1940年代に生まれたトランプマジック「The Magic Separation」のトリックとは?
トランプを使ったテーブルマジックには多種多様な種類が存在しますが、トリックなどの仕掛けを一切必要せず、人間の錯覚を利用したタイプのものも存在します。その中でも1940年代に開発されて現代のさまざまなマジックの祖になっているという「The Magic Separation」と呼ばれるマジックについて、数学専門誌であるChalkdustが数学的見地から解説を行っています。
An odd card trick - Chalkdust
https://chalkdustmagazine.com/features/an-odd-card-trick/
The Magic Separationは表向きのカード10枚と裏向きカード10枚を使ったトランプマジック。流れとしては、演者がカードを表裏を変えない状態でごちゃごちゃに混ぜます。十分に混ざった後に10枚ずつに分けて、片方のセットを観客に渡します。そして、観客に渡されたセットに含まれるカードの表裏の枚数を演者は自由に当ててみせる、というものです。
このThe Magic Separationというマジックは、演者が何らかの操作を行うタイプのマジックではなく、「表向きのカードと裏向きのカードを10枚ずつ混ぜてから10枚ずつのセットに分けると、片方のセットの表向きのカードの枚数ともう片方のセットの裏向きのカードの枚数は必ず一致する」という法則を利用しています。つまり、一連の操作の結果、片方のセットが「表3枚・裏7枚」になるならば、もう片方は「表7枚・裏3枚」になるということです。
このThe Magic Separationは数学を利用するタイプのマジックとして知られており、世界最古の科学系通俗誌であるScientific Americanで25年間も連載が続いたマーティン・ガードナーの「数学ゲーム」では、水とワインを使った古典的クイズと同じ錯覚を利用していると説明されています。この水とワインを使ったクイズは、以下のようなものです。
1:ここに容器に入れられた同じ量の水とワインが存在する。
2:水の容器から水1リットルをワインの容器に移し、よくかき混ぜる。
3:ワインの容器から混合物1リットルを水の容器に移す。このとき、「水の容器に入っているワインの量」と「ワインの容器に入っている水の量」はどちらが多い?
答えから言ってしまうと、このクイズの正解は「どちらも同じ量」です。2手目で水の容器からワインの容器に移動しているのは水1リットルであるのに対し、3手目でワインの容器から水の容器に移動しているのは「水とワインの混合物1リットル」であることから混乱が生じてしまいますが、それぞれの容器に入ってる内容量は一連の交換によって変化していないという点がポイント。最初に水が入っていたほうの容器に着目した場合、交換によって「水が出ていって、その代わりにワインが入ってきた」といえるわけですが、それぞれの容器の内容量は交換の前後で変化していないため「出て行った水」と「入ってきたワイン」の量は一致してなければおかしいわけです。そして、問われているのは「出て行った水」と「入ってきたワイン」の量なので、答えは必然的に「同じ量」となります。
1つ1つの手順を見ていくと、「当然そうなる」という話ですが、マジシャン側の演技によってそうは思わせないのが「クロースアップ・マジック」の醍醐味の一つ。The Magic Separationは、2020年に開発された「Hummerless」「Newcomer Hummer」というマジックのベースになっているそうです。
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