砂漠に刻まれた謎の十字架の正体はアメリカの「コロナ計画」にあった
アメリカのアリゾナ州に広がる砂漠の一角に、「カサ・グランデ・キャリブレーション・ターゲット」と呼ばれるコンクリート製の十字架が存在しています。この十字架が実はアメリカが冷戦期に行っていた軍事機密のプロジェクトで使われていた施設であると、宇宙関連のニュースサイト・The Space Reviewが解説しています。
The Space Review: Candy CORN: analyzing the CORONA concrete crosses myth
https://www.thespacereview.com/article/4094/1
カサ・グランデ・キャリブレーション・ターゲットはアリゾナ州カサ・グランデに広がる砂漠の中にあり、Googleマップなどでも確認できます。
カサ・グランデ・キャリブレーション・ターゲットを近くで見るとこんな感じ。
この十字架は、「コロナ計画」と呼ばれるアメリカの軍事プロジェクトのために用意されました。コロナ計画は、1960年から1972年の冷戦時にアメリカがソビエト連邦や中国などの共産圏を人工衛星から撮影するという作戦でした。
コロナ計画で打ち上げられた高解像度カメラ搭載の人工衛星は「KH-1」「KH-2」「KH-3」「KH-4」「KH-4A」「KH-4B」の6基でした。1959年に打ち上げられたKH-1のカメラの地上解像度は40フィート(約12メートル)単位でした。
KF-1に搭載されたカメラは焦点距離610mm・f/5の三枚玉レンズが取り付けられた特注品で、フィルムはイーストマン・コダックが特別に製造した70mmフィルムでした。当初はカラーフィルムが使われましたが、当時の技術ではカラーフィルムで撮影すると解像度が低かったため、基本的には赤外線フィルムが使われたとのこと。
1960年8月にKH-1によって撮影されたコロナ計画最初の1枚が以下の写真で、赤い丸に囲まれた白い線はソ連北部にあったミスシュミッタ飛行場の滑走路です。
1963年に打ち上げられたKH-2やKH-3ではカメラの改良が進み、複数台が搭載されるようになりました。さらに、KH-4シリーズは高度の調整によってわずか1フィート(約0.3メートル)以下の高解像度で撮影することが可能でした。
以下はKH-4Bを描いたイラスト。
砂漠に存在する十字架は、コロナ計画の人工衛星がキャリブレーションを実行するための目標でした。人工衛星は空気抵抗などの影響によってわずかに軌道が変化する可能性があるため、人工衛星は任務ごとに高度を正確に把握しておく必要があります。人工衛星は、カサ・グランデ・キャリブレーション・ターゲットを含んだ16マイル(約25.7km)×16マイルの写真を撮ることで、高度と撮影ターゲットのサイズを推定することができました。ただし、地下水の組み上げによって地盤沈下が起こり、十字架の位置が変化してしまったため、カサ・グランデ・キャリブレーション・ターゲットはすぐに使われなくなってしまったそうです。
現在も残るカサ・グランデ・キャリブレーション・ターゲット以外にもキャリブレーション用の施設は多数存在したそうです。例えば以下の写真がその一例。
なお、コロナ計画の「コロナ」はただのコードネームで、由来は不明。コロナ計画の存在はもちろん軍事機密で、「Discover」という宇宙技術開発プログラムの一部に偽装されて進められていました。しかし、1978年10月1日にジミー・カーター大統領がケネディ宇宙センターで講演した際に、アメリカ政府がスパイ衛星を使っていたことを認め、1995年2月22日に大統領命令によって機密解除が行われたことで、コロナ計画で撮影された写真が明らかになりました。
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