が平均45%多くなっていました。以下の顕微鏡画像は、上が霧の中で空気中を漂っていた細かな粒子に含まれる細菌、下が霧水中の細菌です。青く光って見えるのが細菌で、霧水中の細菌は上の画像より大きく見えます。研究チームはこの大きさの違いを霧の中で細菌が成長していることを示す証拠の一つとしています。


ガルシア=ピチェル氏は「細菌がそこで成長しているのなら、霧の水滴は単なる移動手段ではなく、細菌のすみかだと考える必要があります」と見解を示しました。カオ氏らは霧の水滴を「細菌を一時的に閉じ込めるだけの場所」ではなく、「細菌が活動する小さな水中環境」だと位置づけています。

また、遺伝子解析の結果、霧水の中にいた細菌の種類は霧が出る前後の空気中に漂っていた細菌の種類とは異なることが分かりました。霧水の中で特に多かったのはメチロバクテリウム属という細菌の一群です。メチロバクテリウム属の細菌はホルムアルデヒドなどの揮発性炭素化合物を利用することができます。揮発性炭素化合物とは炭素を含む化合物のうち空気中に蒸発しやすいものです。

研究チームは霧水のサンプルを実験室に一定時間置き、ホルムアルデヒドなどの化合物の濃度が時間とともにどう変わるかを測定しました。その結果、培養開始時に存在していたホルムアルデヒドは検出できない水準まで急速に減少しました。その速度は過去に雲水で測定された値の約200倍だったとのことです。


カオ氏らは細菌がホルムアルデヒドを分解することについて、栄養源として利用しているだけではないと考えています。ホルムアルデヒドは濃度が高くなると細菌にとっても有害です。そのため細菌はホルムアルデヒドを栄養源として使うだけでなく、自分たちにとって有害な物質を処理するためにも分解しているとみられます。

ホルムアルデヒドは人間にとっても有害な大気汚染物質です。研究チームは霧の中の細菌が空気中の化学物質を減らす働きをしている可能性を示した一方で、その働きが人間にどの程度役立つのかを理解するにはさらなる研究が必要だと説明しています。

カオ氏らは、霧の中の細菌が大気中の化学反応に関わっているとみており、霧を集めて飲料水源にする取り組みを考える上でもこうした微生物の働きを考慮する必要があると指摘しています。

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in サイエンス, Posted by log1b_ok

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