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人々は億万長者のグループに厳しいが1人の億万長者には甘い


近年は富の格差が増大していることが問題視されており、アメリカでは最も裕福な1%の人々の年収が下位50%の人々より100倍も速く増えていることや、世界の富の4分の3以上をわずか10%の人々が所有しているという調査結果も報告されています。こうした格差の問題を解決するために富裕層への課税を強化することが主張されていますが、「人々は『億万長者のグループ』には厳しいが、『1人の億万長者』には甘い傾向がある」との研究結果を、アメリカのコーネル大学とオハイオ州立大学の研究チームが報告しました。

People are more tolerant of inequality when it is expressed in terms of individuals rather than groups at the top | PNAS
https://www.pnas.org/content/118/43/e2100430118

Lavish wealth tolerated more for individuals than groups | Cornell Chronicle
https://news.cornell.edu/stories/2021/10/lavish-wealth-tolerated-more-individuals-groups

Study Finds a Strange Paradox When It Comes to How We Feel About Taxing Billionaires
https://www.sciencealert.com/people-are-more-tolerant-of-billionaires-if-they-know-their-personal-story-study-reveals

世の中に存在する経済的な格差を解消するには、超富裕層に対する課税を強化して、公共サービスや公的補助という形で再分配することが重要です。そこでコーネル大学とオハイオ州立大学の研究チームは、合計2800人の人々を対象にした8つの研究で、「超富裕層」や「特定の大富豪個人」に対する考えについて調査しました。


1つ目の研究では、200人以上の調査対象者を2つのグループに分けて、一方のグループには「アメリカにおける350の大企業でCEOを務める人物の給与は、1995年時点では平均的な労働者の42倍だったが、調査時点では372倍に増加した」という情報を示した上で、CEOがもらうべき適切な報酬について尋ねました。もう一方のグループには「大企業のCEOとして平均的な推移で給与が上昇したCEO個人」を挙げて、CEOの報酬が適切かどうかを尋ねました。

この調査では全ての回答者が、「平均的なCEOは従業員と比較してあまりにも多くのお金を稼いでいる」と考えていました。ところが、平均的な大企業のCEOについて尋ねられたグループと、特定企業のCEO個人について尋ねられたグループを比べると、後者はCEOが従業員より多くの報酬を得ることに比較的寛容だったとのこと。オハイオ州立大学で消費者行動を研究するジェシー・ウォーカー助教は、「CEO個人が報酬を得ると考える場合は、豪華な報酬に対して少し寛容になるようです」と述べています。


また、別の研究では400人の調査対象者を半分に分けて、一方には「なじみが薄い7人の大富豪」が載ったアメリカの経済誌・フォーブスの表紙を見せ、もう一方には「なじみが薄い1人の大富豪」が載ったフォーブスの表紙を見せました。その後、両方のグループに表紙に載った大富豪についての簡単な説明を見せて、これらの人々自身や所有する富についての考えを回答してもらったとのこと。

その結果、7人の大富豪たちが一緒に掲載されたフォーブスを見た参加者は、大富豪らに対して不満を覚え、彼らの成功は不平等な経済システムに起因すると考える傾向がありました。一方で、大富豪が1人だけで掲載されたフォーブスを見た人々は、その人物が手にした資産はより公正なものであり、才能や勤勉さの結果だと考える傾向が強いことがわかりました。また、7人の大富豪が載ったフォーブスを見たグループは、そうでないグループよりも相続税を支持する可能性、つまり親から子に受け継がれる富を再分配に回すべきだと考える傾向が高かったそうです。

コーネル大学の心理学教授であるトーマス・ギロヴィッチ氏は、「私たちの研究に参加した人々は、1人で表紙に載った大富豪よりも、7人で載った大富豪に対して明らかに不満を感じていました」「実験に用いられた大富豪は、参加者のほとんどが知らないであろう人物でした。それにもかかわらず、人々は大富豪のグループよりも、大富豪個人に課税することに否定的です」とコメントしています。

さらに別の研究では、成功したある俳優に対して課税するべきだと考える額について、「俳優が業界とのつながりを持つ家族に産まれたという特権的なバックボーンについて語ったグループ」と「特権的なバックボーンを語らなかったグループ」の間で比較しました。分析の結果、被験者がその俳優の成功につながったバックボーンを知った場合、より多くの課税を支持することがわかりました。ギロヴィッチ氏は、「人々は金持ちの成功が状況的なものであると判断した場合、その金持ちに課税することをためらいません」と述べました。


研究チームは今回の研究結果から、人々に対して課税を訴える場合は特定の億万長者ではなく、「超富裕層」や「上位1%」といった言葉を使う方が効果的だと主張しています。ウォーカー氏は、「大富豪のグループがトップに立っている場合、私たちはそれが不公平だと考え、運や経済システムがお金を稼ぐために役立ったのではないかと疑問に思います。しかし、1人の個人を見ると、その人には才能があり、勤勉で、生み出した全ての富に値すると考える傾向があります」と述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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