サイエンス

ソーシャルメディア研究の約3分の1は業界とのつながりが明らかにされていない


ソーシャルメディアが10代の若者のメンタルヘルスに悪影響をおよぼすことや、ソーシャルメディア上で誤情報が拡散されるケースなど、ソーシャルメディアが社会に与える影響を調査する研究は複数あります。この種の研究はソーシャルメディアを運営する企業の協力のもと行なわれているケースがほとんどでありながら、この関係を明らかにしていないケースが多々あると指摘する研究が公開されました。

[2601.11507] Industry Influence in High-Profile Social Media Research
https://arxiv.org/abs/2601.11507

Nearly a third of social media research has undisclosed ties to industry, preprint claims | Science | AAAS
https://www.science.org/content/article/nearly-third-social-media-research-has-undisclosed-ties-industry-preprint-claims


プレプリントサーバーであるarXivに掲載された最新の論文により、主要な学術誌に掲載されたソーシャルメディア研究の約3分の1で、著者が業界とのつながりを持っていることが明らかになりました。このつながりは開示されるべきものであるにもかかわらず、開示されていません。論文の筆頭著者は、ワシントン大学の博士研究員であるジョゼフ・バック=コールマン氏です。

業界とのつながりを持つ研究の著者には、資金提供を受けた研究者もいれば、業界関係者と共同執筆した研究者もいます。こうしたつながりが研究結果をゆがめている可能性があると、バック=コールマン氏ら研究チームは指摘しました。業界と関連のある研究は、プラットフォームやそのアルゴリズムの役割よりも、「なぜ個人が誤情報を共有するのか」といったテーマに焦点を当てている傾向があるそうです。


バック=コールマン氏らの研究には携わっていない、ケンブリッジ大学の心理学者であるサンダー・ファン・デル・リンデン氏は、広範な未公表の関係が明らかになったことについて、「本当に衝撃的で、全く受け入れられませんが、必ずしも悪意があるとは限らないのではないでしょうか」と語りました。

社会科学は医学などの他分野に比べて利益相反の規範が確立されていないとリンデン氏は指摘し、「ソーシャルメディア研究に携わる科学者は、透明性と利益相反の重要性について、より良い教育を受ける必要があるかもしれません」と語りました。

ハーバード大学の科学史家であるナオミ・オレスケス氏は、大手テクノロジー企業がソーシャルメディアの研究に多額の資金を投資しているため、利益相反の可能性は非常に大きいと指摘。「この論文は、この問題についてより広範な議論を引き起こす可能性がある点で重要です」と語りました。


バック=コールマン氏ら研究チームは、業界とのつながりを公表していない論文がどれだけあるかを調べるために、学術誌のScienceNature、米国科学アカデミー発行の機関誌であるPNAS、そしてこれらの関連誌であるScience AdvancesNature Communicationsなどにも目を通し、2010年以降に発表されたソーシャルメディア関連の研究論文を精査しました。

調査対象となった論文の数は295本で、これらは合計で5万回引用され、1万5000件以上のニュース記事で言及されていました。このうち20%の論文では、著者が論文のどこかでソーシャルメディア開発元の資金提供を受けている、あるいはそれらの企業と仕事をしたことがあると、業界とのつながりを明示していました。

続いて、研究チームは科学論文のオープンアクセスカタログであるOpenAlexの情報と業界発表を調べ、学術誌が情報開示を義務付けていた期間における著者とソーシャルメディア企業のつながりを調べました。その結果、論文の約半数でソーシャルメディア企業との何らかのつながりが見られ、全研究の30%で著者が潜在的な利益相反を申告していなかったことが示唆されたそうです。

研究チームはさらに、編集者と査読者の身元が明らかになっている論文の一部について、著者にも利益相反があったかどうかを調査しました。利益相反のある者を分析に加えると、業界との何らかのつながりがある論文の割合は66%にまで上昇。査読者が匿名の場合、外挿すると出版プロセス全体を通じて業界から完全に独立していた可能性のある論文は5本中1本にまで減少すると推定されました。


バック=コールマン氏ら研究チームは体系的な問題を浮き彫りにするために、特定の研究者を非難するつもりはないと語りました。研究の共著者であるカリフォルニア大学アーバイン校の科学哲学者のケイリン・オコナー氏は、「個々のケースであれば、『私が開示しなかった理由はこれだ』と言えば、それほど不合理には聞こえないでしょう。しかし、全体を総合すると、何か不合理なことが起こっているのです」と指摘しました。

バック=コールマン氏は学術誌は掲載したソーシャルメディア研究をすべて監査し、未公表の利益相反が基準に違反していると判断した場合、科学的記録を訂正するべきと主張しています。

ただし、リンデン氏によると産業界とのつながりを判断する際、非常に厳格な基準を用いていると言及しており、例えば「Metaの従業員と論文を共著したというだけで、潜在的な利益相反とみなされる」と説明しています。

なお、Scienceの広報担当者は「研究者に対し、新規論文でそのような共同研究を開示することを義務付けることはありません」と説明しました。


研究チームはソーシャルメディア企業と関連のある論文が、特定のトピックに焦点を当てている可能性も疑問視しています。例えば、食品業界とタバコ業界は自社製品の潜在的な害から目をそらす研究に資金を提供しているとして長年非難されており、「コカ・コーラは長年にわたって、運動と肥満に関する研究に資金を投入してきました」とオコナー氏は指摘しています。「これは真の研究であり、重要または興味深い発見がしばしばある」とオコナー氏は言及しました。

また、人々がどのように誤情報を共有するかに関する研究は、ソーシャルメディア業界関連の研究で一般的である一方で、プラットフォームのダイナミクス(例えば、アルゴリズムが分極化にどのような影響を与えるか)に関する研究は稀です。研究チームは「この分野への業界の資金提供が製品から消費者への関心を向けさせていると断定的に証明することはできませんが、我々の研究結果はその可能性を示唆しています」と指摘しました。

リンデン氏は「問題は、ソーシャルメディア企業がデータを管理しているため、特定の種類の実験はソーシャルメディア企業と協力しなければ実行できないという点」と指摘しています。

これについて、アリゾナ州立大学の政治学者であるシェルビー・グロスマン氏は、「ソーシャルメディア上のすべての学術研究は産業界から完全に切り離されるべきだと考える純粋主義者もいますが、こうした関係は知識創造に役立つ可能性があります」と指摘しました。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article Nearly one-third of social media studies….