「生きたインク」を使えば壊れても自己再生する建物が実現するかもしれない
遺伝子操作された大腸菌から生成した「microbial ink(微生物インク)」と呼ばれる生体インクが開発されました。この微生物インクはまだ実験室段階ですが、圧力をかけると歯磨き粉のように絞り出され、さまざまな形状に3D印刷することが可能で、将来的には自己再生する建築素材として使われることも期待されています。
Programmable microbial ink for 3D printing of living materials produced from genetically engineered protein nanofibers | Nature Communications
https://doi.org/10.1038/s41467-021-26791-x
Genetically modified bacteria produce next-gen 3D print ink • The Register
https://www.theregister.com/2021/11/23/genetically_modified_e_coli_bacteria/
微生物を利用した生体インクはこれまでにも開発されており、微生物と高分子物質を混ぜて作ったゲルなどが発表されています。いずれも材料の粘度を高くするためにヒアルロン酸や海藻、シリコンなどを含んでいるのが特徴でした。
ノースイースタン大学工学科のニール・ジョシ准教授が率いる、ノースイースタン大学・ハーバード大学・バージニア工科大学の共同研究チームが発表した微生物インクは、遺伝子操作した大腸菌から完全に生成されるナノファイバーをもとにした生体インクで、従来の生体インクと異なり高分子物質を含みません。大腸菌によって形成されたナノファイバー繊維は非常に安定しており、タンパク質の分解や界面活性剤による変形、熱による変性に対しても耐性を持つとのこと。
微生物インクを電子顕微鏡で撮影した画像が以下。微生物インクに使われているナノファイバーにはCsgA-α(左)とCsgA-γ(中央)の2種があり、そして2種を織り交ぜたCsgA-αγ(右)を含む微生物インクも存在します。
そして、実際に微生物インクと3Dプリンターを使って印刷したものが以下。一番左は1層の格子、中央2つは10層で構成された正方形と円、一番右は21層で構成された円すい型です。画像左下にある白い線が1mmの長さを示しています。
また、微生物インクは高分子物質を含まない上に、それ自体に大腸菌を含んでいるため、自己再生性も期待できます。研究チームは、微生物インクは医療用途にカスタマイズ可能であるため、さまざまなバイオテクノロジーに応用することも可能だと述べています。また、月や地球上の奥地のように、資材を簡単に入手できない場所での建築材としても応用できる可能性も示唆しています。
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