サイエンス

薬で「脳凍結」のような状態を作ると脳卒中後の脳損傷を抑えられる可能性


脳の血管が詰まる脳卒中では血流が止まることに加えて、血流が再開した後にも脳損傷が進む場合があります。中国・首都医科大学のシューアイリー・シュ氏、ウー・ディ氏らの研究チームは、薬で低体温・低代謝に近い状態へ誘導することで脳卒中後の脳を保護できるかを調べました。

The translational potential of drug-induced hypothermia in acute ischemic stroke | Science Translational Medicine
https://www.science.org/doi/10.1126/scitranslmed.ady7847


Drug-induced 'brain freeze' may help protect the brain after a stroke, early study suggests | Live Science
https://www.livescience.com/health/medicine-drugs/drug-induced-brain-freeze-may-help-protect-the-brain-after-a-stroke-early-study-suggests


急性虚血性脳卒中は、脳の血管が詰まって血流が突然止まり、手足のまひや言葉の障害などが起こるタイプの脳卒中です。脳卒中の治療では、詰まった血栓を取り除いて血流を戻す「再灌流治療」が行われますが、南カリフォルニア大学ケック医学校のパトリック・ライデン氏は「血流が戻る際にも大きな損傷が起こることがある」と述べています。

こうした脳損傷を抑える方法として、研究者らは低体温に注目してきました。低体温は代謝を遅らせ、脳細胞が死に至るプロセスも遅らせる可能性があると考えられていますが、成人の脳卒中患者を対象にした低体温療法の研究は十分な成功を収めていないとのこと。そこで研究チームは、体を外から冷やすのではなく抗精神病薬のクロルプロマジンと鎮静薬のプロメタジンを組み合わせ、低体温・低代謝に近い状態を作る方法を検証しました。この2つの薬剤の組み合わせは「C+P」と呼ばれています。

マウスを使った実験では、研究チームはC+Pを同じく体温を下げる作用があるアデノシン5'-一リン酸や、冷水・氷嚢による表面の冷却と比較しました。その結果、3つの方法はいずれもマウスを低体温へと誘導しましたが、体全体の酸素消費量とエネルギー消費量を下げたのはC+Pだけだったと研究チームは報告しています。

また、C+Pを投与されたマウスでは脳の糖代謝が低下し、脳の太い血管である中大脳動脈を糸でふさいだマウスでは脳梗塞の体積が小さくなり、神経学的な障害も改善。さらに脳卒中後の脳組織の損傷や乳酸の蓄積も少なくなったそうです。


次に研究チームはアカゲザルでC+Pを試しました。脳卒中に似た状態を作った後にC+Pを静脈投与すると、体内の温度は約33~34度まで下がり、エネルギー源は糖の一種であるグルコースを中心としたものから、脂肪やケトンを中心としたものへ移りました。C+Pを投与されたアカゲザルは、投与されなかったアカゲザルよりも脳損傷が小さかったとのことです。


さらに研究チームは、ヒトの急性虚血性脳卒中患者32人を対象に安全性を調べる初期段階の臨床試験を実施しました。この試験ではC+Pまたはプラセボが無作為に投与され、実験群の患者にはC+Pが10mg・20mg・50mg・100mgのいずれかの用量で投与されました。その結果、ヒト試験ではすべての用量で大きな安全上の問題は報告されず、100mgを投与された患者では一時的に軽度の体温低下が確認されました。また、血液中のタンパク質を調べたところ、好気呼吸やグルコース代謝に関連する数値が低下しており、体内の代謝が抑えられていた可能性が示されました。

ただし、ヒトの体温はマウスやアカゲザルほど大きくは下がらず、医学的に低体温とされる35度未満には至りませんでした。また、ヒトではC+Pの投与によって治療から72時間後に見られる脳損傷の程度は低下しなかったとのこと。さらに90日後の時点で患者が介助なしで日常生活を送れるかどうかにも影響は見られなかったそうです。


ワシントン大学セントルイス校医学部のエリック・ランドネス氏は、「この研究で興味深いのは低体温だけではなく低代謝が重要だとはっきり示された点だ」とコメントしています。一方で、C+Pがなぜ低体温と低代謝を引き起こすのかは十分に分かっていないとのこと。また、ライデン氏はクロルプロマジンとプロメタジンの組み合わせには筋けいれん・発作・心拍リズムの変化などを引き起こす薬剤相互作用のリスクがあり得ると指摘しています。

研究チームは、今回の結果はC+P治療を動物実験から臨床応用へつなげる可能性を示すものであり、安全性と有効性をさらに調べるためにはより大規模な試験が必要だと述べています。

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in サイエンス, Posted by log1b_ok

You can read the machine translated English article Inducing a state similar to 'brain freez….