中国が世界中の海運データを掌握しつつあるという懸念

グローバルな物流システムで最も重要な運搬ルートの1つが船による海上輸送であり、その物流を管理するための港湾物流情報ネットワークは非常に複雑です。中国政府が非営利で提供する「LOGINK(国家交通運輸物流公共信息平台)」はこの港湾物流情報を国際的に可視化するための海運データシステムですが、「中国政府が世界中の海運データを掌握し、商業的あるいは戦略的に利用するのではないか」という懸念の声が挙がっています。
China’s Growing Access to Global Shipping Data Worries U.S. - WSJ
https://www.wsj.com/articles/chinas-growing-access-to-global-shipping-data-worries-u-s-11640001601
How Big Tech factors into the US-China geopolitical competition | TheHill
https://thehill.com/opinion/technology/521762-how-big-tech-factors-into-the-us-china-geopolitical-competition
The West has handed China the world on a platter
https://www.telegraph.co.uk/business/2021/10/04/west-has-handed-china-world-platter/
物流業界は世界的にデジタル化の進みが遅く、依然として物理的な書類手続きが行われており、海上輸送に関わる書類が航空便で頻繁にやり取りされています。国によっても処理の仕方が異なり、輸送業者も無数に存在し、各自が利用する情報システムも千差万別という状態です。
2007年に開発されたLOGINKは、中国の交通運輸部が管理している非営利の貨物データシステムであり、荷主を国際的に結ぶデジタルネットワークです。LOGINKは、公共のデータベースと、中国国内ユーザー45万人以上と巨大港によって入力された情報を組み合わせて利用しており、中国が100兆円規模の国際インフラプロジェクトとして進めている「一帯一路」構想や、「デジタルシルクロード」と呼ばれるプロジェクトの一環としても利用されています。

貨物データのデジタル化は荷主にとって長年の夢であり、その中で一足先にデジタル化と統一を図ったLOGINKが国際的に広がっており、世界経済にとって重要な分野において欧米が中国に遅れを取っていることが浮き彫りになっています。イギリスの大手メディアであるテレグラフによると、中国は世界中の港のアップグレードに200億ドル(約2兆3000億円)を費やしており、世界中にある20の巨大港のうち14港がLOGINKを利用しているとのこと。
しかし、アメリカ連邦議会の米中経済安全保障調査委員会のマイケル・ウェッセル委員長は、「LOGINKが世界貿易にアクセスすることは、国家安全保障と経済的利益に関わる情報を中国政府に与える可能性がある」と主張し、より高い関心をもつべき問題だとしました。
LOGINKが収集したデータに誰がアクセスしているのか、そしてどれだけの情報が収集されているのかは明らかではありません。例えば、アメリカ国防総省は世界中の商業港を経由して軍需品を運搬しています。アメリカ経済紙のウォール・ストリート・ジャーナルは、「中国のLOGINKがデフォルトになることで、アメリカの軍需ロジスティクスが中国に筒抜けになってしまう可能性もある」と指摘しています。
アメリカの政治専門誌であるThe Hillは「国際的なロジスティクス情報とシステムは断片化されています。そのため、私たちがFacebookやGmailを利用するのと同じ理由で、ユーザーはLOGINKをこぞって利用します。ただし、LOGINKは権威主義的な政府によって管理されており、中国の国際戦略を明示的にサポートしています」と述べ、LOGINKは中国政府の戦略的脅威であるとしています。

中国のビジネスと政治に詳しいコンサルティング企業・Horizon Advisoryの設立者であるEmily de La Bruyère氏は「LOGINKはFacebookのようにユーザー同士がつながり、情報共有することができるシステムです。また、Amazon.comがプラットフォーム上の商取引を把握するように、中国政府がLOGINKをコントロールすることでネットワーク上のデータを把握できます」と述べました。
なお、ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、LOGINKが収集の関係者や中国の交通運輸部はLOGINKによるデータの収集や使用に関する質問に一切応えていないとのことです。
・関連記事
空輸の方が海上輸送よりも得になるケースがなぜ生まれているのか? - GIGAZINE
「貨物の津波が来る」と海上輸送会社が語る、太平洋で一体何が起きているのか? - GIGAZINE
一目で世界経済がわかるように各国のGDPを可視化した図2021年版はこんな感じ - GIGAZINE
「AI検察官」は口頭説明を受けるだけで97%の精度で犯罪を特定可能 - GIGAZINE
中国のスマホアプリ数がわずか3年で4割近くも減少していると判明 - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in メモ, Posted by log1i_yk
You can read the machine translated English article Concerns that China is gaining control o….