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成績の悪い生徒がいるクラスでは他の生徒の成績まで下がってしまうとの研究結果


生徒の学業成績はさまざまな要因によって左右されることがわかっており、学校の始業時刻教師の固定観念などが成績に影響を及ぼすことがわかっています。新たに中国とオーストラリアの研究者が行った調査では、「クラスに成績の悪い生徒がいると、他の生徒の成績が低くなる」という結果が示されました。

Peer effects of low-ability students in the classroom: evidence from China’s middle schools | SpringerLink
https://link.springer.com/article/10.1007/s00148-020-00780-8

Our study in China found struggling students can bring down the rest of the class
https://theconversation.com/our-study-in-china-found-struggling-students-can-bring-down-the-rest-of-the-class-149917


研究チームは、「学校での社会的交流は生徒の学習にとって非常に重要だと考えられています。生徒間における仲間の影響力は、教育者や政府、保護者にとって考慮するべき重要な要素です」とコメント。そこで、2013~2014年に実施された中国教育追跡調査のデータを使用し、学校での社会交流が成績に及ぼす影響を調べました。

中国教育追跡調査は中国の中学生を対象に行われた全国規模の調査であり、家族、学校のシステム、コミュニティ、学校や教室の社会構造といった要素と、生徒の教育的成果との関連を説明することを目的としたものでした。調査では全国112校から中学1年と3年のクラスがランダムで選ばれ、学習や成績、その他の情報を尋ねるアンケートに合計1万9487人の生徒が回答したとのこと。

調査対象の中には「小学校の高学年で留年を経験した生徒」が13%含まれており、研究チームはこれらの生徒が「成績が悪い」と推定しました。実際に、中学校における国語・数学・英語のテスト結果を調査した結果、留年した生徒はそうでない生徒に比べて全ての教科でテストの結果が悪かったそうです。


次に研究チームは、中学1年のクラスにランダムで留年を経験した生徒を割り当て、そのまま中学3年まで教育を行うシステムを採用した中学校において、留年を経験した生徒の有無と他の生徒の成績に関連があるかどうかを調査しました。

この調査で留年した生徒の割り当てをランダムとしている中学校を対象としたのは、同じ教室で授業を受けるクラスメイトが教師、学校、保護者らによって恣意(しい)的に選択される可能性を排除するためだったとのこと。ランダムに生徒を割り当てた中学校では、クラスごとに留年を経験した生徒の数に偏りが発生しますが、それ以外の要因はほぼ共有されています。


研究チームが同じ中学校における「留年を経験した生徒が多いクラス」と「留年を経験した生徒が少ないクラス」において、留年を経験していない生徒の学業成績を比較したところ、「中学1年のクラスでは、留年を経験した生徒が多いほど他の生徒の成績が悪い」ことが判明。この影響は国語の成績において最も顕著であり、数学が最も影響を受けにくかったそうです。

また、留年していない生徒に及ぶネガティブな影響は全体の人数が多いクラスでより強く、特に成績が悪い生徒において留年した生徒の影響が大きかったとのこと。一方、成績がいい生徒は留年した生徒による影響を受けなかったと研究チームは述べています。


留年した生徒によって教育内容が大きく変わったということはありませんでしたが、研究チームは留年した生徒が「交友関係」および「教室の環境」に影響を与えたため、結果的にその他の生徒の成績が下がったとみています。

まず、留年した生徒のいるクラスでは、他の生徒が留年した生徒と友だちになる可能性が上がり、留年していない生徒と友だちになる可能性が下がりました。このことが、生徒の学習に影響を与えたかもしれないと研究者は述べています。また、クラスの環境は留年した生徒の存在によって悪化したと研究チームは指摘。留年した生徒が多いクラスでは、他の生徒が定期的に学校活動に参加する割合が下がったほか、「クラスメイトが友好的である」と回答する生徒の割合が下がったそうです。

一方、中学3年生になると、留年した生徒の有無が他の生徒の成績を悪化させたという証拠は見つかりませんでした。今回の調査範囲では中学3年までクラス替えが行われなかったため、留年した生徒による悪影響は短期的なものであり、長期のスパンで見れば悪影響は消えていく可能性があるとのこと。

中学3年になると留年した生徒による悪影響がなくなる理由について、研究チームは「中国における高校入試へのプレッシャー」が関連している可能性があると指摘。高校入試を前にして勤勉な生徒が増えるため、結果的に学習環境がよくなったのかもしれないと研究チームは述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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