「大豆食品を食べると男でもおっぱいが膨らむ」という説は本当なのか?


日本には恋愛に淡泊な男性のことを指す「草食系」という表現がありますが、英語にも男らしくない男性のことを指す「Soy Boy」という同種の表現があります。この表現の元となったとされる「Soy(大豆)を食べると体が女性化する」という説について、イリノイ大学栄養学科のウィリアム・ヘルフェリッチ教授が科学的見地から解説しています。

Does soy give men breasts? Science debunks a sexist myth about a popular food
https://www.inverse.com/science/does-soy-give-men-breasts-science-debunks

ヘルフェリッチ教授によると、「大豆を食べると体が女性化する」と最初に報じたとされるのは、男性向けライフスタイル誌のMen's Health。Men's Healthが2009年に報じた記事は、乳糖不耐症で牛乳が飲めないために1日3クォート(約2.8リットル)の豆乳を飲み続けたという元アメリカ陸軍諜報員の男性が、最終的に男性にもかかわらず乳腺組織が肥大する女性化乳房症と診断されたというエピソードで、当時の記事の中では「大豆には隠された暗い側面がある」とつづられています。

Soy's Negative Effects | Men's Health
https://web.archive.org/web/20101105114313/http://www.menshealth.com/nutrition/soys-negative-effects


この記事の中で男性の乳腺組織を肥大させたものの正体として挙げられたのが、豆乳に含まれるイソフラボンです。ヘルフェリッチ教授によると、イソフラボンは植物の内部で人体におけるエストロゲン(女性ホルモン)と同等の役割を果たしており、実際に人間がイソフラボンを摂取するとエストロゲンの産生量に変化が生じるという、「イソフラボンがエストロゲンのように作用する」というケースが確認されているとのこと。

しかし、大豆栄養研究所のマーク・メッシーナ所長の2010年の研究や、大豆が人体に与える影響に関する論文32本を統合的に分析した2010年のメタ・アナリシス研究によると、アメリカ人やヨーロッパ人よりも大豆を多く消費する日本・韓国・中国における平均摂取量と同程度、またはそれ以上の摂取量でもイソフラボンが女性化作用をもたらすことはない」と結論づけられています。


以上のように近年では「豆乳が男性を女性化させる」というのはデマだと考えられている一方、「大豆が乳がんに影響を与える」という説が議論を呼んでいます。2001年に発表された論文や2009年に発表された論文では、大豆に特異的に見られるイソフラボンの一種であるゲニステインが乳がんのリスクを増加させるという結果が得られたという内容ですが、2017年に行われた大規模な追跡調査では、大豆を多く摂取する乳がんの女性は9年間における死亡リスクが最大21%低下すると結論づけられているとのこと。

これに関しては賛否両論が今なお続いている状況だそうですが、日本の国立がん研究センターは、1990年と1993年に国内の10保健所管内に居住していた40~69才の女性約2万5000人を2002年まで追跡した調査結果から、「ゲニステイン濃度が高いグループの乳がんリスクは低い」と結論づけており、動物実験では乳がんのリスクを高めるという結果があると認めつつも、「食事からとれる範囲ならば乳がんリスクを低下させるという可能性が示唆されている」という立場をとっています。

血中イソフラボン濃度と乳がん罹患との関係について | 現在までの成果 | 多目的コホート研究 | 国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/315.html

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