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ペプシの「戦闘機が当たる」というCMを真に受けて7000万円以上費やした結果とは?


1996年にペプシは「ペプシ製品についた『ペプシポイント』を集めることで景品があたる」というキャンペーンを実施しました。当時CMには、10代の少年がハリアー戦闘機に乗って登校する映像に「ハリアー戦闘機 700万ペプシポイント」と表示されましたが、これを真に受けた男性がいました。戦闘機を得るために法律の専門家に相談し、判例を調べ、投資家から現金を集めてペプシにペプシポイントを送った男性の顛末を、The Hustleがまとめています。

The time Pepsi got sued for a $33m fighter jet
https://thehustle.co/leonard-v-pepsi-harrier-jet-lawsuit

1990年代、ペプシの製造元であるペプシコは数十年来のライバルであるコカ・コーラとの争いに決着をつけるべく、市場シェア獲得に躍起になっていました。そこでペプシは当時の価格で2億ドル、記事作成時点で3億5000万ドル(約380億円)規模の大規模キャンペーンを実施することにしたとのこと。このキャンペーンは、ペプシ製品についた「ペプシポイント」を集めることで消費者がさまざまな景品をもらえるというもので、広告費用のうち1億2500万ドル(約136億円)は景品のための予算でした。


キャンペーンの宣伝のため、ペプシは以下のようなCMを全国に流しました。

Pepsi Harrier Jet Commercial 1 - YouTube


一軒家の映像とともに「月曜日 午前7時56分」というキャプションが表示され……


家の中には髪をかき上げる少年。ペプシのロゴが入ったTシャツは「75ペプシポイント」と示されます。


レザージャケットは1450ペプシポイント。


サングラスは175ペプシポイントです。


学校の校舎の前では、3人の少年がペプシのロゴが入った冊子を開きつつ、空を見上げてあんぐり口を開けています。


教室に風が巻き起こり……


生徒たちの目線の先には……


大きな車輪。


校舎の前に戦闘機が降りてきました。


戦闘機に乗っているのは冒頭の少年。


「ハリアー戦闘機 700万ペプシポイント」と表示され……


少年がさっそうと戦闘機を後にします。


このキャンペーンにおいて、ペプシが実際に用意した景品はCMに出てくるレザージャケットやTシャツのほか、テレフォンカードやCDケース、Tシャツ、帽子などで、当然ながら戦闘機は含まれませんでした。多くの人はCMに登場する戦闘機をジョークだと捉えましたが、ワシントン州で暮らす21歳のジョン・レナード氏という男性は例外でした。レナード氏は航空機に詳しく、湾岸戦争で広く使われ「アメリカ軍で最も魅力的で危険な飛行機」と呼ばれたハリアー戦闘機の製造コストが3300万ドル(約35億円)であり、市場にはまず出回らないことから、裁定取引の匂いを嗅ぎ取りました。

当時、市販のペプシには12本1パックあたり5ポイントが付与されていました。ここから計算すると、700万ポイントを集めるためには1680万本・約400万ドル(約4億3200万円)相当のペプシ缶を消費する必要があったとのこと。これは1日4万6000本の缶を1年間毎日消費し続けることになる計算であり、消費するカロリーは25億kcal、砂糖の量は6億8900万グラムにのぼります。

しかし、実はこのキャンペーンには、別の応募方法もありました。ペプシは15ポイント分のペプシポイントがあれば、あとは1ポイント10セント(約11円)の計算で差額を支払うことでも消費者が景品をもらえるようにしていたのです。つまり、700万ポイントを獲得するための費用は70万ドル(約7600万円)でよかったとのこと。レナード氏は数カ月かけて事業計画をまとめ、宣伝広告に関する判例を調査し、登山ガイドとして働いた時に出会った裕福な投資家から現金を集めました。


そして1996年3月28日、レナード氏は15ペプシポイントと、約7600万円の小切手をペプシに郵送し、ジェット機を要求しました。

すると数週間後、ペプシからはいくらかのクーポンとジェット機のコマーシャルが「空想的な」ものであるという説明とともに、小切手が返送されてきたとのこと。

この時点でレナード氏はすでに法律専門家への相談や判例の調査に対して4000ドル(約43万円)を費やしていました。レナード氏は専門家に相談した後、ペプシに「10営業日以内に戦闘機を送らないと法的措置に出る」という手紙を送ります。しかし、当時のペプシ副社長だったレイモンド・マクガバン・ジュニア氏は「『ペプシのコマーシャルで戦闘機がもらえる』とあなたが信じているとは思えません。コマーシャルに対するあなたの分析に同意するまともな人はいないでしょう」と述べ、要求を拒否。争いは法廷にもつれこみます。

レナード氏は、ペプシが「700万ペプシポイントとハリアー戦闘機を交換する契約に違反した」と訴えました。このニュースは世間から大きな注目を浴びましたが、レナード氏は「私は注目を浴びたいのではありません。和解も求めていません。航空機が欲しいだけです」とインタビューで応えています。

インタビューに応えるレナード氏。


裁判は最終的に「広告は契約のオファーに当たらない」「広告が冗談であることは明白だった」「高額の契約は両当事者の署名が必要である」の3点から、ペプシに有利な判決を下しました。レナード氏はハリアー戦闘機を手に入れられませんでしたが、国防総省のブリーフィングでは「たとえ若者がペプシから航空機を手に入れたとしても、彼が飛べるものではなかっただろう」と言葉が交わされたそうです。

ペプシポイントのキャンペーンは、物議を醸したにもかかわらず、あるいは物議を醸したからこそ成功を収め、「これまでに最も成功したプロモーション」と言われました。ただレナード氏から訴訟を起こされたあと、CMには戦闘機の登場シーンに「冗談です」というコメントが挿入されたとのことです。

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in 動画, Posted by darkhorse_log

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