ティラノサウルス・レックスの化石が化石史上最高額で落札される、研究者は「公共機関ではなく個人が所有すると研究が停滞する」と指摘

世界最古の国際競売会社「サザビーズ」が2026年7月14日に開催したオークションで、「ガス」と呼ばれるティラノサウルス・レックスの非常に保存状態の良い標本が化石史上最高額となる5010万ドル(約81億円)で匿名の買い手に落札されました。古生物学者は、「化石はトロフィーや芸術作品ではなくかけがえのない科学的記録です」と指摘し、個人が購入したせいで研究や教育が停滞することに懸念を示しています。
T. Rex Fossil Sells for $50.1 Million, Putting the King Back On Top - The New York Times
https://www.nytimes.com/2026/07/14/arts/design/t-rex-fossil-auction-sothebys.html
What science loses when ‘T. rex’ becomes a trophy
https://theconversation.com/what-science-loses-when-t-rex-becomes-a-trophy-287334
高さ約3.8mあるティラノサウルス・レックス「ガス」の化石は、化石が豊富に産出されるサウスダコタ州の私有地から、2021年に始まった数年にわたる発掘作業を経て商業発掘業者のトーマス・ハイトカンプ氏とそのチームによって発見されました。
サザビーズの幹部であるカサンドラ・ハットン氏は「ガスは並外れた発見であるだけでなく、発掘、記録、準備、そして手入れが真に卓越した技術で行われた標本です」と評価しました。2026年7月14日に行われたライブオークションでは7人の入札者が参加し、最終的に手数料込みで5010万ドルで落札されました。

今回のオークションでは、ガスの他にも三葉虫の化石、海洋は虫類の化石、モンタナ州で発見された「恐竜の赤ちゃんの巣」などが競売にかけられました。

これまでにオークションで落札された化石の最高額は、2024年のステゴサウルスの化石が4460万ドル(約72億円)で最高額でしたが、ガスはその記録を10億円近く塗り替えました。この記録は恐竜化石の価格上昇を示すものであり、商業的な化石ハンターを活性化させる一方で、大学や博物館の古生物学者からは「価格が高騰して市場から締め出されるのではないか」と懸念する声も上がっています。実際に、ガスのオークションが実施される前日にアメリカの古脊椎動物学会はプレスリリースを発表し、「個人が化石を購入すると、将来の研究、教育、そして一般市民の参加の機会が永久に減少する可能性がある」と警告しました。
同様の懸念は2020年にティラノサウルス・レックス「スタン」が売却された後にも高まりましたが、匿名の購入者は最終的にアラブ首長国連邦の「アブダビ自然史博物館」のために購入したことが明らかになり、同博物館で2025年後半からスタンが展示されています。

アメリカのマカレスター大学の生物学・地質学教授で、古脊椎動物学会の次期会長を務めるクリスティ・カリー・ロジャース氏は、「私のような古生物学者にとって、ガスのような化石は、トロフィーや芸術作品ではありません。それはかけがえのない科学的記録なのです。化石は進化・絶滅・成長・病気・怪我、そして古代の生態系の証拠を保存しています。それらは、地球上の生命の歴史を記録した、有限で代替不可能な記録なのです」と指摘。その上で、「科学的に重要な化石が個人のコレクションに入ると、研究者がアクセスできる保証はなくなります。個人所有の標本が博物館に貸し出された場合でも、所有者は気が変わっていつでもアクセスを終了させることができます。この問題は、ティラノサウルス・レックスに関しては特に顕著です」と化石が個人所有になることで研究が滞る懸念を示しています。
ロジャース氏によると、2025年の調査では公的機関が管理するティラノサウルス・レックスの化石は61点であるのに対し、個人が所有するものは71点と、個人所有の割合が多くなっているそうです。化石発見に力を入れる商業発掘業者は数多くの化石を発見してきましたが、発見は化石の科学的価値にとって始まりに過ぎず、発見場所や周囲の岩石、共に保存されていた動植物に関する記録が重要な意味を持ちます。しかし、化石自体のみを重要視する商業発掘業者の発掘により周辺情報が不完全であったり失われたりすると、化石の科学的価値の多くも失われてしまうとロジャース氏は語りました。
そして、化石標本の最大の科学的価値は発掘から数十年後に、以前の世代には想像もできなかったような新たな疑問を投げかけ、新たな技術を応用したときに現れるものであるとのこと。しかし、個人所有の化石は一時的に研究用に貸し出されることはあっても、継続的に研究することは難しい可能性があります。
ロジャース氏は「化石の価格が高騰するにつれ、博物館はますます競争力を失いつつあります。最も重要な化石はもはや公共のコレクションに確実に収蔵されることはなくなり、科学的価値を市場価値が凌駕する高級資産へと変貌しつつあるのです。恐竜は私たち共通の自然遺産です。恐竜は、私たちすべてを想像を絶するほど古い世界と結びつけてくれるため、畏敬の念を抱かせます。『ガス』のオークションのようなことが提起する問題は、誰がこうした過去の遺物を所有できるのか、ということではありません。未来の世代がそれらを研究し、そこから学ぶ機会を得られるのか、ということです」と語りました。
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in サイエンス, Posted by log1e_dh
You can read the machine translated English article A Tyrannosaurus Rex fossil was auctioned….







