偏差値の高い学校に入学すれば頭が良くなるのは本当か?
「成績優秀な同級生が多くいる学校やクラスに通えば、成績が良くなる」という考え方は広く信じられていますが、同級生の成績が自身の成績に影響を及ぼすメカニズムは説明しづらいもの。そんな同級生の成績が各生徒に与える影響について、シドニー大学で経済学について研究するアレクサンドラ・デ・ジャンドル氏とメルボルン大学で経済学を研究するニコラス・サラマンカ氏が解説しています。
On the Mechanisms of Ability Peer Effects | IZA - Institute of Labor Economics
https://www.iza.org/publications/dp/13938/
Being in a class with high achievers improves students' test scores. We tried to find out why
https://theconversation.com/being-in-a-class-with-high-achievers-improves-students-test-scores-we-tried-to-find-out-why-171400
成績優秀な同級生と共に学ぶと成績が向上することは、複数の研究で事実として確認されていますが、この成績向上効果のメカニズムはあまり知られていません。そこで、ジャンドル氏とサラマンカ氏は、台湾の学校に通う2万人以上の生徒の情報を集めたデータベースを基に、成績向上メカニズムを分析しました。
両氏によると、台湾では日本の中学校にあたる国民中学の1年生と3年生を対象に全国統一学力テストが実施されているとのこと。両氏は、このテストの1年時と3年時の結果が「平均点が全国平均に近いクラス(平均クラス)」「平均点が全国平均より高いクラス(上位クラス)」のどちらに属しているかによって変化するかを調査しました。その結果、1年時のテスト結果が同じ生徒AとBがいた場合、上位クラスに所属した生徒Aの3年時の正答率は平均クラスに所属した生徒Bよりも2.4%高くなることが判明しました。両氏は「2.4%という差は小さな差に思えますが、統計的には有意な差であると言えます」と述べ、所属クラスの成績が各生徒の成績に与える影響を強調しています。
上記の結果に加えて、1年時のテスト結果が同一であっても、上位クラスに所属した生徒の大学進学率は平均クラスよりも1.6%高くなることが判明しています。さらに上位クラスの生徒の保護者は平均クラスと比べて子どもと過ごす時間が長く、感情的な面でのサポートが充実していたことも明らかになりました。
一方で、上位クラスと平均クラスでは「学習時間」「不正行為の発生数」「保護者による個人指導への投資」「教師や学校環境に対する生徒の評価」に差がないことも判明しています。
これらの結果について両氏は「私たちの研究は、成績優秀な同級生が生徒と親の行動にプラスの影響を与えることを示しています。しかし、今回得られたデータだけでは、成績向上効果の多くを説明できていません」「私たちの研究が成績向上効果の明確なメカニズムを明らかにできなかったという事実は、そのメカニズムの複雑さを示しています」と述べ、今後も詳細なデータを収集して成績向上メカニズムを明らかにする意欲を示しています。
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