サイエンス

空気中から1リットル近い飲料水を取り出せるジャケットが開発される


テキサス大学オースティン校の研究チームが、空気中の水分を集めて飲料水を取り出せるジャケット型デバイスを開発しました。この技術は繊維そのものに水分回収機能を持たせることで、ハイキングやキャンプ、農作業、災害対応、軍事活動など、飲料水を確保しにくい環境での利用を想定しています。

Scalable hierarchical textile fibers toward personalized wearable atmospheric water harvesting | Science Advances
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aed9949

This Jacket Pulls Drinking Water From Thin Air - UT Austin News - The University of Texas at Austin
https://news.utexas.edu/2026/06/11/this-jacket-pulls-drinking-water-from-thin-air/

空気中から水を回収する技術は「大気水回収」と呼ばれ、これまで箱型の装置や大型パネル、吸着材の層を使うものとして研究されてきました。しかし研究チームは、装置を大型化するのではなく、衣服に使える布地そのものが水分を集められるようにすることで、個人が持ち運べる水源として再設計しました。

このジャケットに組み込まれているのは、空気中の水蒸気を捕まえる「階層的開放多孔質繊維(HOP-Fiber)」です。HOP-Fiberは表面に開いた孔を持ち、内部にも大小の孔が階層的に配置されているため、水蒸気を表面で液化させた後、水を素早く繊維内部へ移動させることができます。


今回使われたHOP-Fiberはヒドロキシプロピルセルロースとセルロースを重量比3:5で組み合わせて繊維構造を作ったもので、吸湿性を高めるために塩化リチウムを組み込んでいるとのこと。研究チームは20ノズルの紡糸装置で1時間あたり509mの速度でHOP-Fiber-4を連続生産し、平方メートル規模の布地に織り上げることにも成功しました。


研究チームによると、この繊維を布地に織り込んだ場合でも、水蒸気の通り道が保たれるため、従来の吸着材と比べて大規模化した際の性能低下を抑えられるとのこと。実験では、従来型の水回収材料と比較して、スケールアップ時の水分吸収性能が3~10倍向上したとされています。

ジャケットには、前面と背面に合計4つの水分回収ユニットが取り付けられています。回収ユニットは取り外し可能で、水分を吸った後に折りたたみ式の回収装置に入れて加熱すると、水分が蒸発して内側の表面で凝縮し、液体の水として集められます。


実験では、相対湿度20~80%の環境で、吸着材1kgあたり1日3.76~7.45リットルの水を生み出す性能を示しました。実際に回収された水の量は1日410mlから894mlで、研究チームによると、湿度に応じて1日約400~900mlの飲用可能な水を得られたと説明されています。


屋外試験は中国・西昌の乾燥地域、アメリカ・オースティン州の半乾燥地域、中国・成都の湿潤地域で行われました。西昌の乾燥環境では1日410mlの水が回収され、回収された水はリチウムイオン残留が少なく、WHO(世界保健機関)の飲料水基準を満たしたと報告されています。


この布地は、丸める、折りたたむ、ねじるといった変形にも耐えられるとされており、衣服だけでなく、バックパック、テント、緊急用シェルターなどへの応用も想定されています。研究チームは今後、屋外活動、遠隔地での作業、災害対応、乾燥地域やインフラが限られた地域での水アクセス改善に向けて、技術の応用を進める方針です。

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by log1i_yk

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