「警察に武装ドローンや武装ロボットを持たせてはいけない」と電子フロンティア財団が警告
自律型か遠隔操作型か、武器に致死性があるか否かを問わず、武装したドローンやロボットの類いを警察に配備してはいけないと、「自由な言論の権利」を訴える非営利組織・電子フロンティア財団(EFF)が警告を発しています。
Don’t Let Police Arm Autonomous or Remote-Controlled Robots and Drones | Electronic Frontier Foundation
https://www.eff.org/deeplinks/2021/07/dont-let-police-arm-autonomous-or-remote-controlled-robots-and-drones
EFFが懸念するのは、仮に「限られた状況下でのみ運用する」という条件付きの導入であったとしても、やがて、なし崩し的に条件が緩和されていくことです。つまり、最終的には正当な抗議活動を行っている市民の取り締まりに用いられる恐れがあるのではないか、ということです。
実例として、携帯電話の基地局になりすまして情報収集を行うIMSIキャッチャー「スティングレイ」が挙がっています。本来、スティングレイは海外の戦場で用いられることを想定して開発されたものだったとのことですが、のちに「テロとの戦いを想定して」という理由をつけてアメリカ国内でも運用されるようになりました。
当初、「スティングレイ」がなんなのかはまったく謎でしたが、2014年に裁判記録が公開されたことで、携帯電話基地局を偽装して追跡を行う機器であることが発覚。
携帯電話基地局になりすましてスマホの個体識別情報や位置情報を集める「スティングレイ」を用いた捜査手法の実態 - GIGAZINE
税金還付詐欺で4億円以上を得た詐欺師の追跡に使用される一方で、50ドル(約5000円)相当の手羽先窃盗犯の追跡にも使用された事例が報告されています。この2016年のニュース時点で、スティングレイは「2008年以来、1000回以上使用されている」と報じられています。
Cops Use StingRay Phone Tracker Against $50 Chicken Wing Thief | eTeknix
https://www.eteknix.com/cops-use-stingray-phone-tracker-50-chicken-wing-thief/
ドローン(無人航空機)も、もともとは軍事目的で開発されましたが、あっという間に警察や消防で運用されるようになりました。ドローンを監視目的で利用し逮捕につながった初の事例は、アメリカでは2012年に報告されています。このとき運用されていたドローンは無人攻撃機MQ-9 リーパーであるとみられています。
空飛ぶ無人機の監視運用によって全国初の逮捕者が出る - GIGAZINE
2016年には、ダラスで12人の警察官が襲われて5人が死亡する事件があり、長時間の銃撃戦の末、警察は容疑者をロボットで運んだ爆発物で爆殺しました。このとき用いられたロボットは当然、「本来の用途とは異なる」利用のされ方をしています。
Dallas Shooting: In An Apparent First, Police Used A Bomb Robot To Kill : The Two-Way : NPR
https://www.npr.org/sections/thetwo-way/2016/07/08/485262777/for-the-first-time-police-used-a-bomb-robot-to-kill
直近では、自然災害時に人々の悲鳴を検知して発見するという、AIを強化した自律ドローンの開発が進められているとのこと。しかし、これも本来の用途から外れて、やがては警察が「叫び声を上げる抗議者たち」の取り締まりに使うのではないかとEFFは懸念を示しています。
さらにEFFが問題視しているのは、技術が機能不全に陥っているという点です。すでに警察は顔認証や銃声検出、自動ナンバープレート読み取りなどの技術を導入していますが、いずれも「偽陽性」が発生しています。こうした技術における「偽陽性」は、武装した警察官の不必要な出動を呼び、現場での不当逮捕や過剰な暴力を招きます。犯罪の容疑者だと誤認されたのが有色人種だった場合、状況はさらに悪くなります。こうした機能不全が「重傷を負わせて足止めするか、命を奪うか」をプログラムに基づいて一瞬で判断する自律型武装ロボットで起きた場合、罪のない一般市民が危険な状態にさらされることになります。
また、ロボットやドローンによって不当に人が傷つけられた場合に、誰が責任を負うのかという点もEFFは問題視しています。すでに現状でも、「民間人を不当に傷つけたり殺害したりした責任を警察に負わせる」ことは難しく、意思決定が自動化されたロボットの場合はさらに難しい問題となることは明らかです。
加えて、自律型でも遠隔操作型でも、ハッキングを受ける危険性が存在します。すでに、警察の監視カメラはハッキングされた「実績」があります。
EFFは「警察の手からテクノロジーを排除することは、そもそもテクノロジーが展開されるのを防ぐよりも遥かに難しいことです。だからこそ今、警察によるこの種の技術の配備を禁止する法律を推進すべきです」と呼びかけています。
・関連記事
顔認識技術による政府の監視はマイノリティを迫害し表現の自由を阻害すると電子フロンティア財団が警告 - GIGAZINE
エドワード・スノーデンが電子フロンティア財団への支援を呼びかけ - GIGAZINE
「インターネットのパイオニア」と呼ばれる人物が提唱した「大人としての行動原理」 - GIGAZINE
・関連コンテンツ