Googleの「Pixel 6」についてサンダー・ピチャイCEOとハードウェア責任者のリック・オスターローが「ブレイクアウトフォンだ」と語る
2021年10月20日の2時から配信されたGoogleの「Pixel Fall Launch」で発表された、Google製スマートフォンの「Pixel 6」について、Googleのサンダー・ピチャイCEOとハードウェア部門責任者のリック・オスタロー氏が海外メディア・The Vergeのインタビューに答えています。
Sundar Pichai and Rick Osterloh think the Pixel 6 is Google’s breakout phone - The Verge
https://www.theverge.com/22733159/sundar-pichai-rick-osterloh-google-pixel-6-interview-podcast
オスタロー氏がGoogleのハードウェア部門の責任者に就任したのは2016年頃。同氏が就任してから、GoogleはHTCやFitbitといった企業を買収し、スマートフォン分野に新たなアイデアを加えてきました。しかし、Googleが過去5年間でスマートフォン市場シェアを大きく伸ばせたとはいいがたいのが現状です。Google純正スマートフォンであるPixelシリーズは評価が高いものの、全世界レベルで見るとそれほど多く流通しているとは言えません。
ピチャイCEOは「Googleが過去18カ月ほどにわたりPixelに対するアプローチを控えめにしてきた理由の一部は、Tensorを待っていたからです」と語り、Google初のスマートフォン向け独自開発SoCである「Tensor」のリリースに向けて力をためてきたと説明しています。
Pixel 6/6 Proに搭載されるGoogle独自開発の8コアCPU&20コアGPUのSoC「Tensor」発表 - GIGAZINE
この「Tensor」を搭載したPixel 6シリーズについて、オスタロー氏は「Google初の本物のフラグシップ端末」と呼んでおり、これまでのPixelシリーズとは異なる端末に仕上がっていることを強調しています。「Tensor」およびPixel 6シリーズについて、The Vergeは「実際にどのくらい素晴らしい端末に仕上がっているのかは我々のレビューをご期待ください」と記しました。
さらに、Googleがハードウェア開発に携わることの重要性を問われたピチャイCEOは、「コンピューティングを進化させることに専念するのであれば、ソフトウェアとハードウェアの交差点について考える必要があります。我々は常に人工知能(AI)で役立つ体験を構築するために特定のテクノロジーに投資してきましたが、それを独自の方法で表現するチャンスがこの交差点にはあります。また、ハードウェア開発は我々のエコシステムを前進させる上で役に立つと思います。私の経験では、あるカテゴリで何かをうまくやるたびに、そのカテゴリは全体としてAndroidにメリットをもたらします。Nexusシリーズのスマートフォンやタブレットでもそうでした。さらに、ハードウェア開発をうまく行うには持続可能なビジネスを構築していく必要があります」と語っています。
「持続可能なハードウェアビジネス」について、オスタロー氏は「まだまだ非常に早い段階にあり、Googleのハードウェア開発組織は約5年前に始まったばかりです。ユーザーにとって非常に重要なこの市場では、リードするための適切な機能を構築するのに長い時間がかかります。そして、我々が構築できたイノベーション、優れた端末を開発するための組織と機能は、ようやく満足できるレベルに到達したように感じられます。Pixel 6は大きな一歩目の変化であり、AIイノベーションに焦点を当て、市場の大部分に対応しようとするポートフォリオの構築に焦点を当てた、未来の方向性に賛同した端末です。ユーザーに最高のGoogle体験を提供したいと考えており、それこそが我々がやろうとしているすべてです」と語りました。
