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同じ商品でも個人データで価格を変える「監視型価格設定」を禁じる法律がアメリカで初めて成立


メリーランド州で、アメリカ合衆国で初めて食料品店における「監視型価格設定」を禁止する法律が成立しました。

Governor Moore Signs Legislation to Protect Marylanders’ Pocketbooks in Grocery Stores, Safeguard Voting Rights, and Strengthen Foster Care Oversight - Press Releases - News - Office of Governor Wes Moore
https://governor.maryland.gov/news/press/pages/Governor-Moore-Signs-Legislation-to-Protect-Marylanders%E2%80%99-Pocketbooks-in-Grocery-Stores,-Safeguard-Voting-Rights,-and-Streng.aspx


Maryland Signs New Grocery Personalized Pricing Ban - Consumer Reports
https://www.consumerreports.org/money/grocery-stores-supermarkets/maryland-passes-first-law-in-us-banning-personalized-pricing-a3386234932/


Maryland becomes first state to ban surveillance pricing in grocery stores | Technology | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2026/apr/29/maryland-grocery-stores-ban-surveillance-pricing


監視型価格設定とは、買い物客の個人データを分析し、同じ商品であっても買い物客ごとに異なる価格を提示するという仕組み。たとえば、買い物客の所在地、インターネット検索履歴、年齢や収入などの属性情報をもとに、買い物客が「いくらまでなら支払うか」を推測し、商品価格を短時間で変更するというものです。


メリーランド州では、2026年4月28日にウェス・ムーア知事が署名したことで新法が成立。食料品店および第三者の配送サービスが、個人データを使用して価格を高く設定する行為が禁止されました。ムーア氏は署名式で、「テクノロジーが人々に必要なもの、必要になる時期、支払う金額、さらに高くても支払ってしまうタイミングまで予測できる時代になっています。大企業が分析技術を人々に不利な形で使い、過去最高益を上げている状況の中で、メリーランド州は単に抵抗するだけではありません。メリーランド州は前進し、州民を守ります」と述べました。


監視型価格設定が導入されると、ほぼ同じ時間帯に同じ商品を購入しているにもかかわらず、買い物客ごとに支払う価格が変わります。監視型価格設定に反対する人々は「企業が買い物客一人一人について『支払ってもよいと考える最大金額』を推定し、上限ぎりぎりの価格を請求しているに等しい」と批判しています。

大企業が情報格差を利用して消費者を限界ギリギリまで搾取する「監視型価格設定」とは?何が問題なのか? - GIGAZINE


メリーランド州の新法は食料品店を対象としていますが、アメリカの連邦取引委員会(FTC)は、衣料品、美容用品、家庭用品、金物を販売する店舗でも監視型価格設定の事例があると報告しています。ただし消費者団体は、食料品の価格は日々の生活に直結するため、食料品店における監視型価格設定には特に緊急性があると指摘しています。

監視型価格設定を規制する法案はメリーランド州以外に、コロラド州、カリフォルニア州、マサチューセッツ州、イリノイ州、ニュージャージー州でも検討されています。連邦政府も監視型価格設定に関心を示しており、バイデン政権下のFTCは監視型価格設定について調査を開始。2025年1月に公表された初期調査結果では、企業が買い物客ごとに異なる価格を設定する際、幅広い個人データを利用していることが示されました。

ただし、現在の連邦政府が監視型価格設定を厳しく取り締まる可能性は低いとみられています。現在のFTC委員長であるアンドリュー・ファーガソン氏は、前政権による報告書を「急ごしらえ」と表現しているためです。デジタルプライバシー保護団体「Electronic Privacy Information Center(EPIC)」の法律顧問を務めるトム・マクブライエン氏は、連邦政府による取り締まりが期待しにくい状況だからこそ、メリーランド州のような州政府が行動する必要があると述べています。

マクブライエン氏は、メリーランド州が監視型価格設定に取り組んだ点を歓迎しつつも、業界団体のロビー活動によって抜け穴が盛り込まれたことに懸念を表明。「メリーランド州が一歩を踏み出したことは喜ばしいのですが、深刻な懸念もあります。適用除外によって、企業は消費者が気づきにくい別の方法で、同じ結果にたどり着くことが可能になります」と述べました。

メリーランド州の新法には、会員向け優待プログラムや販促キャンペーンに関する適用除外が含まれています。新法は監視型価格設定によって価格を引き上げる行為を禁止していますが、価格を引き下げる行為については規制していません。たとえば、企業が全員向けの基本価格を引き上げたうえで、買い物客ごとに異なる割引を提供した場合、最終的に買い物客ごとに異なる価格を提示することが可能になります。マクブライエン氏は、企業が値上げと個別割引を組み合わせれば「結局同じ結果に到達してしまう」と説明しています。


非営利の消費者団体Consumer Reportsは声明で、知事のムーア氏が監視型価格設定を優先課題として扱ったことを評価しつつ、メリーランド州の新法には「弱い執行規定」があると批判しました。

メリーランド州の新法を執行できる主体は州司法長官に限定されており、個人による訴訟が認められていません。アメリカでは、法律違反によって被害を受けた個人が自ら企業を訴える権利を「私的訴権」と呼びます。私的訴権が認められていれば、行政機関が動かない場合でも、消費者や市民が企業の違法行為を裁判で追及できます。私的訴権が認められていない場合、取り締まりは州司法長官など公的機関の判断に大きく依存します。

Consumer Reportsは、「メリーランド州議会に対し、来年に法案を見直し、より強力な消費者保護を組み込み、法律の趣旨を損なう抜け穴を取り除くことを求めます」と述べました。

反独占・企業監視団体American Economic Liberties Projectの上級法律顧問であるリー・ヘプナー氏は、「私的訴権は説明責任の根幹をなす要素です。実効性のある執行の脅威だけが、法律違反を抑止する有効な手段になります」と述べています。


ヘプナー氏は、コロラド州、カリフォルニア州、ニューヨーク州などで監視型価格設定を規制する法制度を正しく作ろうとしている中で、メリーランド州法案を模範と見なすべきではないと述べています。ヘプナー氏によると、メリーランド州法案は消費者保護の模範ではなく、業界側が作成した「継続的な差別を認める許可証」として認識されるべきだとのことです。

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in メモ, Posted by log1d_ts

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