サイエンス

なぜ人は目覚ましが鳴る直前に目を覚ますことがあるのか?


「目覚まし時計をセットしているのに、鳴る少し前に自然と目が覚める」というのはよくある現象ですが、これは偶然起きる現象ではないといいます。オーストラリアのサンシャインコースト大学で睡眠健康を研究する睡眠健康学教授のヤクート・ファティマ氏、心理学上級講師のアレクサンドラ・メッツ氏、リサーチフェローで睡眠科学者のダニエル・ウィルソン氏らによる研究チームは、人が目覚ましの直前に目覚める理由について体内時計の仕組みから説明しています。

Why do we wake up shortly before our alarm goes off? It’s not by chance
https://theconversation.com/why-do-we-wake-up-shortly-before-our-alarm-goes-off-its-not-by-chance-268992

まず、人の脳には「体のマスタークロック」とも呼ばれる視交叉上核(しこうさじょうかく)という神経細胞の集まりがあり、睡眠や覚醒・体温・空腹感・消化などさまざまな生理機能のリズムを統括しています。この視交叉上核は24時間周期の概日リズムを基準に体内の状態を調整し、「いつ眠っていつ目覚めるべきか」を判断しているとされています。

概日リズムには個人差があり、朝早く活動的になる「朝型」の人もいれば夜遅くまで覚醒しやすい「夜型」の人もいますが「どちらも異常ではなくそれぞれの体内時計の特性によるもの」だと研究チームは説明しています。


体内時計は生まれつき固定されたものではなく日々の生活習慣によって学習されます。就寝や起床の時間、食事や運動のタイミングが規則的であるほど体内時計はそのリズムを記憶して次に起こる行動を予測するようになり、その結果として必要なホルモンが適切なタイミングで分泌されるようになるとのこと。

また、朝の目覚めに深く関わっているのが、コルチゾールと呼ばれるホルモンです。研究チームは、起床時に「コルチゾール覚醒反応」と呼ばれる現象が起こりコルチゾールの分泌量が大きく増加すると述べています。これは、体を活動状態へ切り替えて1日の始まりに備えるための反応だと考えられているそうです。

起床時間が毎日ほぼ同じで朝に十分な自然光を浴びている人の場合、体内時計は「いつ起きるか」を正確に把握するようになるため、目覚ましが鳴るかなり前から体は「目覚めの準備」を始めるようになります。具体的には、体温が上昇して眠気を促すホルモンであるメラトニンの分泌が減少し、コルチゾールの分泌が徐々に高まっていくとのこと。

そのため、目覚ましが鳴る頃には体はすでに覚醒状態へと移行し始めていると研究チームは説明しており、「ホルモンによる目覚ましコール」にたとえています。目覚ましの直前に目が覚めた時に頭がすっきりしているのは概日リズムがうまく整っているサインであり、体内時計が生活パターンを正確に予測して睡眠から覚醒への移行を円滑に行っている状態。一方で、早く目が覚めても強い眠気やだるさを感じる場合は睡眠の質が低下している可能性があり、その場合は体内リズムが十分に整っているとは限らないそうです。


就寝時間と起床時間を一定に保つことは体内時計を安定させるうえで重要です。日中の明るさや気温の変化といった自然環境のリズムと生活習慣が一致していると眠りにつきやすくなり、目覚めもスムーズになるそう。反対に、睡眠時間が日によって大きく変わる生活を続けていると体内リズムは混乱し、日中の眠気・集中力の低下・思考力のパフォーマンス低下につながる可能性があるとされています。規則性のない生活では体内時計が起床時刻を予測できず目覚まし時計に頼ることになり、その結果として深い睡眠段階で起こされてしまい「睡眠慣性」と呼ばれる強い眠気が残りやすくなるとのこと。

ストレスや不安も睡眠に影響を与える要因の1つです。ストレスや不安はコルチゾールの分泌を増加させて、夜間の睡眠を浅くしたり早朝に目が覚めてしまったりする原因になると研究チームは指摘しています。また、楽しみな予定や重要な出来事を控えている場合も脳が高い覚醒状態を保ちやすくなり、予定より早く目覚めることがあるそうです。


産業革命以前、人々は太陽や月といった自然環境の変化に合わせて眠っていました。しかし、現代では人工照明や不規則な生活の影響によって目覚ましなしで自然に目覚めることは簡単ではないとされています。それでも目覚ましが鳴る前に自然と目が覚める場合、それは「十分な休息が取れており体内時計が健全に機能している兆候」だと研究チームは述べています。

研究チームは、自然な目覚めに近づくための方法として「週末も含めて7時間〜8時間の睡眠を確保する」「就寝・起床時間をできるだけ一定に保つ」「カフェインやアルコール、就寝前の重い食事を避けること」「寝室を暗く保ち就寝前の画面使用を控えること」「朝に自然光を浴びること」を挙げています。

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in サイエンス, Posted by log1b_ok

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