続いて、「Pixel 6が現在市場に存在するスマートフォンと大きく異なると思う理由」について問われたところ、オスタロー氏は「Pixel 6と他のスマートフォンの間には大きな違いがあると思います。1番の理由は、Pixel 6がGoogleブランドの明確な表現であるという点です。我々が提供しようとしているのは、可能な限り最高のGoogle体験です。多くの人が使用するすべてのサービスを統合し、Android 12でまとまりのあるユーザーエクスペリエンスと美しい新素材のUIをまとめることで、『最高のGoogle体験』を表現しています。また、Pixel 6はAIイノベーションも多くもたらしています。我々はAI研究チームと密接に連携してPixel 6の開発に取り組んできました。Tensorも一緒に構築しており、可能な限り最高のエクスペリエンスを構築できるように、Pixel 6にすべてをまとめることができたと思います。Pixel 6はAI分野で本当にエキサイティングな改善があります。我々のPixelシリーズは常に写真に強かったのですが、Pixel 6とTensorの組み合わせにより写真面の進化はさらにおおきなものとなっています。また、ビデオ機能も大幅に向上しています。可能な限り最高の形ですべてをまとめることができたことに本当に興奮しています」と語り、Pixel 6とTensorの組み合わせが唯一無二のユーザーエクスペリエンスを実現すると豪語しています。
ただし、オスタロー氏は「我々はスマートフォン市場で成長したいと考えていますが、同時に我々は挑戦者であることを理解しています。スマートフォン市場はかなり骨が折れる市場であり、長い間市場のリーダーが変化していないことも把握しています。また、他社はAI主導のイノベーションにおいて別のアプローチを取っています。我々もスマートフォン市場で成長できるようになっており、全体的な体験の多くで大きな一歩を踏み出せるようになったため、このこと自体は歓迎すべき点だと思います。我々は流通、マーケティング、製品・技術に多くの投資をする段階に来ました」と語り、まだまだスマートフォン市場をリードするAppleとSamsungに挑戦する立場であることは変わらないとしました。
スマートフォン市場で競合するSamsungについて、ピチャイCEOは「SamsungはAndroidにとって最も重要なパートナーの1社です。Pixelシリーズにとっても大きなパートナーであり、Pixel 6にはSamsung製のコンポーネントが多数採用されています。Androidで言っても、Samsungとは折りたたみ式端末向けのUI開発などで密接に連携しており、その飛躍と成功に向けて我々は懸命に取り組んでいます。また、Googleは最近Samsungとスマートウォッチ事業で提携し、よりカスタマイズ可能で柔軟なOSを生み出しました。こういった動きはSamsungや他のOEMにとって大きな機会を与えることになります。そして、これは消費者にとっても重要なことだと感じます。なぜなら、市場にユニークな端末が増加し、より多くの選択肢が増えるためです」と語りました。
Googleの今回の発表で最も注目を集めたであろうTensorの開発プロジェクトがいつ頃スタートしたのかについて問われたところ、オスタロー氏は「2016年の4月16日頃」と回答。つまり、オスタロー氏がGoogleのハードウェア部門の責任者となった日から、Tensorの開発プロジェクトはスタートしていた模様。「ムーアの法則と一般的なコンピューティングの法則は、2016年頃には崩壊し始めていました。そのため、AIイノベーションにおいて最先端に位置したいなら、完全なシステム設計が必要になることは明らかでした。2017年の1年間で、さまざまなAIモデルとアプローチをセットで必要な機能に利用するには、単一のコプロセッサーを構築するだけでは不十分であるため、SoCを構築する必要があると判断しました。これについてサンダーと話したことを覚えています。これはかなり大掛かりな投資であり、長い時間がかかることを伝えました」と語り、プロジェクトは5年以上前から始動していたことを明かしています。
さらに、オスタロー氏は「Tensorプロジェクトのごく初期の頃は、システム設計作業がどのような形になるか100%明確ではありませんでした。さまざまなAI研究チームの進行方向を実際に検討した後、初めてデータがモデルに出入りする方法と、いつどのように移動するかという点から、シリコンをすべて構築する必要があることに気づきました。他にも、例えばシステムの非常に低電力のセットを使用することで、端末がスリープ状態の時にも処理を実行できるようにすることなどを思いつき、これらを組み合わせるために、異種サブコンポーネントを含む完全なアプリケーションプロセッサを構築する必要があるという結論に至りました」とも語っています。
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