現代テクノロジーを駆使して長時間回転し続けるコマを作る

コマは古くから愛される玩具ですが、回転が落ちていずれ止まってしまうという制約があります。エンジニアでYouTuberのAaed Musa氏は、現代の電子部品と試作手法を組み合わせ、できるだけ長時間回り続ける電動コマを自作する動画を公開しました。
I Overengineered a Spinning Top - YouTube

開発にあたってMusa氏は、回転を維持するための動力や回路、バッテリーを含むすべての機構をコマの内部に完結させるという制約を設けました。外部の台座側で電磁石を使って補助する方式や、接地面で直接モーターを当てて回す方式ではなく、コマの内部だけで回転を生み出すことを目標にしたのが特徴です。

最初の発想としてMusa氏は、人工衛星の姿勢制御で知られるリアクションホイールを小型化し、角運動量保存の法則を利用してコマ本体に反作用のトルクを与える方法を試しました。小型ドローン向けのブラシレスモーターやESC(速度制御回路)、小型マイコン、3.7ボルトのバッテリーなどを組み込み、IMU(慣性計測ユニット)で状態も読める構成を前提に検討を進めます。

しかしリアクションホイール方式は、モーターが加速できるのは最高回転数に到達するまでであり、いずれ加速が止まってしまいます。リアクションホイールが加速できない状態は飽和と呼ばれ、飽和するとコマ本体側へ新たな回転を与え続けられません。飽和を解消するには減速が必要ですが、その減速はそれまでに作った回転の効果を打ち消してしまうため、長時間の回転維持には向かないという結論に至りました。

そこでMusa氏は、バランスの取れたホイールを回すのではなく、重りの中心をずらした偏心回転質量(ERM)を使う方針に転換します。スマートフォンのバイブレーションと同じ原理で、意図的な不均衡から生じる振動を利用し、結果としてコマの先端に円運動を作って姿勢を保つ狙いです。

ERM方式で自立が見えた後は、狙った偏心は残しつつ、コア全体としての不要なブレを抑える調整が必要になりました。Musa氏はカバーにねじ穴を設け、ねじ自体をカウンターウエイトとして使うことでバランスを追い込み、少ないねじ本数でも挙動が大きく改善したとしています。

また、コマの外殻を3Dプリントで作ると先端が摩耗しやすいため、先端部をスチールのボールベアリングに置き換えて耐久性を上げました。さらに仕上げとして、より硬く滑らかな先端を狙う場合に、セラミックのボールベアリングを使う選択肢も紹介しています。

形状の最適解を探るため、Musa氏は複数週間にわたって合計42種類の試作品を設計、製作、評価しました。よく回る個体は1時間以上回り続ける一方で、すぐ倒れる個体もあり、試作品の比較から安定性に効く要素を整理していきます。

整理した要点の1つ目は慣性モーメントです。一般的なコマでは半径が大きく質量が大きいほど慣性モーメントが増え、初期の回転エネルギーを稼ぎやすくなります。電動コマでは本体側の慣性モーメントよりも、偏心おもり側の慣性モーメントが効きやすく、偏心おもりを適切に重く大きくすることが重要だと述べています。

2つ目は重心の高さです。重心をできるだけ低くすると、傾いたときに重力が与える倒れ方向のトルクが小さくなり、姿勢を保ちやすくなります。

3つ目は先端のサイズと材質です。一般論としては先端が小さいほど摩擦面が減って有利になりやすい一方、Musa氏の電動コマでは安定性の観点から中程度の先端サイズが扱いやすかったとのこと。材質は摩耗しにくいボールベアリングが有効で、硬く滑らかな材質ほど性能面で有利になりやすいそうです。

回転を保つ制御についても、目標回転数に合わせるPID制御を検討し、そのための回転数計測としてIMUの角加速度から角速度を近似する方法や、偏心おもりに磁石を入れてホール効果センサーで回転周期を読む方法を試しました。ただし実際には、これらの計測や制御は手間の割に効果が乏しく、モーターを一定速度で回すだけで十分に安定して動いたため、最終的にはシンプルな一定速度駆動に落ち着きました。

筐体については、最終的にCNC加工のアルミニウム製シェルも用意し、見た目の質感と実用性を両立させました。

完成した電動コマは、1回の充電で2時間以上の連続回転を達成したとされます。Musa氏は、伝統的な玩具に現代の工作と制御の発想を持ち込み、長時間回り続けるという体験を現実のものにしたと振り返っています。

・関連記事
虚無の世界から目覚めるべく映画「インセプション」に出てきそうなコマ「ForeverSpin」を回してみました - GIGAZINE
美しさと回転力を兼ね備えた金属削りだしのコマ「ForeverSpin 2.0」レビュー - GIGAZINE
歯車の代わりに「ロープ」を使って駆動するロボット犬「CARA」が登場 - GIGAZINE
映画『TENET テネット』字幕科学監修・山崎詩郎さんインタビュー、作品を楽しむためのポイントとは? - GIGAZINE
驚愕の精度で狙った位置にコマをポンポン落として回すコマ名人たちが大集結するムービー - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in 動画, ハードウェア, サイエンス, Posted by log1i_yk
You can read the machine translated English article Using modern technology to create a top ….







